第二十六話 リゾレッタの夏祭り
「どう? オストガルドは?」
「最初は居心地が悪かったけどな。今は慣れたよ。住めば都さ」
「実際あっちが都だからな」
シージャがそう言うとホーク達四人は声をあげて笑った。
「実はな……僕もオストガルドの上級神官学校に来年から一年間通うことになっているんだ」
シージャから思いがけないことを聞いて、ホークは驚いた。
「凄いな。それに僕にとってもカイト以外の昔馴染になるから心強いし嬉しいよ」
「俺たちも本国の兵士採用試験を受けるんだぞ。お前の直属の兵士になるつもりなんだぞ」
ゾルカスがホークの言葉の後に続けた。ホークはますます驚いたようだった。
「僕は一年間通った後はリゾレッタに戻るつもりだけどね。お爺さんの跡を継いでリゾレッタを守るつもりさ」
ホークはそうだろうとうなずいた。
「昔からお前はそう言ってたからな。でもシージャの実家はオストガルドのはずだろう?オストガルドで神官になれば、親御さんと一緒にずっと暮らせるんじゃないのか?」
「……そう考えたこともあるけど、僕はリゾレッタが好きなんだ。どっちかと言えば、ここの方が僕の故郷さ。だから、将来はここで神父をやる」
「相変わらずお前は考え方がしっかりしてるなあ」
「ホークもそうじゃないのか?」
シージャの問いにホークはかぶりを振った。
「僕は行き当たりばったりだよ。カイトが心配だから士官学校に行ったようなもんさ」
「優しいよな。お前は昔っから」
「ホークらしいよ。だから、俺らもホークについて行く気になる」
側らで聞いていたケルトがそう言った。
「有難うケルト、ゾルカス」
礼を言われると思わなかった二人は照れていた。
士官学校の夏期休暇は瞬く間に過ぎた。
ホークはリゾレッタの仲間と旧交を温め休みを目いっぱい利用してよく遊んだ。
休暇も終わりに近付いた頃に、カイトがリゾレッタにやって来た。
「カイトか。ようやく戻って来たな。来ないのかと思ってたよ」
実家で待っていたホークはカイトをそう出向かえた。
「中々城を出られなかったんだ。本当ならもっと早く来る予定だったんだが」
「まあ王子様だからな。色々あるな」
「王子って言うな」
二人は声を出して笑った。
「ラークさんは?」
「ちょっと今出てるよ。母さんがいるから、遠慮なくあがってくれ。リゾレッタでのお前の家はここしかないからな」
「はははっ。全くだ」
カイトはそう言うとホークの自宅の玄関をくぐった。
「カイト君! 久しぶりだねえ。元気だった?」
「ご無沙汰です。メイシャさん」
「ホークが世話になってるねえ。有難う」
「いや、世話になっているのは俺の方です。俺はホークがいないと何も出来ませんから」
それを聞いたホークは苦笑していた。
「カイトにはカイトでお前にしか出来ないことがあるんだよ。何も出来ないなんて言うもんじゃないよ」
「お言葉有難う御座います。軍師殿」
妙なやりとりに三人には知らず知らずの内に笑いが出てきたようだった。
「所で今日は商店街で夏祭りがあるんだ。行ってみるか?」
ホークの誘いにカイトはちょっと考えた。あることが思い浮かんだようだ。
「行くのは行くけどな。ホーク。お前はレンと一緒に行けよ」
「そうだね。そうしなさいホーク」
「何だよ二人共」
カイトとメイシャの一致した意見にホークは戸惑った。
「もう休みも終わりに近いんだから、レンとゆっくり遊んでやれということだよ」
「変な気を回すなあ。まあいいか。それなら僕はレンと一緒に行こう」
「そうしなさい。そうしなさい」
「母さんまで……」
ホークのその様子が可笑しかったらしく、カイトは笑っていた。
「で、祭りはいつ頃からなんだ?」
「夕方前頃かららしい。それまでここでゆっくりしよう。お前も疲れただろう」
「じゃあ、久しぶりにリゾレッタの実家でくつろがせてもらおうかな……。お世話になりますメイシャさん」
「遠慮することは全然ないよ。紅茶とパンを持って来てあげよう。今朝レンちゃんの所で買ったパンだからおいしいよー」
ホーク達三人が家でくつろいでいるうちに、夏祭りが始まる時刻になった。
メイシャは家の留守番をするようで、祭りにはホークとカイトの二人だけが出て行った。
「俺はケルト達と落ち合うよ。じゃあ、祭りの何処かで会おう」
「そうか。じゃあ僕はレンの所に行くかな。またな」
カイトは軽くホークの肩を叩きその場は別れた。その後、ホークはレンのパン屋に向かった。
「こんにちは。ホークです」
夏祭りということもあって、レンの店はもう閉まっていた。ホークは扉をノックしながらレンを呼んだ。
奥からドタドタという音がしてきて、扉が開いた。
「ホーク? どうしたの!」
「どうしたもこうしたも、祭りに一緒に行かないかって誘いに来たんだよ」
「一人で?」
ホークはうなずいた。
「……デートってこと?」
「まあそうなるか。幼馴染だからデートって感じ、しないけどな」
ホークがそう言うとレンは少し顔を赤らめたようだった。同時に今の自分の身なりを気にしだしたようだ。
「ちょっとだけ待っててね! すぐ着替えてくるから!」
「まだ祭りは始まってないからゆっくり着替えてもいいぞ」
そう言って、ホークは暫く店の前で待った。
「御免ね。待たせたね」
「レンは女の子なのに着替えるの早いな。その方が助かるけど」
「昔っからそうだったでしょ。さあ、行きましょう」
レンはウキウキしているようだった、自然とホークに手を伸ばしていた。
(…………)
ホークは少し考えたが、レンの手を握り、手を繋いだ。




