第三話 三人で歩く道
朝倉直人も、小学校から中学校までは二人と同じ学校に通っていた。
悠真ほど近いわけではない。
けれど、知らない仲でもなかった。
「直人、今日遊ぶ?」
放課後、悠真が聞く。
「え、僕?」
「他に誰がいるんだよ」
「いや……久世くんもいるし」
「いるけど?」
「……じゃあ行く」
「よし決まり」
「まだ何するか聞いてないんだけど」
「公園行ってから考える」
「一番困るやつじゃん……」
悠真が笑いながら直人の背中を押す。
少し前を蓮司が歩く。
結局、直人もついていった。
三人で帰る日があった。
公園へ寄った。
駄菓子を買った。
ゲームをした。
悠真がくだらないことを言い、蓮司が呆れ、直人が笑った。
いつも三人だったわけではない。
蓮司と悠真だけの日もある。
直人には直人の友人もいる。
それでも悠真は、直人を見つければ気軽に声をかけた。
そして悠真が呼ぶから、直人は蓮司とも話した。
直人は昔から怖がりだった。
誰かが喧嘩を始めれば真っ先に離れる。
怪談をすれば本気で嫌がる。
暗い道では妙に後ろを気にした。
「直人、怖がりすぎ!」
「だって今そこ、何かいたでしょ!」
言った直後。
直人は、はっとして口を閉じた。
悠真が振り返る。
「何かって?」
「……猫」
「いねぇぞ?」
「じゃあ気のせい」
「雑!」
悠真が笑う。
蓮司は何も言わなかった。
けれど、気づいていた。
直人は時々、巨人を見る。
正確には、見えてはいないのかもしれない。
巨人が動けばその方向へ目を向け、黒き獣が近づけば何もない場所を避ける。
悠真が異形へ話しかけているときも、その視線が向いている先を直人は決して見ようとしなかった。
感じている。
それなのに本人は、絶対に認めようとしなかった。
直人の遠い親戚には、異能管理局で働く人間がいるらしい。
そういう血筋なのかもしれない。
蓮司は追及しなかった。
見えていると認めれば、今まで見えないふりをしてきたものまで認めなければならなくなる。
直人がそれを嫌がっていることくらい、蓮司にも分かった。
「朝倉」
「な、何?」
「そこ」
「え?」
「踏むぞ」
「何を!?」
「……何でもねぇ」
「何!?」
黒き獣が直人の足元から退く。
悠真だけが腹を抱えて笑う。
「今なんかいたんでしょ!?」
「知らね」
「久世くん!」
「直人、見えてるって認めちゃえば楽なのに」
「何が!?」
「何でもなーい」
「二人とも嫌い!」
そう言いながら。
次の日、悠真に誘われれば。
直人はまたついてきた。
小学校の六年間。
中学校の三年間。
毎日一緒にいたわけではない。
喧嘩した日もある。
何週間も話さなかったことだってある。
それでも。
季節が何度も巡る間、三人は同じ街で育った。




