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War King(戦王)  作者: チャラン
第九章 翼竜のいたずら

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第四十話 困った子竜

「ここはこう加筆してみるか……」


 カイトの結婚式が済んで、リゾレッタに帰って来たホーク達は、それぞれの仕事に励んでいた。カイトは皆を取りまとめながら主に兵の調練をラークと共につけていた。ホークとアベルは主に内政を見ていた。シェラは周辺の情報を集めるため、飛び回っていた。


「この辺りは注釈を入れた方がいいだろうな……」


 ホークは城の執務室で内政全書に付け加える自身の経験によるノートを書いていた。


「ホーク。入るぞ」


 声と共に執務室のドアが開き、カイトとアベルが入って来た。ホークは一旦、ペンを置いた。


「精が出るな相変わらず」

「そう言われるほど頑張っているつもりもないんだがな」

「そうだね。僕も内政はやっていて面白いよ。やればやっただけ、結果が出るからね」


 そう言うとアベルは執務室の椅子に座った。その後に、カイトが座った。


「まあ、あまり無理をせずに休む時は休めよ。お前は昔から体力があまりないんだからな」

「ははっ。まあ適当な所で休むよ」

「ああ、そうしてくれ。でな、ホーク。今日はお前の顔を見に来ただけじゃないんだ」

「何か話があるわけか……。何だ?」

「情報収集をしてくれているシェラが気になる話を持ってきたんだ」

「どんな?」


 ホークは開きっぱなしになっていた、内政全書とノートを閉じた。


「昔、オウルさんの所に行って、砂糖の供給不良の問題を解決したことがあっただろう?」

「懐かしいな。あったあった」

「事件を解決している最中に、竜の親子がいる洞窟にマスエルさんと入っただろう」

「ああ。それも懐かしいな」

「問題はその竜なんだ……」


 カイトの声の調子が少し落ちた。


「あの竜の親子が何かまたやってるのか? 話が分かる竜だったじゃないか。また潮流を変えたりしているのか?」

「いや。そこまで大したことじゃないんだが……。問題を起こしているのは子竜の方でな、覚えているか?」

「翼竜だったよな。小さい可愛い竜だったな」

「うん。その翼竜が成長してな。洞窟から出て近海をよく飛び回っているんだ。それだけならいいんだが……」

「何か悪さでもしているんだな」

「ああ。一言で言えば漁の邪魔だ。まあ、自分の餌を取るためなんだろうが、魚を取るために仕掛けた網をよく破って、魚を奪っていくらしい」

「それは困るなあ。親竜は子竜に何も言わないのかな」

「分からん。だからシクロスに行って、あの洞窟に行ってみようと思っている」

「そうだな……。確認する必要があるか。僕もついていこう」

「よければ僕も行くよ。何か興味が引かれるからね」


 ホークがシクロスに行くのを決めて立ち上がった後、アベルがそう言った。


「よし! 三人で行ってみよう!」




「やあ、よく来たね」


 数日後、ホーク達三人はシクロスへ移動した。到着して、まずオウル商会に向かった。出迎えてくれたのはマスエルだった。


「暫くぶりだねマスエルさん」

「ああ。僕も大分、商人の修行を積んだつもりだが、ホークも立派になったなあ」

「自分では分からないよ」

「まあそうだろうな。僕も自分じゃどの位、成長したのか分からない」


 そう言うとその場にいた皆は声を出して笑った。


「ところで、翼竜のことで来たんだよな?」

「ああ、その通りだよ。人を襲うような被害は今の所、出ていないようだけど困っているらしいじゃないか?」

「その通りだ。馬鹿にならない額の漁の被害が出ている」

「そうだろう。だから、僕達でまたあの洞窟に行こうと思っているんだ」

「僕も行った方がいいのか? できればあそこには行きたくないな」


 マスエルの渋い顔を見て、ホークは少し笑った。


「あの洞窟で確か怪我をしたよね。かすり傷と言えばそうだったけど」

「それがトラウマになっててな。できれば君達三人で行って欲しいんだ」

「分かった。まあ、そのつもりで来たんだけどね」

「船のことは任せておいてくれ。またあの連中にこちらから連絡をつけておくよ。海賊達とは、あれからずっと友好関係を保っている」

「そうだったよな。海賊船で行ったんだよな。あの子も僕らと一緒で成長しただろう。何て言ったかな?」

「ザップだろう? 今じゃ立派な海賊船の副長になってるぞ」

「そうか。会うのが楽しみだな」




 ホーク達はその日はオウル商会の商館の周りを視察し、商館で一晩泊まった。その間にマスエルが海賊に使いを出してくれたようだった。


 翌日の朝……


「おはようマスエル」

「起きたかいホーク。よく眠れたかい?」

「ベッドがふかふかでね。波の音も子守り歌に聴こえてグッスリ眠れたよ」

「そうかい。それなら良かった」


 マスエルは海賊からの返事の手紙を広げていた。


「海賊達から返事がきたみたいだね。どう書いてあった」

「いつでも用意は出来ているということだそうだよ。どうする?」

「じゃあ今日でも行ってみよう。有難うマスエル」

「いや、大したことはしてないよ。気をつけて」


 ホーク達はそれぞれ準備をして、町外れの海賊の港に向かうことにした。


「少しわくわくするな。海賊ってどんな感じなんだろう?」


 そう言ったのはアベルだった。冷静なアベルらしくなく少し興奮しているようだった。


「子供の頃の記憶だけど、話してみると面白い連中ばかりだったよ」

「ザップがどんな感じになってるか楽しみだよな。あの時は、あまりしゃべらない子だったよな」


 カイトもアベルと一緒で少し興奮しているようだった。そんなことを話しながら歩いていると、やがて、海賊のアジトに着いた。


「懐かしいな。子供の頃と変わってない」

「いかにも海賊という感じがするね」


 アベルは興味津々だった。


「じゃあノックしてみよう」


 ホークはアジトの扉をノックした。


「誰だ?」

「オウル商会から来た者です。ホークと言います」


 そうホークが答えると、扉は向こうから開いた。見覚えがある顔が出てきた。


「久しぶりだな。俺のことを覚えているか?」


 ホークは少しの間、その青少年をじっと見たが、誰だか気付いた。


「ザップかい? 本当に久しぶりだなあ!」

「ホークの噂はシクロスにも伝わっているよ。リゾレッタ・シクロス一の秀才だってな。オストガルドに仕官したことも知ってる。偉くなったなあ」

「そう大したことでもないよ。行き当たりばったりでそうなってるしね。運が良いのもあるし」

「謙遜するんだな。運だけで、そうはならない。ホークはやっぱり凄いんだよ」


 側らでカイトがうんうんと同意している。


「まあ、それはいいよ。で、用件なんだが……」

「翼竜の悪さのことだろう? 船を出せる手はずになっているけど、少し話そう。皆、中に入ってくれ」


 ザップに促されて、ホーク達三人はアジトの中に入った。


 中に入るとまた懐かしい顔があった。子供の頃に会ったリーダー格の海賊だ。その周りにも以前会ったことのある海賊達が数人いた。


「よう! 久しぶりに会うな。立派になったなあ、お前ら。俺は大分年を取ったぜ」


 リーダー格の海賊は座って、そうホーク達を出迎えた。確かに子供の頃より年を取ったようだった。髭も濃くなっている。


「砂糖のことでは世話になりましたね」

「懐かしいな。あの頃は小さいガキだったが、月日の経つのは早いもんだ……。おっと、感傷にふけってる場合じゃねえな」

「ええ。今回は翼竜のことで来ました」

「またあの竜の親子が絡んでるんだよな……。何か因縁があるんだろうな俺たちに」

「子供の頃の事件ほど深刻ではないですよね。それでも」

「まあ、我慢できると言えば我慢できるが、あの翼竜にこう漁場を荒らされたら、たまったもんじゃねえよ」

「そうでしょうね。従兄弟のマスエルもそう言ってました」

「そうだろう?何と言っても翼竜相手だからな。むやみに手が出せねえよ。退治するわけにもいかねえし、退治したらそうしたで、あの親竜が何をするか分からねえしな」

「その親竜に話をつけに行った人はいないんですね?」

「今の所いねえな。第一、俺たちは話をするための護符を持っていない」

「ああ、そうかそうか。話をするためには護符が必要でしたね」


 ここでホークは身に付けている護符を海賊達に見せた。


「それだ。それがあれば親竜と話がつけれる」

「そうですね。連れて行ってくれますか?」

「ああ、いいとも。よし! ザップ! 野郎ども! 出航の用意だ!」

「おう!」


 海賊達の威勢のいい掛け声がアジトの中に響いた。

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