表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】GAME.信長を裏切った俺、明智光秀は天下を無視して東北を目指す。  作者: 山田 ソラ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

45/72

第四十四章 上野陥落と、尾張の喪失

 越後に本陣を構えてから、五日が過ぎた。


 越後の統治が少しずつ動き始めていた。

 年貢を軽くした。

 死者を弔った。

 市を再開した。

 越後の民は最初、警戒していた。


 謙信に長年守られてきた民だ。新しい支配者を信用するまでに、時間がかかる。


 それは分かっていた。

 急がない。着実に。

 《GAME》の〔マップ〕を確認した。


 謙信のマーカーが、越後の山中で微かに光っている。


 どこかに潜んでいる。

 捕まえることはできない。


 しかし、越後の各城は、明智の色に変わっている。


 実質的に、越後は俺の手中にある。

 次の手を考えた。

 越後の南、上野。

 かつて長野業正が治めていた土地だ。

 上野は今、上杉の影響下にある。


 謙信が越後を失っても、上野はまだ上杉の旗が立っている。


 ここを取れば、越後と関東が繋がる。

 防衛線が格段に厚くなる。

 

「上野を取る」と俺は言った。


 軍議で全員に告げた。


「上野の守備兵は」と家康が聞いた。


「半蔵、調べはついているか?」


 半蔵が答えた。「上野の守備兵、約一万と見ます。謙信公が越後に引いた後、一部の将が守りについています」


「一万か」と信玄が静かに言った。「問題ないな」


「信玄殿、忠勝、幸村に頼む」と俺は言った。「越後から南下して、上野を攻略してくれ」


 三人が頷いた。


 上野攻略戦は信玄、忠勝、幸村の三人が、二万の兵を率いて南下した。


 上野への道は、越後の山を越えていく。

 険しい地形だが、信玄は慣れていた。


「儂の得意な地形だ」と信玄が言った。


 上野の守備隊は、謙信の残した将が指揮していた。


 忠実な将だったが、謙信を失い、越後を失い、士気が下がっていた。


 信玄が地形を読んで補給路を断った。

 忠勝が中央を突いた。

 幸村が側面を崩した。


 三日間の戦いで、上野の主要城が次々と落ちた。


 しかし、攻略が完了する直前。

 半蔵から急報が来た。


「上野の守将、降伏交渉に応じています。

 

 しかし、同時に謙信公が上野を通過したという情報があります」


「通過した先は」と俺は聞いた。


「南の方角です。関東に向かっている可能性があります」

 

 上野攻略が完了した。


 しかし、謙信のマーカーが、《GAME》の〔マップ〕上で南に動いていた。


「謙信公、関東に向かっています」と半蔵が続けた。


「追うか」と忠勝が聞いた。


「今は追わない」俺は言った。「関東には佐竹義重がいる。謙信の動きを監視させる。今は次の動きの準備が先だ」


 俺は越後の本陣で《GAME》の〔マップ〕を見ていた。


 二十一ヶ国が、俺の色に染まっている。

 信長のマーカーを確認した。

 畿内で、じっとしている。


「まだ動いていない」と俺は息を吐いた。


 しかし、翌日の朝。

 半蔵が走ってきた。


「急報です」


「何だ」


「織田信長公が、尾張を強襲しました」


 俺は固まった。


「尾張を」


「信長公の本軍が、畿内から一気に東進しました。尾張に守備していた政宗の残存部隊に向かっています」


「政宗の兵力は」


「一万です。信長公の本軍は四万以上と見られます」


 俺は即座に政宗への伝令を飛ばした。


「政宗、すぐに尾張から退いてくれ。戦わなくていい。逃げてくれ」


 返事が来るまで、俺は地図を握りしめた。


 半蔵から続報が来た。


「政宗殿、退却を開始しました。一万の兵を率いて、東に向かっています」


「無事か」


「今のところ、政宗殿は無事です。しかし信長公の追撃が始まっています」


 一時間後。


「政宗殿、三河に入りました。追撃から逃れました」


 俺は息を吐いた。

 政宗が生きている。

 しかし、一万の兵が消耗した。

 その後に、決定的な報告が来た。


「尾張、信長公が制圧しました」


 《GAME》の〔マップ〕上で、尾張が信長の色に変わった。


 俺は何も言えなかった。

 尾張。


 あれほど苦労して取った尾張が、一日で奪い返された。〔第六天魔王〕の速度が、俺の想定を超えていた。


 利三が静かに入ってきた。


「十兵衛様」


「分かっている」と俺は言った。「尾張を取られた」


「政宗殿は無事です」


「それだけが救いだ」


 全員を集めた。

 広間に全員が揃った。


 政宗が三河から合流していた。疲れた顔だが、目は死んでいない。


「政宗、すまなかった」と俺は言った。

「一人で尾張を守らせた。無理があった」


「謝罪は要らない」政宗が静かに言った。「俺が守ると決めた。結果として守れなかった。それだけだ」


「尾張を取られた」と俺は全員に言った。「しかし、政宗は無事だ。終わっていない」


「信長公の次の動きは」と幸村が聞いた。


「東に来る」と俺は言った。「尾張を取り戻した信長様は、次に三河か遠江を狙う。そのまま東に向かってくる」


「どう対応しますか?」と家康が静かに聞いた。


 俺は地図を広げた。

 しばらく考えた。


「守りを固める」と俺は言った。「三方向に兵力を配置して、信長様を受け止める」


「三方向とは」


「三河、信濃、越後だ」俺は地図を指さした。「三河で東進を食い止める。信濃で北からの侵攻を防ぐ。越後で関東への波及を防ぐ」


「政宗を三河に置く」と俺は言った。「政宗、三河を頼む。信長様が東に来たとき、最初の防衛線になる」


 政宗が静かに頷いた。「任せろ。三河の地形は把握している」


「信濃は俺が本陣を置く」俺は続けた。「全体の指揮を信濃でとる。中央に位置するから、三河にも越後にも動ける」


「越後は」と家康が聞いた。


「家康に任せたい」


 家康が静かに俺を見た。「越後の守りを、私に」


「お前は統率と知略がある。越後の地形を活かした守りを作れる。謙信が関東から動いた場合にも対応できる」


「分かりました」家康が静かに頷いた。「越後は任せてください」


「残りの兵力をどう分けますか」と利三が聞いた。


 俺は計算した。

 《GAME》の〔データ〕で全兵力を確認した。


【明智軍 現在兵力 三万八千】


 上野攻略と越後防衛で消耗していた。


「三河に政宗と一万二千。信濃に俺と本陣兵一万五千。越後に家康と一万一千」


「薄い」と幸村が静かに言った。


「薄い」と俺も認めた。「しかし今は回復中だ。各地からの補充が続いている。二ヶ月で全体を五万まで戻す計画だ」


「二ヶ月、信長公が待ってくれるか」


「待たないかもしれない」俺は正直に言った。「だからこの配置で時間を稼ぐ。政宗が三河で食い止め、俺が信濃で全体を見て、家康が越後を固める。その間に兵力を回復させる」


 信玄が静かに言った。「俺はどこに」


「信濃に来てくれ」と俺は言った。「本陣で一緒に全体を指揮してほしい」


「分かった」信玄が頷いた。「信長の動きは、儂が一番よく読める。役に立てる」


 忠勝が静かに言った。「俺は」


「信濃に来てくれ。信玄殿と一緒に」


「分かった」忠勝が短く言った。「しかし政宗が三河で危なくなれば、俺が動く」


「その判断は任せる」と俺は言った。


 幸村が続いた。「俺も信濃か」


「そうだ。幸村にも信濃にいてほしい。三河、越後、どちらが危なくなっても動ける位置が信濃だ」


 軍議が終わった後、政宗が俺のところに来た。


「明智殿」


「何だ」


「三河は最前線だ。信長公が来れば、最初にぶつかる」政宗が静かに言った。


「分かっている。だから政宗に頼む」


「俺が信長公の侵攻を止められなかったら」


「止めなくていい」と俺は言った。「時間を稼いでくれれば十分だ。信長様を完全に止める必要はない。ただ、俺が対応する時間を作ってくれ」


 政宗が少し間を置いた。


「……分かった。やってみる」


「頼む、政宗」俺は政宗を見た。「お前は白装束で俺の前に来た。あのときから、ずっと一緒に来た」


「何が言いたい」


「ありがとう、ということだ」


 政宗が少し目を細めた。そして短く言った。「礼は戦が終わってから聞く」


 翌朝、各自が持ち場に向かった。


 政宗が三万の兵を率いて三河に向かった。


 家康が越後に戻った。


 信玄と忠勝と幸村が、俺と共に信濃に残った。


 信濃の城に本陣を構えた。

 《GAME》の〔マップ〕を開いた。

 三河に政宗のマーカーが光っている。

 越後に家康のマーカーが光っている。

 信濃に俺のマーカーが光っている。


 三つの防衛線が、信長の東進を受け止める体制が整った。


 しかし、尾張に織田信長のマーカーが輝いている。


 信長様は、また東を向いた。

 夜、信玄が俺のところに来た。


「信長が動くのは、いつだと思う」と信玄が聞いた。


「早くて二週間。遅くて一ヶ月」と俺は答えた。


「その間に何ができる」


「兵力の回復と、防衛線の強化だ。政宗が三河を固める時間が必要だ」


「謙信は」


「関東のどこかにいる。半蔵が監視している」俺は静かに言った。「謙信が信長と動きを合わせたら、挟み撃ちになる。それが最も怖い話だ」


「対応できるか」


「家康が越後にいる。昌幸が東北にいる。佐竹義重が常陸にいる。万全ではないが、対応する手はある」


 信玄が静かに言った。「明智殿、一つだけ言っていいか」


「何だ」


「尾張を取られたことを、悔やむな」


「悔やんでいる」と俺は正直に言った。


「悔やむ気持ちは分かる」信玄が続けた。


「しかし、尾張を取られても、俺たちは二十一ヶ国を持っている。信長は尾張一国を取り戻しただけだ。戦略的には、まだ俺たちが有利だ」


「そういう見方か」


「信長の戦い方を儂は体感した」信玄が静かに言った。「速い。決断が速い。しかしそれは一点集中の強さだ。広い領地を守りながら戦う強さとは、違う。明智殿は二十一ヶ国を守りながら戦っている。その分、強さが分散している。しかしそれは弱さではない。広さは、力だ」


 俺は信玄を見た。


「ありがとう、信玄殿」


「礼はいい」信玄が短く言った。「東北の雪で返せ」


 夜が更けていった。

 信濃の星空が広がっている。

 三河に政宗がいる。

 越後に家康がいる。

 東北に昌幸がいる。


 全員が、それぞれの持ち場で動いている。


 尾張を取られた。

 しかし、終わっていない。


 《GAME》の〔マップ〕の二十一ヶ国が、静かに光っていた。


 そして、信濃の夜空に東北の星が遠く輝いていた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ