第六話 頭領ー久世蓮司ー
高校へ入学した頃の久世蓮司に、不良になるつもりはなかった。
ましてや、誰かの上に立つつもりなど欠片もない。
ただ、進学先が少しばかり悪かった。
「お前、一年?」
入学して一週間も経たない頃だった。
校舎裏で昼飯を食べていた蓮司へ、三人の上級生が声をかけてきた。
「そうだけど」
「最近調子乗ってるらしいじゃん」
「誰が」
「お前が」
「初めて聞いた」
蓮司としては、本当にそれだけだった。
何が気に入らなかったのか知らない。
目つきか。
態度か。
入学早々、先輩に敬語を使わなかったことか。
「一年が舐めた口利いてんじゃねぇぞ」
胸ぐらを掴まれた。
蓮司はその手を見る。
「離せよ」
「あ?」
「飯食ってんだよ」
次の瞬間。
上級生の身体が地面へ転がっていた。
蓮司は異能を使わなかった。
使うほどでもなかった。
翌日。
その男が先輩を連れてきた。
人数も増えていたが、それもまとめて返り討ちにした。
今度は、その先輩が別の学校の連中を呼んだ。
それも倒した。
来る者、絡む者を片っ端から相手にしているうちに、いつしか喧嘩を売りに来る人間より、「久世蓮司についていきたい」と言い出す人間の方が増えていた。
「お前さ」
ある日の放課後。
悠真が呆れた顔で言った。
「何?」
「高校入って半年で何したの?」
「何も」
「何もしてない奴の後ろに三十人も集まらないんだよ」
振り返る。
確かにいた。
「……知らねぇよ」
「知らねぇじゃない」
「勝手についてくる」
「犬猫じゃねぇんだから」
そのうち一人が言った。
「久世さん、今日どうします?」
「何が」
「隣の学校の奴らが――」
「知らねぇ。自分で何とかしろ」
「はい!」
男は嬉しそうに去っていった。
悠真は頭を抱える。
「何で今ので『はい!』になるんだよ……」
「俺に聞くな」
「お前、もうちょっと自覚持ったほうがいいぞ」
「何の」
「頭領」
「誰が」
「お前」
「やらねぇよ」
「もうなってるよ」
蓮司は認めなかった。
しかし、認めようが認めまいが、人は集まった。
次回以降、各話の分量と物語の区切りに合わせ、更新ペースを一部変更いたします。
明日は朝・昼・夜の3話更新、明後日は朝の1話のみ更新予定です。
いつもと少し変則的になりますが、引き続きお楽しみいただけましたら幸いです(*'▽'*)




