エピローグ 普通の男
それから。
年月が過ぎた。
久世蓮司は。
異能管理局の仕事には就かなかった。
昔の仲間たちとも。
少しずつ距離を置いた。
顔のない巨人。
黒き獣。
銀の騎士。
三体は変わらずそばにいた。
それでも。
蓮司は普通の仕事を選んだ。
普通に働いて。
普通に暮らして。
誰かの上に立つことも。
異能で何かを成すことも。
望まなかった。
やがて。
コンビニエンスストアの店長になった。
誰かが。
そんな蓮司を見て。
「お前らしくない」
と言ったことがある。
蓮司は笑わなかった。
自分らしいとは。
何なのだろう。
昔のように。
人の中心に立ち。
喧嘩をして。
力を振るうことなのか。
それとも。
今こうして。
レジの不足を確認し。
シフトを組み。
売上を見て。
明日の発注を考えることなのか。
蓮司には分からなかった。
ただ。
一つだけ。
分かっていた。
これは。
自分で選んだ生活だった。
だから。
大事にしたかった。
もう。
誰かに。
勝手に奪われたくなかった。
その頃の蓮司は。
まだ知らない。
かつて完全に断ち切ったと思った《支配》が。
再び。
静かに近づいてきていることを。
そして。
相馬悠真という人間が。
この世界から消えてなお。
彼が繋いだものが。
まだ。
未来のどこかに残っていることを。
蓮司は。
まだ。
知らなかった。
――第四部 完。
この度は第四部までお読みいただき、誠にありがとうございます!
少しでもお楽しみいただけていましたら幸いです。
第四部は無事完結しましたが、続けて10月1日に『幕間』を1話投稿いたします。
そちらをもちまして、第五部の掲載までしばらくお休みをいただきます。
今後のお知らせは活動報告にて行いますので、ご確認いただけましたら幸いです。
それでは、今後とも『僕らは一度、救われてしまった』をよろしくお願いいたします!




