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陰陽師の名家のイケメンなのに霊力ゼロな俺。全部マネージャーの女が祓ってるけど、アイツ全然可愛くない  作者: かにえR
【第三章 視える女の重責】

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第二十七話 そんなに大事?


夜、インターホンが鳴る。


多分、菅原だ。確認もせずドアを開ける。


「紫門さん、ゴミ捨て行きますよ。燃えるゴミです。分別しました?」


俺があげたルームウェアを着ている。


「似合ってんじゃん」


「そうですか? ありがとうございます」


「お、おう」


ゴミを持って、二人でエレベーターに乗り込む。


「時間外労働だな」


「はい?」


「マネージャーとして俺のゴミ捨てに付き合ってるのに、給料出ないだろ」


「そうですね。ブラック企業です」


「はは、マジでブラックだな」


「ついでなんで。私のゴミ捨ての」


“別に朝、仕事に行く時捨てられんだろ”


そう言おうと思ったけど、やめた。


『じゃあ次からは朝に捨てます』


と言われそうで。


こいつとゴミ捨てに行く夜の時間がなくなるのは嫌だった。


「来週はちょっと夜忙しくて。一緒にゴミ捨てできないので、自分で捨ててください」


「わかった」


どうして忙しいのか気になる。聞きたい。


でも、こないだ菅原に言われたことが頭をよぎる。


『どうしてあなたにそんなことを教えないといけないんですか』


『プライベートなことは教えられません』


マジで嫌がってた。また何か聞いたら、こいつに嫌われるかもしれない。


それが怖かった。


いや、もう嫌われてるかもしれない。


「じゃあ、おやすみなさい」


「おう」


部屋の前で別れる。


♢ ♢ ♢


次の日は、ショッピングモールでの依頼だった。


新しくオープンする店舗。そこで色々あったらしい。


いつも通り、菅原が祓って俺が祓うフリをした。


依頼を終え、駐車場までモール内を歩く。


「何でショッピングモールに怨霊が出んだよ」


「マネキンとかはよくありますよ。人間の形なので」


「怖すぎんだろ。夜、勝手に動いたりすんのか? 怖ァ」


「あっ」


ゲーセンの前で、菅原が立ち止まる。


「どうした?」


「あのキャラクターの景品、出てるんだと思って」


「は? あの変なやつ? 好きなの?」


「変なやつ……はい、あの変なやつが好きです」


「へー、キャラクターとかそういうの好きになったりするんだな」


「はい。でも勤務中なので諦めます」


「まだ次まで時間あるだろ。取ってやる、俺が」


「結構です」


菅原を無視して両替する。


こんなの三回くらいで取れるだろ。


――まったく取れない。


取れる気配すらない。


ふがいない。ふがいなさすぎる。


「紫門さん、こっちの小さいやつなら取れそうですよ」


菅原がそう言って指さす。


「こんな小せぇのでいいのか?」


百円を入れ、レバーを動かし、ボタンを押す。


取れた。まさかの一発ゲットだった。


「すごい! 取れましたね」


「すげぇ! 俺、天才だろ」


「天才かどうかはわかりませんけど」


取り出し口から景品を取り出すと、めちゃくちゃ小さい。


でも菅原は、それを嬉しそうに受け取った。


駐車場に着き車に乗り込むと、菅原がいつものカバンにその小さいぬいぐるみを付けた。


「可愛いですね」


「そんな丸見えのところに付けていいのか?」


「え? あ、はい。好きなんで」


いいんだ……。


次の日も、その次の日も、菅原はカバンにそれを付けていた。


ある朝コンビニに行くと、菅原が好きな変なキャラクターのシールがおまけで付いているお菓子があった。


「あ、これ菅原が好きなやつじゃん」


一個買って菅原に渡す。


菅原は嬉しそうに受け取り、スマホケースにそのシールを貼った。


次の日も、コンビニでそのお菓子を二個買って菅原に渡す。


菅原はまた嬉しそうに受け取り、ケースに貼る。


そうしているうちに、ケースがシールでいっぱいになった。


そのあとは、手帳とか、スケッチブックとか、いろんな場所に貼っていた。


休日、出先で菅原の好きなキャラクターを見つけると、無意識に買ってしまう。


キーホルダーとか、ボールペンとか。そういうのを買って菅原に渡す。


菅原はいつも嬉しそうに受け取り、それを使う。


菅原のカバンは、いつの間にか俺があげたキーホルダーでじゃらじゃらしていた。


気づいたら、俺までそのキャラクターが好きになっていた。


家の鍵にキーホルダーを付けて、スマホケースの間にもそいつのシールを挟んでいた。


ある朝、菅原のカバンを見ると、一番最初に俺があげた小さいぬいぐるみが消えていた。


ショックだった。


どうしてそれをカバンから外したのか、怖くて聞けなかった。


依頼を終え、車に乗り込んだ時、菅原が「あ!」と叫んだ。


「どうした?」


「あの小さいやつがない! どこかに落としたのかな?」


そう言って車を降り、座席の下を覗き込む。


失くしたのか。よかった。外したわけじゃねぇのか。


マジでよかった。


いや、何でホッとしてんだよ、俺は。


「あった!」


菅原がそう言って、座席の横に挟まっていたそいつを引っ張り出す。


引っ張り出されたそいつは、薄汚れていた。


「汚くなってんじゃん。もうダメだな、それ。新しいのまた取ってやるよ」


「洗えば大丈夫です。帰ったら漬け置きします」


「……そんなに大事?」


「はい。好きなキャラだし、多分もうゲームセンターにこの景品ないんで」


大事らしい。


俺が一番最初にあげたやつが、一番大事らしい。


次の日、ピカピカになったそいつが菅原のカバンに付いている。


あぁ、やっぱり大事なんだ。


俺が一番最初にあげたやつが。


「これ、キーホルダー。その辺で売ってた」


その辺で売っているわけがない。ネットで取り寄せたレアなやつだ。


「あ! これ、レアなやつだ!」


思わず顔がニヤける。


「ありがとうございます。でも、もう付けるところがないので、そろそろ大丈夫です」


「えっ……」


こいつを集めるのが、俺の生きがいだったのに。


「こんなにグッズを集めたの初めてだったので、嬉しかったです」


そう言って、俺が最初にあげた小さいぬいぐるみを指で撫でる。


「他に好きなキャラクターができたら言えよ。次こそバカデカいぬいぐるみ取ってやるよ」


「バカデカいやつは自分で取りました!」


そう言って、スマホを俺に差し出す菅原。


画面を覗き込むと、菅原のベッドに堂々と寝転がるそいつがいた。


「ベッドが狭くなっちゃって。でも、抱き枕として使ってます」


嬉しそうな顔で笑う菅原。


バカデカい間抜けな顔をしたぬいぐるみに、俺はただただ嫉妬した。



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