第六話 予言
「そんなこと、わしは言っとらん」
村一番の占術師である老婆は、あっさりと言った。
直人は思わず聞き返した。
「でも、僕たちが子どもを作れば呪いが解けると」
「言うた」
「なら……」
「わしが見たのは、それだけじゃ」
老婆は皺の深い目を細めた。
「お前さんらが子を成せば、この度の呪いは解かれる。それは確かじゃ」
「それしか方法がないとは?」
「言っとらん」
直人は目を閉じた。
老婆が見た一つの未来を、村人たちは唯一の正解だと思った。
自分たちが救われる未来がそこにあるのなら、それを実現すればいい。
そうして直人と美月に、その未来を押しつけた。
そして二周目の自分も同じだった。
未来を知っているから。
自分だけが、何をすれば美月を守れるのか知っていると思った。
だから、美月の意思を置き去りにした。
未来を知ることと、その未来を選ぶ権利を持つことは、同じではない。
「それに」
老婆が続けた。
「予言というものは、理由まで教えてくれるとは限らん」
「理由?」
「なぜその子が生まれれば呪いが解けるのか。わしには見えんかった」
その答えを補ったのは、管理局の研究員だった。
直人の異能。
そして、直人のそばにいる小さな従者。
まだ確定ではない。
だが、もし二つの性質を強く受け継いだ子どもが生まれれば、その存在そのものが村を覆う異能の構造へ干渉する可能性がある。
一周目では。
生まれた子どもが、無意識のうちに呪いを解いたのかもしれない。
老婆の予言は間違っていなかった。
ただ。
「子どもにやらせなきゃいけないことを」
直人は呟いた。
「僕が、自分でできるかもしれない」
初めて、自分の力を知ろうとしたから。
初めて、自分自身から目を逸らすことをやめたから。
直人は老婆を見る。
「……別の未来を探します」
老婆が静かに笑った。
「そうするとええ」




