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陰陽師の名家のイケメンなのに霊力ゼロな俺。全部マネージャーの女が祓ってるけど、アイツ全然可愛くない  作者: かにえR
【第三章 視える女の重責】

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第二十四話 変でもいい


俺が引っ越した一週間後。


菅原が隣の部屋に引っ越してきた。


俺は朝からずっとソワソワしていた。


引っ越し業者の声と作業する音が外から聞こえて、玄関のドアを少し開けて覗いてみる。


家電が次々に、部屋の中に運ばれていく。


菅原の声がして、ドアをもう少し開ける。


「あ、菅原」


「騒がしいですよね。すみません。もうすぐ終わるので、もう少々お待ちください」


「いや、別に。手伝うこととかあるか? 俺、今日暇だし、手伝ってやってもいい」


「結構です。プロに頼んでいるので。それに、荷物もそんなにないので。では」


そう言い残し、部屋に入っていく菅原。


何だよ、あいつ。


俺の引っ越しの日、親父に頼まれて、菅原は引っ越しを手伝った。


「どんだけ服があるんですか!?」


「どうしてタグがついたままなんですか!?」


「指は十本しかないのに、どうしてこんなに指輪があるんですか!?」


菅原は都度キレて、最後は一緒にリサイクルショップに服とかアクセサリーを売りに行った。売れた金で、二人で焼肉を食った。


最後にデカいアイスまで食って、機嫌は良くなってたけど。


「だから、俺も手伝ってやろうと思ったのに」


玄関のドアの前でそう呟くが、あいつには聞こえていない。


「ありがとうございました」


外から菅原の声が聞こえる。


は? もう引っ越し終わったのか? 早すぎだろ。


いい。もう遊びに行ってやる。今日はわざわざ予定を空けていた。頼まれてもいないのに。


スマホが鳴る。電話だ。


「あー、はい」


「あ、紫門くん? やっと出た~。何回もかけたんだよ?」


「ごめんね? ちょっと仕事が立て込んでてさ。引っ越しとかもあって」


「えー? 引っ越ししたの? 実家から? 一人暮らし?」


「あー、そうそう。一人暮らし」


「えー! 行きたい。行ってもいい?」


いいわけがない。菅原が隣にいんだぞ。見られたらどうする。いや、別に見られてもいいだろ。別に。


「いやー、まだ散らかっててさ。人が呼べる状況じゃないかな」


「そっかぁ。今日は、休み?」


「あー、そう。休み」


「えー、じゃあ、これからごはんとかどう? ほら、最近連絡もくれなくて寂しかったから……」


いや、知るかよ。俺はお前の彼氏じゃねぇぞ。


「あー、ごめんごめん。今からなら、少し時間取れるかな。夕方からちょっと用事があってさ」


ヤケクソだ。菅原のせいだ。まぁ、でも、夜に菅原が手伝ってくださいとか言ってきたら困るし、飯食うくらいなら短時間で済むだろ。


「え? いいの? あのね、いいお店があるの。お店のURL送るね」


電話を切ったあと、送られてきた店を見る。


「俺が食えるもんは、なさそうだな……」


そう呟いたあと、支度を始める。


♢ ♢ ♢


「かんぱ~い。お酒、久々かも。嘘だよ。昨日も飲んじゃった。紫門くんが全然連絡くれないからだよ?」


瞼に塗られたラメが反射して、キラキラと光っている。


菅原は化粧はしてるっぽいけど、こんな風に光ってたことはねぇな。


どうせ「瞼を光らせなくても生きていけます」とか言うんだろうな。


「ねぇ、聞いてる? そんなに仕事忙しいの? 陰陽師? すごいよねぇ。みんなに自慢してるんだよ」


「何て自慢してんの?」


「えー? 紫門くんって陰陽師なんだよーって。ヤバいのを祓ったりするんでしょ? すごいなぁ。私、霊感とかないしさ。そういうの視えるのって、すごいと思う」


「確かに、すごいよなぁ。見えるのも、祓えるのも」


「え? 自画自賛? あはは、本当、紫門くんって面白い。ふふ」


そう言って、俺の腕に触れる女。


「あれ、なんかアクセサリー減った?」


「え? あぁ、してくんの忘れてた」


「私があげたやつ、いつもつけてきてくれてたじゃん」


やべぇ! 売っちまった! しかも、その金で菅原と焼肉を食っちまった!


「あー、マジでごめん。本当、最近忙しくてさ。ちょっと疲れてたのかもしれない」


「ねぇ、紫門くん。もうハッキリしてほしい。私って、紫門くんにとって何なの? もう待つのは辛いよ……」


……は? 俺にとって何なのか? 何を言っている? 付き合えってことか?


『私は付き合いたいとか、そんなんじゃないよ。ただ、紫門くんと楽しく遊べたらいいかなって思ってる』


前にこの女がそう言っていたことを、ふと思い出す。いや、お前がそれでいいって言ったんじゃ……。


「ハッキリって何を?」


「私のこと、どう思ってるのかってこと」


どう……正直、どうも思っていない。


ただ、確認したかっただけだ。俺が周りにどう映っているのかを。こういう見た目が良い綺麗な女が寄ってくると、安心した。それでしか、自分の価値を見出せなかった。


見た目がいい女を、多分、鏡にしていたんだと思う。そこに反射した自分を、俺は見ていた。


「鏡……みたいに思っている」


気づいたら、そんな言葉を口にしていた。


「鏡? どういうこと?」


「わからない」


「紫門くん、どうしたの? ちょっと変だよ」


変。


前だったら、そんなことを言われたら腹を立てたかもしれない。いや、多分、不安になっていた。


でも今は、もっと変なやつがいつも隣にいる。隣に住んでいる。そのせいか、別に“変”でもいいんじゃないかと思う。


「あのさ、ごめん。俺、付き合うとかはできない。その、嫌いとかじゃなくてさ。マジで仕事が忙しくて。いや、仕事が楽しくて。今はそういう気持ちになれない」


「そっか……」


嘘ではない。だって、そうだ。俺は今、この仕事が楽しいと思える。


菅原が祓って、俺が祓うフリをする、この仕事が。


「紫門くん、また遊ぼうね?」


「え? あ、あぁ。じゃあ、また」


そう言って、足早に立ち去る。


菅原、あいつ、ちゃんと飯食ったか?


忙しくて食ってねぇかもな。何か買ってってやるか。


そんなことを考えながら、俺はコンビニまでの道を歩いた。



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