その7~魔王判定試薬の存在を思いだす~
思い出に浸ってると、コンラートが鼻息を荒くして私に顔を近づけ、
「ハンナ皇女っオレが魔王だと思ってるのか?!
本気かっ?!」
と圧をかけてくる。
コンラートの身体を押して距離を取り、
「わかったから!落ち着いて!」
そしてさっきから腕組みして考え込んでるベネディクトに
「ね、魔王を見分ける試薬?みたいな物ってないの?
あ、でも、そんな都合のいい物なんてないか~~~!」
話しかけると、ベネディクトがハッ!とした表情で焚火の周囲の自分の荷物袋を置いた場所まで戻り、荷物をガサゴソとあさり始めた。
しばらくして、コルクで蓋をした、小さなガラスの小瓶を取り出し私のところに持ってきて手渡しながら
「魔王を見分ける試薬とはズバリこれですっ!!」
私はガラスの小瓶を傾け、中の紫色のドロッとした液体を見ながら
「これって…確か、あのレアドラゴンを退治した時に、あなたが採取してた血液?」
ベネディクトは興奮で頬を赤く染め、大きくウンと頷き
「そうですっ!!
プロタファ・ドラゴンは出現率0.01%のレアドラゴンです!
運よく遭遇・退治できたので血液を採取しておきました!
退治後、速達フクロウを魔法学校あてに送ったので、おそらく回収チームが研究用に回収して持ち帰ったでしょう。
それぐらい貴重なんです!
僕が魔法学校で行った研究のひとつにプロタファ・ドラゴンの毒性についての研究があります。
グランヴェル魔国の魔王一族は血液に、このドラゴンに対し過剰な反応を引き起こす物質を遺伝的に持っています。
その物質が暴走すると、魔王一族は血管に深刻なダメージを受け死に至ります。
具体的に言うと、血管内のバランスが崩れて、血液が凝固し、全身で微小な血栓ができ、肺や脳など各臓器で深刻な梗塞を引き起こし血流が低下し酸欠を引き起こすと同時に、凝固更新状態のために凝固因子と血小板を使い果たし大量出血を引き起こすようになります。
具体的には脳、消化管、皮膚、筋肉、体腔など……」
ワケが分からないことをまくし立てるので、嫌になり
「あーーーーっっっ!!!
わかったわよっ!!
魔王だけに効く毒なんでしょっ!!
もういいからっ!!」
両手を振ってベネディクトの説明をストップした。
ベネディクトは私から小瓶を取り返し、
「これを一滴でも魔王の体内に入れることができれば、魔王を倒すことができます!
もし、ここにいる仲間の中に、この毒を付着させたナイフで皮膚に傷をつけることすら嫌がるような奴がいれば、そいつが魔王です!」
疑い深い私は怪訝な上目遣いでベネディクトをジッと見つめ
「でも~~~もしかしたら~~~普通の人でもそういうショック反応?が起きるかもしれないでしょ?
魔王じゃないのに、たまたま偶然そういうショック反応が起きて死んじゃったら可哀想じゃない?」
ベネディクトが得意げにフンッ!と胸を張り
「もし、魔王じゃなければ僕の治癒魔法で救うことができます!
もし魔王一族がこの毒によるショック状態になったら、僕の魔法では治癒することはできません!」
ふむ~~~~!
なるほど~~~~!
それならできそう?
でもっ!とまた別の疑問を思いつき
「それって、あなたが魔王だった場合は成立しないわよね?
だって、毒の話も嘘かもしれないし、何とでもなるよね?
仲間の一人が死ねば、その人を魔王に仕立て上げることもできるし。
あなたがホントの魔王ってことはバレずに最後には私たち全員を殺すこともできるわよね?」
ベネディクトが呆れたようにため息をつき
「はぁ~~~~~。
そこまで疑われちゃどうにもなりませんね。
じゃ、この作戦で魔王を見つけ出すのは諦めますか?」
「ちょっと待って!
ちょっと時間をくれる?」
スパっと決断できずにいつもウジウジ悩むのは私の悪い癖。
自分に自信が持てなくて、他人が信じられなくて、いつもまず否定から入って、悩んで、疑ってばかり。
なぜこんなに陰キャ属性なの?
生まれた時から王国皇女だし、何不自由なく育ったはずなのに?
低い硬い声で
「あーーっじれったいな!
オレがやってやるっ!
毒をかせっ!」
私たちの会話を盗み聞きしてたのかエリオットがベネディクトにドシドシと近づきガラスの小瓶を奪い取った。
そして小瓶の蓋を取って、腰ベルトのナイフホルダーからナイフを引き出し、ナイフの刃にポトリと一滴紫色の液体をたらした。
ナイフを傾け、液体を刃全体にまんべんなく行き渡らせると、そのままジッとして乾くのを待ってた。
焚火の向こう側に横になって背を向けて寝てるダレンに、エリオットが視線を向けると
「まずは一番怪しいあいつからだっ!!」
(その8へつづく)




