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War King(戦王)  作者: チャラン
第十章 開戦

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第四十二話 ラグフェルトの挑発

 カイトの結婚、翼竜の事件から一年が経ち、ホーク達は二十歳になっていた。


「おはようホーク。ククちゃんもおはよう」

「キュルルッ」


 ホークが朝、親竜から預かった翼竜の体を洗っていると、レンがパンを届けに来てくれた。翼竜はククと名づけられていた。


「おはようレン。パンを届けてくれて有難う」

「いいのよ。ククちゃんに会うのも楽しみだし。いつものことだけどよく懐いてるわね」

「ああ。シクロスで悪さをしていた頃は、腹が減ってただけなんだろう。今は毎日餌が食べれるから大人しいし、よく言うことをきくよ」


 レンはククに近付いて、その頭を撫でた。ククは気持ちよさそうだった。


「乗って飛んだりはできないの? この子に乗れたら色んな所にすぐ行けるでしょう?」

「乗れるとは思うけどなあ。まだ試したことはないなあ」

「空を飛ぶからちょっと怖いわよね。じゃあ私は帰るね。仕事頑張ってね」

「ああ、有難う。気をつけてな」


 レンはホークの言葉に手を振って帰って行った。


 レンが届けに来てくれたパンを主食に朝食を済ませたホークとラークは、仕事に行くため一緒にカイトがいる城へ向かった。カイトはいつも通り、執務室にいた。シェラもそこにいる。


「朝から忙しそうだな二人共」

「ああ、おはよう。今日もご苦労さん。ホーク、ラークさん」

「おはよう」


 カイトとシェラはホーク達が入ってきたのに挨拶をした。ただ、今日はあまり冴えない表情を二人共している。


「浮かない顔をしているが、また何かあったのか?」

「ちょっとな……」


 カイトは書類を持っていた。何回か見返したような跡がある。


「その書類が浮かない顔の原因だな。ちょっと見せてもらっていいか?」

「ああ。お前にも見てもらって、相談しようと思っていたんだ」


 カイトはそう言うと、ホークに持っていた書類を手渡した。見てみると、グランドパレスに派遣されている諜報官からの報告書だった。


「……」


 ホークは暫く書類を読んでいた。


「リゾレッタとトリネアスとの国境付近のグランドパレス側の穀倉地帯が異常に豊かになっているようだな。兵士の数も増えている。この二箇所か……。厄介だな」

「浄石をまとまった数、手に入れられるようになったから、ということだろうか?」


 カイトの問いにホークはうなずいた。


「数年前に来たエルフィンからの使者もそんなふうなことを言っていたからな。やはり浄石だろう」

「一応、リゾレッタでも兵は増やしたし、地域も富ませた。それに、グランドパレスも侵略戦争の放棄宣言をしている。とは言っても不安だな」


 カイトがそう言った後、側に座っていたシェラが言った。


「いくら宣言をしたとしても分からんよ。宣言を破れば、グランドパレスはすべての国を敵に回すことになるが、そうなっても十分戦える国力が今のあの国にはあるはずだ」

「その通りだな。俺も念を入れて備えるために兵士の調練に行ってこよう」


 ラークは一連の話を聞いた後、兵士達の訓練場に向かって行った。


「僕達も今はやれることをやっておこう。とにかく今はオストガルドの国力を高めるしかない」

「そうだな。よし! 皆、仕事に戻ろう」


 ホークが方針を言った後カイトがまとめて、皆それぞれの仕事をやり始めた。




「首都に比べたら、とんでもない田舎だよなあ。ここは」


 クーガーの息子、カルザスはトリネアスとの国境付近の地域、サーフェルの城に派遣されていた。


「田舎ではありますが、以前とは見違えるほど豊かになっています。やはり浄石の賜物でしょう」


 そうカルザス付きの側近、サルファイが言った。カルザスが遠方に派遣される時は決まってついてくるのだが、参謀というには押しが弱い所がある。


「お前はそういうけど、面白くないのはしょうがないよなあ。本当ならこんな所には来たくなかったんだが……」


 サルファイはカルザスがそう言うのに、困った顔をして諭した。


「クーガー様の人選ですからあまりそういうことはおっしゃらないで下さい。それに、サーフェル地域は今では我々の重要拠点です。ここはしっかり守らないといけません」

「まあ、それは俺もなんとなく分かってるよ」


 カルザスとサルファイがそう話している所に、トリネアスの国境付近に出していた斥候が戻って来た。


「ああ、戻ったか。ご苦労。それでトリネアス側の様子はどうだった?」


 戻って来た斥候は一呼吸置いて、カルザス達に報告し始めた。


「はい。トリネアス側も我が国を警戒し、国境付近の兵力を増強しているようです」

「ふむ。やはり、油断はしていないということか。その兵数は分かるか?」

「おおよそ八千です」

「かなりの数ですね」

「ああ、このサーフェル地域の兵も増強したとはいえ一万三千だ。本国から後詰があるといえばあるが……」

「報告は以上です」

「ご苦労。下がって休め」

「はっ!」


 斥候は下がって行った。


「見過ごせない動きですね。いかが致しますか? カルザス様?」

「本国に伝令を出すと共に、俺たちも国境付近に行き、実際の様子を見てみることにしよう」

「かしこまりました。そのように手配します」




 カルザスとサルファイの二人は護衛兵を連れ、トリネアスとの国境付近まで移動した。


「遠目に見ても確かにトリネアスの兵はかなりの数がいるように見えるな」

「我々への警戒を大にしているのでしょう。元々、トリネアスは中立とは言え、侵略戦争を繰り返してきた我が国の方をオストガルドより嫌っています」

「そうだな。ちっ! 小国の癖にな」


 カルザスはそう言うと空を見上げた。サーフェルの城から移動に時間がかかったため、既に日が傾いている。


「もう日が落ちそうですね。近くの我が軍の砦に泊まることにしましょう」


 サルファイの提案で、近くのグランドパレス軍の砦にカルザス達は移動した。


 その砦で休息を取っていた夜のこと……


「カルザス様! 就寝中失礼します!」


 砦の夜警中の兵が、カルザスの寝室の前でそう呼びかけた。


「どうした? 何かあったのか?」


 カルザスは眠っていたが、呼ばれて目を覚ました。


「トリネアスからの使いの者から書状を預かっています」


 カルザスはそれを聞いて驚き、寝室のドアを開けた。


「俺がこの砦に移動したのを知って、トリネアス側が書状を持って来たのか?」

「いえ。そういうわけではないようです。この砦を経由して、カルザス様に書状を渡して欲しいということを、使者は言っていたようです」


 カルザスは移動の情報が漏れたわけではないことを知って、少し安堵したようだった。


「そうか。で、その使者は?」

「書状を砦の番兵に渡すと帰って行きました」

「分かった。とにかく、その書状を見せてくれ」


 カルザスがそう言うと、夜警兵は未開封の書状を手渡した。


「……!」


 カルザスは書状の文章を一読して、怒りに震え始めた。内容はこうだった。


(ボンボンのカルザス王子。遊び癖のあるお前はさぞかしサーフェルが退屈だろう。無駄に日にちを費やし無駄飯を食らうくらいなら、浄石を蒔いた畑でも耕していたらどうだ? それか、親父のクーガーに甘えて本国へ、さっさと帰るかどっちが良いかな? トリネアス国王ラグフェルトより)


「小国の分際でなめやがって! サルファイを呼べ!」


 サルファイは叩き起こされた形で、カルザスの寝室まで急いでやって来た。


「どうなさいました? カルザス様?」

「どうもこうもない! これを読んでみろ!」


 カルザスは乱暴に、書状を突き出した。サルファイはそれを受け取って、読み始めた。


「これは……。確かにひどい書き様ですが……」

「こうなめられては腹の虫が収まらん! 軍を動かすぞ!」


 それを聞いて、サルファイは顔色を変えた。


「そ、それだけは駄目ですカルザス様! これは明らかに我々への挑発です。ここで軍を動かせば、すべての国と敵対関係になってしまいます!」

「なら、この屈辱に手をこまねいていろというのか! 俺は我慢ならんぞ! トリネアス程度の小国、叩き潰してやる! 明朝に攻める! そのように手配をしておけ!」


 カルザスはそう言うとサルファイを強引に下がらせた。


「ああ……。どうしたものか、カルザス様はああなると歯止めが効かない。仕方ない…。本国にありのまま報告し、増援を頼もう……。こまったことになった……」


 サルファイは肩を落としていた。

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