第四話 向き合う
翌朝、直人は電話をかけた。
『もしもし』
「久世くん」
『……どうした』
「助けてほしい」
電話の向こうで、短い沈黙があった。
『お前がそれ言うの、珍しいな』
「うん」
『何がいる』
「僕のことを知りたい」
『……は?』
「僕に何が見えてるのか。僕に何ができるのか。今度は、ちゃんと知りたい」
それから直人は、国家異能管理局に勤める遠縁の親戚にも連絡した。
自分だけで何とかすることを、やめることにした。
美月にも、自分が見たものを話した。
一周目のことだけは、まだすべてを語ることができなかった。
それでも、自分が何かを恐れ、この村で起きることを知っているということ。
そして今度こそ、彼女の意思を無視したくないということは伝えた。
数日後、蓮司が村へやってきた。
直人の顔を見るなり、その後ろへ視線を移し、呆れたように眉を寄せる。
「……やっぱりお前、気づいてなかったのか」
「何に?」
「いるぞ。昔っから」
「何が?」
蓮司が直人の足元を指差した。
そこには、小さな何かがいた。
白く、丸みを帯びた姿。
直人の膝にも届かないほど小さな身体で、じっとこちらを見上げている。
直人にはまだ、その輪郭がぼんやりとしか見えなかった。
「……これが?」
「お前のだよ」
「僕の……?」
「従者。少なくとも俺が知ってる限りじゃ、昔からお前のそばにいた」
直人は言葉を失った。
自分は他人の異能を感じることができる。
銀の騎士も、蓮司の巨人も、黒い獣も。
見えないふりをしてきただけで、本当はずっと感じていた。
なのに。
自分のすぐそばにいたものだけを、知らなかった。
小さな従者は直人を見上げたあと、嬉しそうに土へ手を置いた。
しばらくすると、その場所から小さな芽が顔を出した。
美月が目を見開く。
直人も、その芽を見つめた。
そしてふと、思い出した。
何も育たなかったはずの土地で、たった一つ豊かに実ったもの。
「……トマト」
美月も気づいたようだった。
「もしかして、あれ……」
蓮司は小さな従者を見た。
「全部こいつのおかげってわけじゃねぇだろうけどな」
美月を見る。
「種を植えて、水やって、世話した奴がいなきゃ何も始まらねぇ」
それから再び小さな従者へ目を向けた。
「ただ、こいつが土地に少し力を貸してた可能性は高い」
小さな従者は、褒められたことが分かったのか、直人の足元で嬉しそうに揺れた。




