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陰陽師の名家のイケメンなのに霊力ゼロな俺。全部マネージャーの女が祓ってるけど、アイツ全然可愛くない  作者: かにえR
【第二章 視えない男の煩悶】

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第十六話 知りたいとは、思う


カフェを出て、ストーカー男の会社の前に戻る。


「つーか、朝は通勤、昼は休憩でストーカー男に接触できたけど、この後は難しくねぇか? 菅原、お前夕方から用事あんだろ」


「はい。まぁ、賭けですね。ストーカー男は営業らしいので、もしかしたら外回りで出てくるかもしれません」


「はぁ、また待つのか? 来ない可能性だってあるだろ。つーかさ、どうやって調べたわけ? あの依頼者に聞いたのか?」


「いえ、御影家の力をお借りして」


「怖。お前なんか色々使いこなしてんな。俺でも知らないこと知ってそう」


「まぁ、そうですね」


バカにしたように鼻で笑う菅原。


「まぁ、俺は何にもわかんねぇけど」


「でしょうね」


「バカにしてんなぁ。まじで」


「バカにしてませんよ。まぁ、これから少しずつ学んでいけばいいんじゃないでしょうか。今、あなたがやるべきことは、日々の依頼をこなし、お父様の信頼を得ることです。まぁ、御影家を継ぐならの話ですけど」


「継ぐだろ。当たり前だろ。俺しかいねぇんだぞ」


「なるほど。じゃあ頑張りましょう」


「はぁ、なんかイラつくわ~。頑張ってんだろ、俺」


「はい、頑張っていますよ。最初の頃に比べて、遅刻も減っています。依頼者への態度も柔らかく、丁寧です。クチコミ評価も上々です。あとは……」


「え? 俺、頑張ってる?」


「はい、頑張っていますよ」


「前より?」


「はい。前よりずっと頑張っていますし、良くなっています。あとは……」


「菅原から見て?」


「……はい? はい。私から見て。あとは……」


「俺、あんまり褒められたことなかった」


「見た目はよく褒められてるじゃないですか。カッコいい~とか、背が高~いとか、鍛えてる~とか」


「なんか悪意があるな。言い方に。そんなのは遺伝でしかねぇだろ。顔だって母さんにそっくりだろ。身長だって親父からの遺伝だろうし。まぁ、鍛えてるように見えるのは、俺の努力かもしれない」


「そうですか」


どうでもいいという顔で、そう答える菅原。


「まぁ、なんか。そうやって褒められることってなかったんだよ」


「いえ、褒めていません。マネージャーとして評価しているだけです」


胸がズキッと痛む。


「マネージャーとしてか」


「はい、仕事なので」


「じゃあ、菅原としてはどうなんだ?」


「私として? どういうことですか?」


「いや、マネージャーじゃない、仕事じゃない、菅原として俺ってどう見えてんの?」


は? という顔で俺を見る菅原。


「ただのイケメンか?」


菅原の答えを聞くのが怖くて、ふざけるようにそんなことを言った。


「……普通の人間?」


「普通の人間……」


「はい。普通の人間に見えます」


「つまり、そのへんにいる人間と同じってこと?」


「はい? はい。まぁ、ざっくり言えば」


よくわからないが、めちゃくちゃ傷ついている自分がいる。


「そうか」


「はい」


「俺から見た菅原は……」


空を見上げ、ボーッとそんなことを呟く。


「マネージャーとしての私の評価でしたら、お父様に伝えてください。あ、悪いことなら伝えなくて結構です」


「俺から見た菅原は、よくわからない」


菅原を見ると、何言ってんだこいつという顔。


「……知りたいとは、思う」


口が勝手にそんなことを言った。菅原は、さらに何言ってんだこいつという顔をする。俺も自分が何を言っているのかわからない。


「私はあなたのことを知る必要があります。なぜなら、それがマネージャーの役目であり、私の仕事だから。でも、あなたが私のことを知る必要はありません」


また、胸がズキッと痛む。


「……そうだな」


「あ! 出てきた! あいつが出てきました! 行ってきます!」


そう言って、走り出す菅原。また、ロボットみたいなぎこちない歩き方で、ストーカー男とすれ違う。ストーカー男がヒィッと叫び、走って逃げていく。


ロボットみたいに歩く菅原の背中を見つめる。


『マネージャーなので。仕事なので』


菅原の言葉を頭の中で繰り返す。


俺はあいつにとって、あのストーカー男や、そのへんを歩いている人間と同じらしい。


やり切った顔で、俺のところに戻って来る女。


――菅原ひかり。俺の、可愛くないマネージャー。


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