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第五話 呪いの正体



調査が始まった。


 国家異能管理局の職員たち。


 直人の親戚。


 蓮司とその従者たち。


 銀の騎士。


 そして直人と美月。


 何より、村人たち自身が加わった。


 それぞれが持っている情報を持ち寄り、何度も仮説を組み直した。




 やがて、空を覆うものの正体が少しずつ見えてきた。


 始まりは、遠い昔の飢饉だった。


 食べたい。


 死にたくない。


 せめて子どもだけでも。


 明日は何か実っていてほしい。


 この土地で生きたい。


 一つ一つなら、ただの人間の願いだった。


 けれど同じ土地で、同じ恐怖が何代にもわたって繰り返された。


 死者の思念は土地に残った。


 そこへ次の世代の恐怖が重なった。


 また次の世代が重なった。


 やがて一人一人の境界は失われ、巨大な一つの異能へと変質した。




 この村で生きたいという願いは、村から誰も逃がさない力へ。


 飢えたくないという願いは、土地から生命を奪ってでも人を生かそうとする力へ。


 村を守るために生まれたはずのものが、いつしか村そのものを蝕んでいた。


 そしてその異能は、この土地に属する者すべてを等しく内側へ取り込む。



 たとえ、元はよそ者だったとしても。



 直人は目を閉じた。


 一周目。


 美月も、最後には村の一員になっていた。


 だから。


「……そういうことだったのか」


 声が震えた。


 美月が隣から直人を見る。


 直人はそれ以上、何も言えなかった。


       ◇


 カボチャについても、一つの仮説が立てられた。


 この土地では、古くから飢饉のたびにカボチャが人々の命を繋いできた。


 他の作物が枯れた年にも、わずかに実った。


 一つの実を薄く伸ばし、家族で分け合った記録も残されていた。


 村人にとってカボチャは、ただの食料ではなかった。


 今日を生き延びるためのもの。


 明日まで命を繋ぐもの。


 何百年も積み重なった残留思念の中にも、その記憶は深く染みついていた。


 だから食べれば、一時的に呪いが弱まった。


 カボチャそのものが呪いを打ち消していたのではない。




「これを食べれば、今日は死なずに済む」




 その安心の記憶が、飢えと恐怖から生まれた異能をわずかな時間だけ鎮めていたのだ。


 直人はその説明を聞きながら、一周目の光景を思い出していた。


 最後に村中へ振る舞われたカボチャのスープ。


 美月だけに与えられなかった、一杯。



 拳を握る。



 けれど、今度は目を逸らさなかった。





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