第三十八話 カイトの結婚
一年が過ぎた。
ホーク達は十九歳になっていた。
「カイト、入るよ」
ホークはいつものように、カイトがいる城の執務室に入った。ただ、呼ばれた用はいつもの通りではないものだった。
「来てくれたなホーク」
カイトはホークやアベルなどから提出された、内政関連の書類を見ながらホークを待っていたようだった。ただ、様子がいつもと若干違っていた。
「何か特別な用があると言っていたな。なんだ?」
「ああ。実はな……」
カイトはもったいづけている。
「何からしくないな。スパッと言ってくれよ」
「分かった。じゃあ言おう。俺に縁談がきていてな。結婚することになった」
ホークは驚きと共に、喜びも表情に浮かべた。
「めでたいじゃないか! そうかそうか! 国王からそういう通知が来たんだな!」
「ああ。父上から手紙を受け取っている。相手はオストガルド国内の名家のお嬢さんだ」
「いやーおめでとう! 何だそういうわけか!」
ホークは喜んでいるが、カイトは照れ臭そうにしている。そして何か考え込んでいるようだった。
「どうしたんだ?」
「いや。俺は一応王子だから仕方がないことなんだが、面識がないお嬢さんと結婚するというのがどうもな……」
「なるほどな。政略結婚とまでいかないまでも、それに近いのかもな。気にしているのはそこだろう?」
「その通りだ。俺もいざ結婚するとなってもピンとこない」
「なあに、お前の人柄なら大抵の女性は好きになってくれるだろうし、お前もその女性を大切にできるはずだ。何とかなるさ」
ホークのその言葉にカイトは力を得たようだった。
「有難う。お前にそう言われるとそんな感じがしてきたよ」
「大丈夫なはずだよ。気を大きく持てば」
カイトはうなずいた。自分の意志を固めるようなうなずき方だった。
「それで結婚式なんだが、オストガルドでやるようになっている。来てくれるか?」
「もちろんだ。ただ、リゾレッタを空にするわけにもいかないな」
「ラークおじさんに残ってもらおうか? おじさんにも祝って欲しいところなんだけどな」
「そうだな。父さんが残ってくれるなら安心だ」
二人は執務室でかなり話し合った。アベルやシェラにも式に出席してもらおうという話になった。
そして、カイトの結婚式の日になった。
式は城内の広間で行われた。第三王子とは言え、オストガルドの王子の結婚式でもあることから、城下町は全体的に祝賀のムードが高まっていた。
「おめでとうカイト」
「有難うホーク。そうだ、式中にも紹介したけどあらためて……シア。ここに来てくれ」
カイトが呼ぶと、妻となった名家の娘、シアがカイトの隣に来た。
「妻のシアです。これから夫と共に宜しくお願いします」
「こちらこそ宜しくお願いします。良い夫婦になって下さい」
「はい」
「はい」
ホークの言葉に、カイト夫妻は口を揃えて返事をした。
「いや、そんなに僕の言ったことに二人共かしこまらなくても……」
「いやいや、お前の助言は何時でも的確だからな。かしこまってしまうよ。これからも頼む」
「そうかあ。何の気なしに言ったんだがなあ」
ホークがそう間延びをした言い方をすると、カイト夫妻は声を出して笑った。
「よう。仲良くやってるな。おめでとう」
「おめでとうカイト君」
結婚式に出席していたシェラとアベルもカイト夫妻を祝いに来た。
「二人共有難う。これからも頼むよ」
「僕に出来る限りのことはするよ。これからも宜しく」
アベルはそうカイトに返事を返していたが、シェラはなぜか周りを見回していた。
「どうした? シェラ?」
「いや、お前の兄貴連中は今日はいないようだなと思ってな」
「嫌いな弟の結婚式には立ち会いたくなかったんだろう。その方が俺としても良かったよ」
「あのお二方は僕もどうも好きになれないな……」
「僕達は皆そう思っているよ。ただ、あまりそれを面に出してはいけない。僕達の損になるだけだからね」
「そうだな。ホークの言う通りだ」
ホークの忠告を聞いて、ホーク以外の四人はうなずいた。その後、カイトはため息をつきながらこう漏らした。
「母上は名目上、式に出てくれたが、早々に退席されたからな……。結婚式の時くらい普通に祝って欲しかったよ……」
「大変だよな……。お前の所は……」
少し重苦しい空気が漂ったが、それを払うようにシェラが言った。
「なあに。俺たちが祝いまくってやるよ! まあ、とりあえず皆、飲もう! 食おう!」
そう言いながら、シェラはグラスにシャンパンを注ぎ始めた。
「よし! カイト! 皆! グラスを取ってくれ!」
皆、シェラが注いだグラスを言われるままに取った。
「二人の新たな門出を祝って乾杯!」
「乾杯!」
シェラの乾杯の音頭で皆、グラスのシャンパンを飲み干した。
皆に笑顔が戻った。




