エピローグ 選んだ未来
――数ヶ月後。
「直人」
「ん?」
「話があります」
美月が妙に真面目な顔をしていた。
「……何?」
「怒らない?」
「なんで怒るの」
「いや……まあ……」
美月が、おそるおそる何かを差し出した。
それを見た直人は、しばらく動かなかった。
「…………」
「できたみたい」
「…………」
「直人?」
「…………」
「ちょっと?」
頬を、涙が伝った。
「え、なんで泣くの!?」
「……分かんない」
「また!?」
美月が吹き出した。
直人も泣きながら笑った。
一度目。
その命は、村を救うために求められた。
まだ生まれてもいない子どもへ、大人たちが村の未来を背負わせた。
そしてその命は、確かに村を救った。
二度目は違う。
予言のためでもない。
呪いを解くためでもない。
誰かに望まれ、強いられた未来でもない。
ただ二人が互いを愛し、この人とこれからも生きていきたいと願った。
その先に、小さな命が宿っていた。
同じ命なのか。
違う命なのか。
そんなことは、直人には分からない。
《運命》だけが知っているのかもしれない。
けれど。
「美月」
「何?」
直人は彼女の手を握った。
「……ありがとう」
「何それ」
未来を知る必要なんてなかった。
怖くないわけではない。
間違えない自信だってない。
それでも、一人で正しい未来を選ばなくてもいい。
隣にいる人と。
手を取り合える人たちと。
迷ったなら立ち止まって。
助けが必要なら、助けを求めて。
何度でも、一緒に選んでいけばいい。
窓の外には、何の変哲もない空が広がっていた。
直人はその空を見上げる。
そして今度は。
そこにあるものを、何も見なかったことにはしなかった。
――第三部 完。




