その6~最強戦士、コンラート~
話を元に戻して、独り言みたいに呟く。
「魔力と知力が100のベネディクトじゃないとしたら、体力と武力が100のコンラートが怪しい?」
耳ざとくコンラートが聞きつけて立ち上がり、慌ててドタドタと足を踏み鳴らして私に近づいてきた。
私の目の前に立ち、コンラートが
「ハンナ皇女っ!!
本気かっ??!!
本気でオレが魔王だと思ってるのかっ??!!
オレが最強戦士トーナメントで優勝したとき、祝福の花束を手にした君を初めて見たとき、永遠に君のために命を捧げる!と誓ったオレを疑うのかっ!!」
一瞬にして思い出した。
すり鉢状になった闘技場の真ん中で、3倍以上の対格差がありそうな相手とがっぷり組み合った瞬間、汗が飛び散った上半身裸のコンラートの姿を。
武器を隠せないように下半身はぴったりとしたズボンをはいてた。
素手で打撃と締め技で勝敗を競う格闘技部門と、寸止めだけど剣さばきの巧みさで競う剣技部門があり、その両方でコンラートは優勝し、『最強戦士』の栄光を手にした。
私は優勝者と魔王討伐に行くことを強制されてたので、祝福の花束贈呈の役目を押し付けられていた。
イケメンだし最強だしでコンラートは花婿候補には最高!だと思った姉さまや妹たちは、私の役目を羨んで、嫉妬に燃えてた。
だけど父さまは私とコンラートを仲良くさせたくて私をキラキラに飾りたてて祝福の壇上に立たせた。
前回の最強戦士トーナメント優勝者で現国家警備部隊隊長が、祝福の言葉を炎天下でダラダラと述べ続けたせいで、日よけの傘もない陽射しガンガンの場所で息苦しいコルセットで締め付けられた私は、貧血で眩暈がし、花束を持ったまま気を失い壇上から崩れ落ちた。
演壇の下で私を受け止めてくれたのがコンラートだった。
今思えば、さすがの反射神経と腕力っ!!って感心する。
受け止められた直後は、視界は真っ暗で何も見えなかったけど、しばらくすると目の前がぼんやり明るくなり、コンラートの顔が間近にくっきりと見えた。
筋骨隆々の身体からは想像もつかない、繊細なイケメンぶりに惚れ惚れと見とれてしまった。
細い鼻梁の筋の通った鼻に、白っぽい薄い唇に、彫りの深い目元。
無造作に肩まで伸びた長髪は金色で、エメラルド色の瞳と美しく調和してた。
コンラートに抱きかかえられて、パツンと筋肉の張った裸の胸から高い体温が直に伝わり、汗で湿った生々しい男性の肌を感じて、突然恥ずかしさでどうしようもなくなり、慌てて
「ごめんなさい!
みっともないところを見せてしまって!
降ろしてくださいな!」
焦って足をバタバタさせる私に苦笑してコンラートが
「はいはい。
そんなに慌てなくても取って食いはしないよ」
私を降ろしたあと、コンラートは地面に落ちた花束を拾い上げ、匂いを吸い込むように花に顔を埋め
「これはドライフラワーにしよう。
君と初めて出会った記念に。」
と呟いてほほ笑んだ。
観客席から女性たちの「あぁ~~~~~~っっ⤵」的な、ため息交じりの感嘆の声が聞こえたような気がした。
それにしても体力自慢って=忍耐力自慢なの?
炎天下で他人の体調も考えず、ダラダラとつまらない話を聞かせようって魂胆は何?
強い男=我慢強い男=炎天下でも平気な男!こそが『真の最強戦士』っ!!的な??!!
忍耐力が底なし!ってあんまり知的なイメージはないけどそれはいいの?
あの時のことを思い出して、ちょっと不機嫌になった。
(その7へつづく)




