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陰陽師の名家のイケメンなのに霊力ゼロな俺。全部マネージャーの女が祓ってるけど、アイツ全然可愛くない  作者: かにえR
【第三章 視える女の重責】

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第二十九話 由々しき事態!?


夜、仕事のあと、また菅原が出かけて行った。


深夜一時過ぎ。フード付きのパーカーを着て、部屋を出る。


タクシーを呼び、友達が教えてくれたコンビニに向かう。


タクシーを降りて、パーカーのフードを深く被り、遠くからコンビニを覗き込む。


深夜だからか、レジに店員がいない。なぜかホッとする。菅原はここにはいない。友達の作り話か、勘違いか。多分、そうなんだろう。いや、でも、一応中に入って確かめるか。


コンビニに入る。警戒しつつ、一番奥の棚まで行く。


棚の影からチラリと見ると、いた。


菅原が、いた。


コンビニの制服を着て、おにぎりを並べている。


なぜか、胸がズキッと痛んだ。


バレたら困る。でもなぜか帰れなくて、雑誌を手に取り、開いた。


自動ドアが開いて、ジジィが入ってきた。


酒臭い。離れているのに、アルコールの臭いがする。


しばらくすると、「いらっしゃいませ」という菅原の声が聞こえた。


「ホットコーヒーのLサイズが一点。お会計二百二十円になります」


酔っぱらったジジィが、ヨロヨロとコーヒーを淹れている。


「あ? なんだこれ。少ねぇぞ」


何かブツブツ言っている。


コーヒーを片手に、レジに向かうジジィ。


不穏な雰囲気を感じ、雑誌を読むフリをして耳を澄ませる。


「おい、ねぇちゃん。これ、なんか少なくねぇか。オレ、デッカイの買ったんだぞ」


「え? あー、LじゃなくてRのボタンを押していませんか? 間違っていますよ。大きいカップなら、Lを押さないと」


「あ!?!? 俺が間違えたって言ってんのか!!!」


ジジィが大声で怒鳴った。


ビビった……心臓が止まったかと思ったわ。突然音量上げんなや。ジジィ……。


「怒鳴らないでください。あなたが間違えたんです。もう、どうにもなりません。次は間違えないようにしてください」


「なんだとぉおおおお!?」


火に油を注ぐとは、まさにこういうことなんだろう。そう思った。


「だから、次からは気をつけてください。大きいカップの時はLのボタン。小さいカップの時はRのボタンですよ? わかります?」


菅原、お前多分、接客業向いてねぇよ。


「おい! 責任者を出せ!」


「あの、これ以上騒ぐなら警察を呼びますよ?」


「なんだとぉおおおお!?」


いや、マジでそろそろやめた方がいい。そう思い、雑誌を置き、少しだけレジの方に近づく。


影から覗くと、カウンターの中にいる菅原に、ジジィがコーヒーをかけようと腕を引いたのが見えた。勝手に身体が動いた。


走ってジジィの腕を掴む。


勢いよく掴んだせいで、反動で俺にコーヒーがかかった。


「熱ッ!!!!!!」


普通に熱くて、思わず叫んだ。


ジジィと菅原が呆然とこちらを見る。


「あ……あ……」


菅原が目を見開き、聞いたことがない声を出す。多分、パニックになっている。


俺がここにいること、俺にコーヒーがかかっていること。


「て……てんちょ〜……」


菅原が、助けを求めるような声で、そう言った。


俺が助けた。菅原に熱いコーヒーがかかると思って、ジジィの腕を掴んだ。


俺が助けたのに、目の前の菅原が助けを求めたのが、俺じゃなかった。


「ひ、ひかりくん、どうしたァッ!?」


小太りの白髪のジジィがバックヤードから飛び出してきた。


菅原、ジジィ、そしてコーヒーがかかった俺を順番に見る店長らしき男。


「ンンッ!? 由々しき事態!?」


と叫ぶ店長。


「け、警察!」


と叫ぶ菅原。


その瞬間、ジジィが俺の手を振り払い、走って逃げていく。


ジジィの後ろ姿を呆然と目で追う三人。


「紫門さん!」と菅原が叫び、どこかに走っていく。ロックアイスを両手に抱えた菅原が、戻って来る。


「こっちに、こっちに来てください!」


そう叫んで、俺を引っ張る菅原。されるがままの俺。


バックヤードに入り、椅子に座らせられる。


「大丈夫ですか!? これ、パーカー脱いで、こ、この氷を!」


そう叫びながら、俺のパーカーを無理やり脱がし、ロックアイスを袋ごと肌にくっつける菅原。


「冷た!!! 冷てぇよ!!! 大丈夫だ。大丈夫だって。まじで冷てぇ!!! 地肌はヤバい。菅原、マジで、ちょっと」


「や、や、や、火傷は、最初が肝心なんです!!!」


「いや、まじで大丈夫だ。パーカー分厚かったし。マジでその冷てぇほうが無理だって」


「君、いい筋肉だね! 僕も鍛えようかな」


そう言って、自分の腹をブルブルと揺らす店長。


マジでなんなんだこいつ。


「店長! なんか、服ないですか!? 紫門さんが風邪引いちゃう!!!」


焦ったようにそういう菅原。


「あ、あるある! あるよ! ちょっと待って!」


そう言って、カバンを漁る店長。


せめて洗ったやつであれ……そう願うしかなかった。


「あった! あったぞ! ひかりくん。これ、これを彼に!」


そう言って、菅原にTシャツを渡す店長。


ひかりくんって、なんだよ……


菅原が、俺に無理やりTシャツを着せる。


「菅原、待て。自分でできる。おい、菅原……」


ふと、Tシャツを見る。


「月刊ムー」と書いてある。


「うん、似合ってる。君、似合ってるよ」


そう言って、俺の肩に手を置く店長。


ロックアイスにタオルを巻き、俺の胸当たりを冷やす菅原。


「店長、これあとでレジ通します。すみません」


「いい、いいよ。ひかりくん。お金のことは気にしないで。あ、警察、警察を呼ぼう。防犯カメラに映っているといいけど」


そう言って、電話を手に取る店長。


「いや、警察は。警察はやめてください。親父に、親父にバレたらヤバい」


ハッとした顔をする菅原。


「あの、店長。警察はやめてほしいです。私の、私のせいなんで」


「違うだろ。お前のせいじゃないだろ」


「わかった! わかったよ。落ち着こう。若人たちよ。うんうん。ところで君、誰だい?」


そう言って、キュルンとした瞳で俺を見る店長。なんなんだこいつは、マジで。


「前に話した、私がマネージャーをしている、陰陽師の……」


俺のこと話してんだ……なんかちょっと嬉しい。


「あぁっ! 君が! いやぁ、光栄だ。陰陽師に会えるなんて」


「いや、まぁ、はは……」


どう反応したらいいかわからなかった。


「び、病院に行きましょう。夜間救急。今調べます」


「いや、大丈夫だ。赤くなってないし」


「ひかりくん、今日はもう帰りなさい。陰陽師の彼と」


「いや、でも、店長だけになっちゃいますよ」


「大丈夫大丈夫! 僕ね、学生の頃、ファミレスのキッチン、一人で回してたんだよ。見せたかったよ。僕のフライパン捌き。フランス料理のシェフ顔負けだったよ」


そう言って、フライパンを振る動作をする店長。


「わかりました……紫門さん、帰りましょう」


「うん、帰りなさい。大丈夫、心配しないで」


そう言って、ウインクする店長。


「ありがとうございます……」


そう言って、リュックに荷物を詰め、俺に手を差し出す菅原。


その手をギュッと握り、俺は立ち上がった。


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