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陰陽師の名家のイケメンなのに霊力ゼロな俺。全部マネージャーの女が祓ってるけど、アイツ全然可愛くない  作者: かにえR
【第三章 視える女の重責】

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第二十八話 知りたかった


その日は、仕事のあと友達と飲んでいた。親父の言う“碌でもない友人”だ。


「一人暮らしなら泊めろよ~」


「わかったわかった。でも騒ぐなよ。まじで。親父に怒られるから」


「坊ちゃんだな~お前」


「うるせぇな。ベランダで寝かせるぞ」


部屋の前に着いた時、ガチャっと音がして、菅原が出てきた。


「あ、菅原」


「なにぃ? 知り合い?」


友達が茶化すように俺に言う。


「知り合い」


俺がそう答えると、今度は菅原に絡みだす。


「なんで隣に住んでるの~? こいつの彼女さんですか~?」


「おい、やめろ。ちげぇよ。マネージャーだよ」


「すみません。ちょっと急いでいるので、また」


そう言って小走りでエレベーターに向かう菅原。


「あ~、行っちゃった~。バイバーイ、マネージャーちゃん」


「おい、静かにしろ! 部屋に入るぞ」


あいつ、そんなに急いでどこに行くんだ。こんな時間に。


「おじゃましま~す。お、散らかってな~。女呼んでねぇの?」


「呼んでねぇよ」


「つーか、なんでマネージャーが横に住んでんの? あー、親父さんに言われたとか? 監視されてんだ! ウケる。つーか、あの子? マネージャーちゃん。彼女なわけねぇよなぁ。紫門のタイプと真逆じゃん。ちょい地味? いや、結構地味?」


「おい、やめろ」


「なんで怒ってんだよ~。つーか、お前、女の子たちに全然会ってねぇだろ。超文句言われるんだけど~? 返信くらいはしろよ~。じゃないと俺が全部取っちまうぞ~」


「酔っ払いすぎだろ。風呂入ってこいよ。クセェままで俺の布団に入んなよ」


「オェエエエエ」


「おい! バカ! トイレで吐け!!!」


片付けを終え、シャワーを浴びる。床で眠るそいつに布団をかけ、ベッドに寝転がる。


菅原、マジでどこに行ってんだ? コンビニとか? いや、あいつも子どもじゃねぇんだから、飲みに行ったりするか……。友達とか、あいつにもいるだろうし。


早朝、まだ外が暗い。床で眠る友達を起こさないように起きて、ジムに行く準備をして、マンションのエントランスから出る。


はぁ、マジで眠い。二日酔いってほどじゃないけど、なんかダルい。


遠くから、自転車に乗った菅原が走ってくる。


朝帰りか……朝帰り!? あいつが!?


菅原は俺にまったく気づいていない。


「菅原?」


そう声をかけるが、通り過ぎる。


しかし、五メートルくらい先で、キーッと音を立てて止まる菅原。


「おはようございます。ジムですか? お疲れ様です」


こちらを振り返り、掠れた声でそう言った。なんかすごく疲れた顔をしている。


「朝帰り?」


「え? あー。いや、まぁ。ではまたあとで」


そう言って、また自転車を漕ぎ出す菅原。


なんであんなに疲れてんだあいつ。いや、朝まで遊んでたらさすがに疲れるか。いや、遊びに行く格好でもなかったぞ。もしかして、彼氏の家に行ってたとか?


次の日も、その次の日も、菅原は仕事のあと、出かけて行った。


いや、別に監視していたわけではない。たまたま、ドアの近くにいて、菅原が出て行く音が聞こえただけだ。


もしかして、夜は彼氏の家に行ってる? そうとしか思えない。


一つのベッドで、彼氏と眠る菅原の絵が浮かぶ。


あいつは、彼氏とどんなことを話すんだ? なんか話すことがあんのか? だって、ほぼ毎日俺といるんだぞ。朝から晩まで。俺のことしか話すことがねぇだろ。


愚痴とか言うのか? 俺がクソとか、ウザいとか。


そんなの聞いて、彼氏はどう思うんだ? つーか、あいつはどんな男を選ぶんだ?


きっと、優しい男なんだろうな。菅原が選ぶんだから。


あいつは多分、見た目とかでは選ばない。俺みたいに。


優しくて、芯があって、年寄りとかガキに手を差し伸べるような。


菅原が泣いたら、何も言わずに抱きしめるような。


俺みたいに、顔だけよくて、何もできねぇ男は、多分選ばねぇ。


何を考えてんだ、俺は。あいつは俺のマネージャーだ。あいつに彼氏がいるとか、いねぇとか、どうでもいいだろ。


「おはようございます」


車に乗り込むと、菅原があいさつする。


「あ? あぁ」


優しい彼氏と仲良くしていればいいだろ。毎日一緒に寝てんだろ。一つのベッドで。クソ。


菅原のカバンには、今日も俺があげたキーホルダーがジャラジャラ付いている。


なんなんだ、こいつは。つーか、俺は何に腹を立ててんだ。


夜、夜中。


あの友達から電話が来る。


「お疲れ~。こないだはマジでごめん」


「あ? マジでふざけんなよ。次は飲みすぎんなよ」


「悪い悪い。つーかさ、あの子。紫門の隣に住んでる、マネージャーちゃん? あの子に会った!」


「……は? 会ったってどういうことだよ」


「なんで怒ってんだよ。昨日? 夜中にコンビニ行ったんだよ。そしたら、いた」


「あいつが買い物してたってことか?」


「違う違う! いらっしゃいませって言われて見たら、あの子だったんだよ。俺、酔っぱらってたのに、記憶力良すぎだろ。マジで天才」


「は? 何を言ってんだお前は。あいつがなんでいらっしゃいませって言うんだよ」


「だーかーらー、バイトしてたんだよ。深夜のコンビニ。なんで?って感じだよな。よっぽど給料安いんだな、お前んとこ。いや、あんないいとこ住んで、家賃やべぇからか?」


「……それ、マジなんだよな?」


「マジマジ! 声かけたら、紫門さんには言わないでくださいって言われた。お前んとこ、副業禁止なわけ? 今どきそんなのブラックだぞ!」


「どこのコンビニか教えろ」


わけがわからない。なんで昼間働いて、夜中も働いてんだ、あいつは。


だからあの朝、疲れた顔をしていたんだ。声も枯れていた。


なんでだ? なんでそんなに働いている? 奨学金? いや、だからってそんなに働くか? 他に借金があるとか? いや、あいつはそんなヤツじゃない。なんなんだ?


わからない。マジで意味がわからない。


でも、あいつはきっと聞いたら怒る。あの時みたいに。


でも、聞きたい。知りたい。


あいつがそこまで頑張る理由が。


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