第七話 《解》
直人の中には、本人さえ気づかないまま使っていた異能があった。
国家異能管理局が仮に《解》と名付けたその力は、異能そのものを消し去るものではない。
複雑に絡み合った力を見抜き、その結びつきを解きほぐす力。
幼い頃から異能の気配に敏感だったこと。
精神へ干渉する異能に強い耐性を示すこと。
そして本人が意識しないまま、異常な現象の構造そのものを察していたこと。
すべてが、その性質の一端だった。
一方、銀の騎士が持つのは《支配を断ち切る》力。
絡みつき、離れなくなったものを断つ剣。
二つを重ねれば、できるかもしれない。
「空を覆っている異能を、一つの巨大なものではなく……元の一人一人に戻せると思います」
「戻したあと、どうする」
蓮司が問う。
「向き合います」
「何人いると思ってんだ」
「分かりません」
「何百か。下手すりゃ何千だぞ」
「それでも」
直人は美月を見る。
一周目では、美月が前へ進み、直人がそれを追った。
二周目の前半では、直人が前へ進むことばかり考え、美月を置いていった。
今度は違う。
「……どうしたい?」
直人が尋ねた。
美月は一瞬だけ驚いた。
それから、笑った。
「やるんでしょ?」
「うん」
「じゃあ、やる」
「大変だよ」
「知ってる」
「危険かもしれない」
「それも聞いた」
直人は小さく笑った。
美月も笑う。
「一人も残したくないんです」
直人が改めて言う。
蓮司はしばらく二人を見ていたが、やがて諦めたように頭を掻いた。
「……ったく」
その背後で、顔のない巨人が畑に転がっていた巨大な岩を軽々と持ち上げた。
黒き獣が、その周囲を駆け抜ける。
直人の足元では、小さな従者が土へ両手を置いていた。
蓮司が言った。
「やるぞ」
直人が顔を上げる。
「全員でな」




