第三十一話 士官学校の卒業日
レッドケープでの実戦の後、ホーク達はまた、何事もなく順調に学業を重ねていた。
夏が過ぎ、秋が過ぎ、瞬く間に一年が過ぎ、士官学校を卒業する頃になった。
ホーク達は十七歳になっていた。
そして、卒業を間近に迎えたある日……。
ホークはシージャに会いに神官学校に向かった。シージャもオストガルドに来てほぼ一年神官学校に通い、卒業を迎えようとしている。
「おはようホーク。どうした? 具合でも悪くしたか?」
シージャがこう言うのは、神官学校では病気や怪我の治療を行っているからだ。
「いや、顔を見に来ただけだ。それにしてもお互いもう少しで卒業だなあ。二年間あっという間だったよ」
「僕なんか一年だよ。勉強や回復魔法の修行をしていたら、もう卒業する頃になっていた。忙しかったなあ」
「学校っていうのは、すぐに時間が経つよな。それはそうと回復魔法の腕が上がったのか? 修行してたということは」
「ああ。前はちょっとした怪我を治せたり、痛みをやわらげることしかできなかったけど、今はちょっとした病気を治したり、体の調子を整えたりもできるよ」
「それは凄いな。ますますリジャ先生みたいになってきたな」
「まだお爺さんほどじゃないよ。……ホークは昔っからそこまで体が丈夫じゃなかったよな。よし! ちょっと魔法をかけさせてくれないか? 少しはましになるかも知れない」
「いいのか? じゃあやってもらおうか」
そう言うとホークは側の椅子に座り、シージャの指示もあって背中を向けて座った。シージャは手をかざして、体の悪い所を調べ始めた。
「うん、そうだな……。お前、昔っから胃腸があまり丈夫じゃなかったからな。やっぱりその辺りが弱いな。じゅあやってみるか」
シージャはそう言うと集中を始めた。
「デシック・レベル2!」
シージャが言葉を発すると手から優しい光が広がり、ホークの患部を暫くつつんだ。
「おお! 体が楽になった感じがするぞ!」
「だんだん魔法の効果が実感できてくるはずだ。前よりは楽に動けるようになるのは確かだよ。修行して、この魔法を身につけたからね」
「いやー凄いなあ。有難うシージャ!」
「お前にそんなに礼を言われると照れくさいな」
シージャは喜んでいるホークを見て、満足そうな笑みを浮かべた。
「ところで、ケルトやゾルカスには会ってるか?」
「僕はオストガルドに来てからもたまに会ってる。二人とも元気そうだよ」
「あいつらも兵学校で一年辛抱したからな。成長しただろうな」
「この間会った時、ホークの直属の部下になるんだと言って息巻いていたよ。調練も頑張っているみたいだ」
「それは有難いな。気心が知れた部下が付いてくれたら僕も嬉しいよ。あいつらを部下と呼ぶのも気が引けるけどな」
ホークの言葉に少し、シージャは間を置いて返事を考えこう言った。
「お前はどの道、上に立つ人間になるんだから、そういう所で気が引けていたらまずいぞ。お前らしい優しさといえばそうだけどな」
「上に立つ人間かあ。あまり好きな響きじゃないな」
「好きでも嫌いでもなってもらわないと困るんだ。僕達が」
「そういうもんかな。まあ、有難う。おかげで体の調子がよくなりそうだ」
「具合が悪くなったら何時でも来てくれ。と言っても、僕はもうすぐリゾレッタに戻るようになるんだけどな」
数日経ち、ホーク達はオストガルド士官学校の卒業の日を迎えた。
ホークは次席で卒業した。成績の首席はアベルだった。三席はシェラが取った。
「てっきりホークが首席だと思ったけどな」
「アベルの方が賢いんだよ。成績じゃ敵わなかったな」
卒業式を終えたホークとカイトが話していると、その辺りにいたアベルも歩いて寄ってきた。二人の会話を聞いていたようだった。
「成績じゃ……か。確かに成績では君に勝てたけど、実戦では敵いそうにないな。僕は」
(言葉が悪かったかな)
ホークはアベルにそう言われて、頭をかいていた。
「よう、三人揃ってるな。お互い無事に卒業できたことだし、四人で食事にでも行かないか? 記念にな」
いつの間にかシェラも話に加わってきていた。
「乗りが軽いなあ、シェラは。まあせっかくだから行くか」
ホークがそう決めたのでカイトもアベルも行く気になった。
「お決まりのようだな。じゃあ行こう」
四人は式が終わった校庭をあとにし、校門まで向かった。
「卒業おめでとう皆さん」
校門にはなぜか先輩のサリアがいた。
「どうしたんですか? こんな所でサリアさん?」
「どうしたんですか? は、冷たいわね。ホーク君達の卒業祝いに、先輩がおごってあげようと思ってわざわざ来たのよ?」
「それは有難いんですが……いいんですか? 男四人ですよ? かなり食べるから、お金かかりますよ?」
「あのねえ。私は士官職にもう就いてるから、結構なお給料もらってるの。あなた達、四人くらいおごってあげれるくらいのお金は持ってるわよ」
「じゃあ遠慮せずにおごってもらいましょう。ホーク、そうしようぜ」
シェラがホークの肩を叩きながら同意を促した。
「分かりました。有難くご馳走になります」
遠慮があったホークもサリアの言う通りにすることに決めたようだった。
「そうそう。先輩の言うことは聞いておくものよ。何が食べたい? 何でもおごってあげるわよ」




