第十一話 小さな違和感
年が明けた。
最初は、本当に小さなことだった。
「最近、あいつ来てなくね?」
冬休みが明けて間もない頃。
悠真が言った。
「誰」
「西尾」
「知らん」
「知ってるって。去年ずっといたじゃん」
「覚えてねぇ」
「お前ほんと人に興味ないな」
蓮司は気にしなかった。
人が来なくなることなど珍しくない。
高校三年の冬だ。
進路もある。
家庭の事情もある。
そもそも蓮司は、集まってきた人間を引き留めたことなど一度もなかった。
来たいなら来ればいい。
帰りたいなら帰ればいい。
それだけだった。
数日後。
「久世さん」
一人の男が声をかけてきた。
「何」
「最近、悠真さんに色々任せすぎじゃないっすか」
蓮司は男を見る。
「何が言いたい」
「いや、別に」
「じゃあ帰れ」
「……はい」
男は去っていった。
悠真が横から顔を出す。
「何だって?」
「知らん」
「聞いたんじゃないの?」
「聞いたけど興味ない」
「お前なぁ」
悠真は呆れていた。
その翌週。
仲間同士で殴り合いが起きた。
「何してんだよ!」
悠真が二人を引き離す。
「こいつが先に!」
「違います! こいつが――」
「順番に喋れ!」
以前なら、悠真が間に入ればそれで収まった。
今回は違った。
「悠真さんには関係ないでしょ」
空気が止まった。
「……何?」
「久世さんの腰巾着だからって、偉そうにしないでもらえます?」
悠真の表情から笑みが消える。
蓮司が立ち上がった。
「お前」
「蓮司」
悠真が止める。
「いい」
「よくねぇだろ」
「いいから」
悠真は男を見る。
「何か不満あるなら聞く」
「別に」
「じゃあ何で殴った」
「知らねぇよ」
男は吐き捨てるように言い、去っていった。
「……何だ、あいつ」
悠真が呟く。
蓮司も。
ようやく。
ほんの少しだけ。
違和感を覚えた。




