第十二話 亀裂
そこから崩れるまでは早かった。
昨日まで一緒にいた人間が、突然来なくなる。
派閥同士の揉め事が増える。
蓮司へ向けられていた不満が、悠真へ向けられる。
「相馬ばっかり特別扱いじゃねぇか」
「久世は俺らのことなんか見てねぇ」
「結局、あいつら二人だけでいいんだろ」
聞けば。
どれも今まで誰かが、心の奥で一度くらい思っていたのかもしれないことだった。
だからこそ。
厄介だった。
「おかしい」
悠真が言った。
「何が」
「みんな急に変わりすぎだ」
「元々こんなもんだったんじゃねぇの」
「違う」
悠真は即答した。
「俺、あいつらと話してきたから分かる。不満がなかったとは言わない。でも、こんな……」
言葉を探す。
「自分の嫌なところだけ、急にでかくなったみたいな」
その言葉で。
蓮司の頭に、一人の男が浮かんだ。
「……榊原」
悠真も黙った。
夏。
一度潰した。
《支配》を使う男。
「でも、あいつの異能は――」
「完全に断ち切ったと思ってた」
蓮司が言った。
「思ってた?」
悠真の声が低くなる。
「確証は?」
答えられなかった。
榊原本人を、取り逃がしている。
「蓮司」
「分かってる」
「管理局に――」
「俺がやる」
「は?」
「今度こそ潰す」
「待てよ」
「一回勝ってる」
「だからって――」
「悠真」
蓮司は笑った。
「俺に《支配》は効かねぇ」
それは事実だった。
一度目。
榊原の力に抵抗した。
だから。
蓮司はまだ分かっていなかった。
蓮司を支配できないのなら。
“蓮司以外を支配すればいい。”




