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第一部 最終話なのです

──翌年。春。アリューシア貴族学園。


 ピンクブロンドの髪がふんわりと揺れています。湖面のように青く澄んだ瞳です。その場にいる誰もが見入ってしまうような少女が両脇を締めながら身をよじらせて。

「あ~ん。この制服、小さすぎてなんかキツい~」

 可愛らしく声を上げています。

 ミルフィーナです。あざといのです。あれは絶対にワザとやっています。入学早々、周囲の注目を集めて、早くもスクールカーストのトップに躍り出る作戦なのです。まったく腹黒の毒婦の考えそうなことなのです。


「な、なんだって。 このままではミルフィーのオムネが大変じゃないか! すぐに新しい制服を用意しよう。急がなきゃ!」

 マカロンが両手を振り回し、お付きの侍従に指示を出しています。


「お前たち、バカだろ! 校門で何を騒いでいるのだ!!」

 長身で隻眼の女騎士、ライザさんがやってられないという風にプイと横を向き吐き捨てます。


「だって、ライザぁ~。お胸が締められて息ができないのですのぉ~」

 頬を薄紅に染め上げ、ミルフィーナは人差し指をポテッとした唇にあて上目遣いで訴えます。


 それを聞いたマカロンは、ますます声を張り上げ。

「息ができないだって!? すぐに医者を呼ばなきゃ! そうだ! この中にお医者さんはいませんか!」

 と、辺りを見回します。


 ええ、いるわけありませんね。だって学校ですから。


「あん。マカロンさま。見て下さいますぅ~」

「うんうん。どこどこ?」

 ボタンを開け見せるミルフィーナに覗きこむマカロンです。もの凄いバカップルなのです。


「お前たち、いい加減にしないと斬るぞ!」

 とライザさんはもはやプンプンです。


 ほら、見てご覧なさい。男子たちはすっかりミルフィーナを見て鼻の下を伸ばしています。中には純情そうに顔を赤らめてうつむいてしまっています殿方もいるようですが。

 て、よく見たらウチのランスロットお兄さまですわ。まあ、大変。お兄さま、女の子にあまり免疫はないのかしら。これは早く、姫騎士のプラムさんとお付き合いさせなければなりませんね。うんうん。そうしましょう。


 わたしが初心なお兄さまの心配をしていましたら、ようやく待ち人が登場してきました。


 スポットライトを当てたように彼だけが浮かび上がり、周りの人間は一瞬にして白黒にモブ化します。


「ピエール!」

 わたしが駆け出すと。


「パトリシア!」

 すぐに気がついたピエールが両手を広げて待ち構えます。


 実に昨晩別れてから十時間ぶりの対面なのです。さみしかったのです。心細かったのです。


 わたしとピエールはそのままお互いに、あはは、うふふと両手を絡ましながらクルクル回って笑いあいます。うんうん。この世はわたしたちを中心に回っているのです。


 チッ!

 舌打ちが聞こえたかと思うと。

「ここにもバカップルがいやがった!」

 ライザさんです。


 うんうん。聞き捨てなりません。


 わたしは振り返りますと。

「ライザさん。ピエールはわたしの婚約者ですから手を出さないで下さいね」


「だ、出すかバカ!」

 なぜか右手でアチャーと額を押さえています。


 うんうん。「ピエールの魅力をわからないなんてライザさんは女として何か欠陥があるに違いない」のです。


「バカやろう! ホントに斬るぞ!」

 あら、いけません。ついつい声に出してしまったようです。


 ちなみに侍女のマーシャはいません。ロズベルト先生の押しかけ女房になった彼女は今、ノルドのガウリンにいます。百五十年ぶりに城壁都市ガウリンは我がベイグラハム家の居城になりました。

 お父さまのアレクサンダー辺境伯は侯爵になりノルド全域を治めています。



「パトリシア。そろそろ入学式が始まるみたいだよ。さあ、行こうか」

 ピエールが促します。


「……でもせっかく会ったばかりなのに」

 わたしはピエールともっと会話したくてしたくて仕方ありません。


「ふふ。パトリシアは文句が多いね。でもそんなところも可愛らしいよ」


 以前のわたしならここで、黙って赤くなりうつむいてしまったでしょう。でも、今は違います。わたしわかったのです。わたしはどうやらピエールのことが本気で好きなのです。例え、火炙りになろうともわたしはこの人とずっとずっと共に歩んでいくと決めたのです。


 ですから、照れずに顔を上げ、ピエールを見つめながら。

「そんな人をクレーマーみたいに言わないで欲しいのです」

 と少し拗ねるふりをしてみました。


 ピエールはわたしの頬を指で優しく小突くと。

「そんなに膨れないでおくれ。ボクの大切な人」


 カアッ-。


 ダメです。一瞬で顔がほてります。まいりました。免疫があるはずなのに完敗です。ピエールは、わたしの王子さまは相変わらずの直球勝負なのでした。


「うん」

 わたしは小さく頷くと手をそっと出します。ピエールはその手をしっかり掴むと講堂へとエスコートするのです。


 予鈴がなります。入学式です。これからわたしの学園生活が始まるのです。



──悪役令嬢に転生したようですが、婚約者さまはクレーマーさまで御座いますか(第一部完)。

 お読みいただきまして誠にありがとうございました。

 切りが良いようですのでこれにて第一部完結といたします。

 第二部「聖杯編」は新たに続編として投稿致す予定です。しばし、お時間を頂けましたらと存じます。

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