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黒バラと姫  作者: 無風の旅人
大陸覇権
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戦記93

 たった一人の捻くれ者のために大陸各国で陰謀が準備される中で、アルザニア城塞ではその捻くれ者の祭りの後始末に苦労していた。


 アルザニアの戦いで公国が得た共和国軍捕虜五万、これはアルザニア城塞と城塞前の平原に設置された捕虜用の陣地の二ヶ所に別れて収容された。公国はジャルダン伯爵の私兵とルード伯爵騎士団に傭兵隊三隊を加えた五千を用いて捕虜の監視を行い、これに物資輸送を受け持つ兵団一隊を加えて捕虜監視軍を形成していた。正規軍を極力使わないのは公国が連合王国とは休戦しておらず、公国主力は再侵攻に備えて東に留めておく必要があるからだった。

「ジャルダン伯爵、こちらでしたか。」

「おお、ダンケか。丁度よい。」

 共和国捕虜管理責任者のジャルダン伯爵は、小広間に向かう途中でダンケに呼び止められ自ら歩み寄る。

「これより共和国の将軍二人と会談でな。同席して欲しい。」

「はっ、それは宜しいのですが、この書簡に目を通されてからと思いまして。」

 ダンケがジャルダン伯爵に手渡したのはエヴァからの急ぎの書状。

「公女殿下からか。」

 ダンケの言葉と書状の送り主の名で、ジャルダン伯爵は書状の重要性を理解してすぐさま開く。

「ふむ、なるほど。」

 読み進めるジャルダン伯爵の横でダンケは暫く待つ。エヴァが共和国との講和会議に代表として出席している事は知っていたため、書状が捕虜に関するものだと考え、指令室で伝令より書状を受け取ったダンケは急ぎジャルダン伯爵へと書状を持参した。

「ダンケ、どうやら肩の荷が下りそうだぞ。」

「それは何よりです。」

 笑顔のジャルダン伯爵にダンケは捕虜問題の見通しがたったと知り、安堵の溜め息を漏らした。


 アルザニアの戦いで降伏した三個基幹軍の人員は公国軍全軍よりも多かったため、後から参陣したジャルダン伯爵は捕虜をどのように扱うか途方に暮れた。

 それを救ったのは西方面軍でノエルを事務面で支えたエンリッヒと、事前に纏められていた捕虜の取り扱いについて布告及び手順書だった。

 管理組織、共和国軍との交渉と武装解除、捕虜収容の手順や配置、物資の調達が網羅的に書かれており、作成者の先見と手際の良さに誰もが驚く。最も前文に『立案の費用については善意により無償とします。』という一文を入れる性格の問題から作成者の評価は回復しなかったが。

 この書類作成についてはエンリッヒも協力しているため、幹部達への説明も滞りなく、二つ三つの修正の後に共和国捕虜の取り扱い計画として採用され、ジャルダン伯爵が管理責任者、エンリッヒが副責任者、ダンケが警備隊長として共和国侵攻軍の武装解除が行われた。


 最も実行の困難さに比べれば計画の方が十倍楽だったと後日、責任者は語る。


 共和国軍では貴族制がある公国で士官は優遇され平民は奴隷と同じ扱いになる、との風聞を信じる者が多数いたため、武装解除の直後から蜂起を言いだす者や実際に計画する者もいた。公国から振る舞われた食事が兵士にも十分な量であったため、噂は徐々に沈静化したものの、その後も食料の遅延や警備兵となった傭兵達とのいざこざ、脱走計画の発覚等の様々な問題が発生した。

 公国側はジャルダン伯爵の指揮やダンケの武力で暴動まで発展させずに管理を続けたが、それも限界に近付きつつあり、捕虜代表との間で会談を準備していた。

 ダンケはその会議前にジャルダン伯爵へエヴァから届いた書簡を渡す事ができ、偶然ではあるものの事態の改善へと導くことができた。


 ダンケを伴ってジャルダン伯爵が会議室に入ると公国側にはエンリッヒが既に着席しており、二人が席に着くと早々に会議が始まる。

 共和国軍側の代表であるクロード将軍は公国の日々の対応に礼を言いつつ、共和国捕虜の状況を伝える。

「公国の配慮は十分承知しておりますが、やはり兵の不満は隠せませぬ。」

 クロード将軍は降伏後、協力的かつ礼儀正しく公国軍幹部達と接していた。最年長の将軍として、また己の矜持を保つため、政治体制が異なる国で兵を守る責務がある。実直なエドワース将軍は、より率直に要望を公国に伝える。

「やはり、あの回廊の間の土地は空気が悪い。もっと平原寄りに場所を移してもらいたい。」

「それはできぬ。これ以上、陣地を広げるのに人員を割けぬ。それに監視の目が届かなくなる。」

 ジャルダン伯爵の拒否は公国側としては当然で、三交代で昼夜問わず監視を続ける体制は今の場所でも人員的に余裕が無く、また賠償金や身代金が確定していない状況では、更なる費用負担となる設営は認められない。

「せめて交代制とするなど、移動を認めて欲しい。」

「十名二十名ならともかく、万の軍の移動など混乱が生じる。」

「しかし第六軍では体調不良を訴える兵が急増している。このままでは疫病の危惧せねばならん。」

「陣地を広げる労務は我が軍が受け持っても良い。」

 エドワース将軍からの窮状の訴えに加えて、クロード将軍は譲歩案として自軍による設営を申し出る。これは兵を無為に過ごさせるよりは、目的を持たせ士気を保つ方策としての意味もあった。

 ここでジャルダン伯爵はダンケを一瞥する。ダンケに頷かれ、ジャルダン伯爵は先ほど受け取った書状について二人の共和国将軍に伝える。

「これは内々ではあるが、四日前に公国と共和国の和平がなった。」

「それは、真か、いや失礼した。」

 エドワース将軍は大声を上げ、すぐに非礼を詫びる。

「いや構わん。それよりも、貴軍は共和国に戻る事になる。」

「それが早期に実現するのであれば、いたずらに兵を移動するのは極力避けたほうがよいかもしれん。」

 クロード将軍はジャルダン伯爵の言わんとするところを理解した。そのまま会談の空気が明るい方向へと向かい掛けた矢先に小広間の扉が開く。

「閣下、こちらでしたか。」

 入ってきたのはジャルダン伯爵配下の騎士。参列者の顔ぶれから報告を迷った様子の騎士を、ジャルダン伯爵は自分の席まで呼び耳元で報告を受ける。

「何だと。」

 厳しい表情になったジャルダン伯爵に全員の視線が突き刺さる。

「間の悪い、いや、逆か。」

 ジャルダン伯爵の独り言にクロード将軍は問いかける。

「どうされました。」

「貴軍の兵士が砦に立てこもったらしい。」

 エドワース将軍は厳しい顔で立ち上がり、公国の責任者に宣言する。

「すぐに止めさせる。」

「いや、待たれよ。」

「そうだ、落ち着け。」

「何故に。」

 ジャルダン伯爵とクロード将軍の両方に止められ、エドワース将軍は憤慨気味に聞き返す。ジャルダン伯爵は渋い顔で確認する。

「貴公は先ほどの講和の話を兵士達に話すつもりであろう。」

「無論、そうすれば兵達も大人しくなる。」

 当たり前だとの表情で語るエドワース将軍に、ジャルダン伯爵は首を振る。

「それがいかんのだよ。決まったのは捕虜の開放、つまり貴軍の帰還だけで、具体的な計画がたったわけではない。」

「それは。」

 エドワース将軍もそこで言葉に詰まる。帰還が決まったとなれば兵も無理に脱走などしないが、次にその希望が適えられる時期を知りたがる。それがわからぬまま時が過ぎれば不審に変わり、最悪暴動を鎮めるための嘘と考えるものまで出る可能性がある。

 それでも事態の収拾は行わなければならぬと、クロード将軍は提案する。

「我々が出向き、説得をさせていただきたい。」

「それはお頼みしたい。しかし重ねて言うが先の件は他言無用。」

「判り申した。」

 問題解決にむけて協調すると合意した公国と共和国の責任者は立ち上がり、一斉に小広間から出て現地へと向かった。


 現場は放棄された第二砦で、比較的被害の少ないためか主塔の上層まで昇ることができた。

「出城に立て籠もって何とする。すぐにそこから降りよ。」

 エドワース将軍の声は高く響き、主塔にこもる共和国兵にも十分聞こえた。

「将軍、我々はもう我慢できない。共和国への帰還を公国と交渉してください。」

「いざとなれば我々のほうが多いんです。」

 塔の窓から口々に叫ぶ声は切羽詰まった印象を受ける。

「不味いなこれは。」

 ジャルダン伯爵がダンケを見ると同意の頷きを得る。周囲を囲む共和国捕虜の中から高級士官が現れると、エドワース将軍に敬礼する。

「閣下。」

「おう、ミールシェルト参謀長。これはいったい。」

「はっ、ご説明します。」

 冷静な第六軍の参謀長の説明で、共和国と公国の両責任者は事態を把握した。


 始まりは第六軍の兵士数名が酒についての不満を大声で叫び始めた事で、監視の公国騎士が注意を与え口論となる。いつもなら所属する隊の隊長が現れて宥めるなり抑えるなりするが、兵士の一部が自隊の隊長にまで反抗するに至り、応援の騎士数名で取り押さえる事態に発展した。

 その際に椅子を振り上げた兵に対して騎士が剣を抜き負傷させたのが切っ掛けとなり暴動が発生、遂には暴走した兵二十人が騎士二人を人質にして第二砦の主塔に立てこもった。


「何故この時期に。」

 クロード将軍は先ほど知った講和の話を口に出せず、共和国人で唯一知るエドワース将軍と顔を見合わせて頭を抱えた。

「二十名ほどであれば我々が突入すれば問題ありません。」

 人質となった騎士達の隊長がジャルダン伯爵に訴える。

「まて、この時期にそれは不味い。」

「何故ですか。」

 騎士隊長はルード伯爵騎士団に所属する正騎士で、ジャルダン伯爵の指揮下にあるのはルード伯爵の命令であり、捕虜の命と騎士二名の安全の優先度は明白だった。

「将軍、命令してください。我々に蜂起せよと。」

「何を言っている。」

 頭上からの声にエドワース将軍は反射的に怒鳴り返すが、同時に周囲に緊張が走る。公国軍はジャルダン伯爵が完全武装の兵を伴っているとはいえ、ダンケ率いる黒バラ騎士団の五名と現場にいたルード騎士団十名を合わせても五十人程度。共和国捕虜は素手とはいえ数百人を超える。当然、共和国捕虜が集まるのを抑えようと傭兵隊の監視兵が動いているが、それをすり抜けて来る捕虜で更に増えていく。

 危険を感じたルード騎士団の隊長が手を剣にかける。

「まて、早まるな。」

「勝手な兵の言葉など、聞く耳を持たんでよい。」

 ジャルダン伯爵とクロード将軍が互いの兵を必死で抑える。緊迫する両者を止めたのは朗々と響く声だった。

「道を開けよ。」

 第二砦に集まっていた共和国捕虜が背後からの声に振り向くと、完全武装の騎兵の一団が目に入る。

「何事であるか。道を開けよ。」

 大勢の兵を前にして少数の騎兵は全く恐れを見せず、一糸乱れぬ馬足に共和国捕虜が思わず下がった隙間に道ができる。一団を視界に納めたジャルダン伯爵は見覚えのある軍旗にまさかの思いで口に出す。

「親衛隊旗だと。」

 親衛隊旗を掲げた公国親衛隊が砦の前で停止すると、小柄な騎士姿の一騎がジャルダン伯爵に声をかける。

「伯爵、これは何の集まりだ。祭りにしては華やかさに欠けるな。」

「殿下、何故にこちらに。」

 警護の騎士四名と共に進み出たエヴァの冗談に反応する余裕無く、ジャルダン伯爵が真面目に尋ねる。ジャルダン伯爵の手元に届いた書簡には講和会議で決まった捕虜返還の件のみで、エヴァが講和会議後にアルザニア平原に立ち寄るとの記載も無く、先触れの騎士も来ていない。

「先の書簡の件は話したか。」

「いえ、まだ。」

「判った。責任は私が持つ。」

 エヴァはそのまま馬首を共和国捕虜の群れに向けて、声を張り上げる。

「良いか、共和国の民よ。我が公国と貴国の間に和平が成った。」

 響き渡る声から遅れること数瞬、鋭敏な者は悟り、すぐに判らぬ者は顔を見合わせ鋭敏な者に事情を確認する。

「貴様らを責任もって共和国に返す。そのために協力せよ。あと少しで国に返れるのだぞ。」

 明確な言葉に理解できた共和国捕虜達から一斉に声が溢れ、喜びの表情や緊張から解放された顔が広がっていく。その様子を確認したエヴァは自分に近づく臣下から挨拶を受けた後、元敵将に視線を移す。

「公女殿。」

「調印以来だな。」

 クロード将軍は頭を下げ、エヴァに公人としての礼儀を示した。

 共和国侵攻軍は総司令部が撤退したため、公国は降伏した第三、第六、第十二の基幹軍と個別に降伏文書を作成してクロード将軍、エドワース将軍、そして戦死したビュテー将軍に代わり代理司令官となった参謀と署名を交わした。その時、直接エヴァと言葉を交わしたクロード将軍は、敵の司令官が厳しい表情と厳格な声の持ち主であり、女の身でありながら軍を率いたのは、支配者の一族として単なるお飾り以上の資質があるからだと知った。

 今、再び会ったエヴァの印象はそれとは異なり表情は柔らかく、しかし共和国の政治屋とは異なる人の上に立つ風格を感じる。

「馬上のままで失礼する。」

「我々は捕虜であり、お気遣い無用。」

 クロード将軍は立場を明確にすると同時に慣れ合わず、共和国兵に不審を持たせない距離感の保つ。

「「殿下!」」

 突然、ダンケの剣と親衛隊のハーミットの剣が同時に抜かれて複数の矢を弾く。すぐさま警護の騎士がエヴァを囲み周囲を警戒する。

「馬鹿者が。」

 クロード将軍が怒鳴ったのは、エヴァの頭上からの矢は明らかに塔の上から射られたからだ。

「嘘だ。俺たちは騙されんぞ。」

「公国の支配者の言葉など。」

 頭上から聞こえる声にルード伯爵騎士団の騎士隊長がいきり立ち、配下の騎士へ塔へと向かう命令を出す。

「殿下に矢を射かけるなど。奴らを許すな。」

 自分の目の前でエヴァが負傷、更には死ぬなどなればルード伯爵の立場、ひいては自分の立場が悪くなるという計算と、公国の騎士として主家を危険に晒しては恥であるという気構えが混在して怒りは激しくなる。

「何を慌てておる。」

 周囲の混乱にエヴァが一人冷静な、というには大声で告げる。

「公国にはたまに雨の他に矢が降る。」

「今、なんとおっしゃられた。」

 周囲の誰もが不可思議なエヴァの言葉に、ジャルダン伯爵も礼を欠いた表情で尋ねてしまう。

「伯爵も知っておろう。マノール丘陵でも会談中に矢が降ってきた時のことを。」

 敢えてエヴァは周囲に聞こえるようにジャルダン伯爵に答えると、頭上の塔に向けて叫ぶ。

「そこの塔におるものよ。そこから見えるであろう、馬車の列を。それは共和国から貴様らへ酒を届ける荷馬車だ。」

 続けてエヴァは周囲の全ての共和国捕虜に聞かせる。

「故国は貴様らを見捨てておらん。今夜は故郷の酒で前祝をするがよい。」

 再び起こる歓声を聞きながら、ダンケと親衛隊が頭上を警戒する。ジャルダン伯爵は共和国捕虜への警戒を緩めず、ルード騎士団も塔への突入態勢を解かない。この状況でエヴァが命令を出す前に塔に向かって一歩進み出る人影があった。

「いい加減にせんかああぁ!」

 先ほどのエヴァとは比べものにならない怒声はエドワース将軍の我慢の限界を表していた。

「公女殿の恩情も理解できず、まだそんな所にいるのか!」

「それになんだ貴様ら、婦女子に矢を射かけるなどそれでも共和国兵士か!!」

「今すぐ降りてこい!来ぬと言うなら儂自ら引きずり降ろしてやるぞぉぉ!」

 エドワース将軍の声が平原に響き渡り木霊すら微かに聞こえる。憤怒する将軍が睨む塔の窓から、やがて剣や矢が投げ捨てられた。


 しばらくのち共和国から帰還支援のための部隊が到着、第一陣の出発から最後の兵がアルザニアを離れるまで様々な問題が発生するも、ジャルダン伯爵が見事に取りまとめて一ヶ月、第一砦の前から最後の帰還部隊が旅立とうとしていた。

「閣下には感謝の念しかない。」

 エドワース将軍がジャルダン伯爵に頭を下げる。

「我が役目をこなしただけだ。」

 首を振って畏まった態度は必要無いとするジャルダン伯爵。

「最後までこの地に残り、御自分の責務を全うされた将軍には敬意を表する。」

「いや、敗軍の将の務めだ。」

 互いに相手を称える二人の壮年の男は、苦楽を共にして親交を深めていた。それゆえ聞けなかったある質問をエドワース将軍は口にした。

「我々は王権を否定した国だ。なのに何故貴国はここまでしてくれたのだ。」

 共和国では王権の国では民は常に圧政の下にあると考える。そのため捕虜になれば平民である兵士の扱いも酷いと。何も間違いは無いと信じていたエドワース将軍は、公国で初めての経験を味わう。

「我が国は主君を持ち、主君が主君である限り従う。貴族も平民も。」

「つまり貴国の主君の意志というわけか。」

 暴動時に会ったエヴァを思い出すエドワース将軍。その様子からジャルダン伯爵は相手の考えを読む。

「殿下は少し変わっておられる。」

「どのように。」

「公国の公女でありながら他国であろうと民は守るべきだと考えておられるようだ。」

 ジャルダン伯爵の言葉にエドワース将軍は共和国の理念を思い出す。

「万国の民に開放を。」

「なんだそれは。」

「共和国憲章の言葉だ。」

 エドワース将軍の説明にジャルダン伯爵は首を傾げる。代々の領主で貴族であるジャルダン伯爵には民の哀れさを思いはしても、他国の民を守護対象と考えた事など無い。

「まさか共和制の理念を君主制の姫が体現しようとするのか。」

 エヴァへの印象や公国の捕虜の扱いから導きだされた考えを、皮肉な思いでエドワース将軍は呟いた。

「閣下、最後の中隊の出発となります。」

 共和国連絡将校の報告に、エドワース将軍は特別に許された馬上の人となる。

「では閣下ご壮健で。」

「ああ、互いにな。」

 ジャルダン伯爵の挨拶に頭を下げるとエドワース将軍は号令をかける。

「中隊出発。祖国へと向かう。」


 こうしてアルザニアの戦いの全ての幕が下りた。

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