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無計画なオレ達は!! ~碌な眼に会わないじゃんかよ異世界ィ~  作者: ノーサリゲ
最終章―縺薙l縺後が繝ャ驕斐□縺代?逡ー豁」隗」―
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14.

「ねぇ、ゲール……あの銀色の騎士強くない?」


「わっはっは……不味いですぞ。覇導砲の弾が跳ね返されますわい」


 白銀鎧の騎士、オルセプス。その存在と戦う帝国勢は正に死屍累々の戦を繰り広げていた。


 勝利の為なら死すら厭わない彼等は、死んだ仲間の死体を踏みつけてでも戦う。勿論、オルセプスの盾に写った者は自らのコピー体と戦うこととなるが、敵ならば自分であっても刺し違える覚悟で殺しに行き、仲間の姿をしていても躊躇なく殺しに行ける。


 総魔の領域を経て鍛え上げられた精神は、揺るがぬ強さを持って戦いが何たるかを証明し続けているのだった。また、鏡像のコピー体と自分達の仲間を見間違うことの無い彼らにとって、似た姿の敵が現れようと戦場に混乱など生じない。仲間が誰か、敵はどれか、そんなこと目で見ずとも肌の感覚で理解できる。


「おぉ……戦い甲斐のある者達だ……。素晴らしい、騎士の戦とはこうでなければ……。故に奴等を思い出すと――虫唾が走る!」


 本陣である皇帝ハインツの御許、護衛に囲まれている前方では、オルセプスが刃を輝かせて横凪の一線を繰り出していた。その攻撃により五人の帝国兵が胴体を切断されて死に至るが、彼は数としての戦力を失った事しか見ていない。尊びと弔いはこの場で最も必要ない、そんなの終わった後で幾らでもやれる。


「明らかに戦力が足りてないね……。圧倒的な個に、こっちは数で押し切れない。ダグラスとマクグリスだけはどうにか相手できてるけど……負けるのも時間の問題だろうね」


「おや、ハインツ様。意外と冷静じゃのぉ」


「――――死ぬほどね、焦ってる。見てよゲール、手汗びしょびしょだよ。

 でも冷静さは欠いちゃいけないからね、必死に保たせてるんだ――……どうしようかねぇ……」


「鎧は魔法を反射をしないようですぞ」


「なるほど……。じゃあ、うん。全軍に通達、死んでも、なんとしてでもあの盾の動き止めて。隙が出来たら盾に当てないように覇導砲一斉掃射で」


 強力な個には強力な力を。対抗できる切り札は、覇導砲の攻撃しかない。


 ハインツの冷酷な命令に軍人達は異議を唱えることなく忠実に従い、行動を開始させたのだった。


 * * *


「グルルゥ……フォルカトル、の、最上位形態ですか……」


 アステル勢が対峙するその先に、見たことのある強力な存在が完成されていた。


「久しい……とも言えぬな|座興はこれにてお仕舞いだ」


 武人。そう表現するに値する風格、黒き肉体とボロボロの衣服、佇まい。


 上位形態までならば、四大悪魔が一丸となれば相手に出来ていた。現在まで押さえ込めていた。しかし――ここからは、格が違う。


 先程までの上位形態を“強い雑兵”と評するならば、最上位形態のフォルカトルは大将。確固たる強さである一を持って、たった一体で目にする者達を竦ませる迫力があった。


 完全体のフォルカトルから放たれる気迫や闘気にも似た圧に、アステル勢は気圧されて唾すら意識しないと飲み込めない。


「拙者等は天使フォルカトル|完全なる拙者等は一人しか存在し得ない、故にこの完全なる拙者等は貴様等の相手となろう」


「……私的には一体だけでも存在して欲しくないよ」


 直刀を向けられた者達の中で、テモフォーバは蕩けた瞳を歪ませながらおぞましい山羊頭の口を開いた。


「あの者達……|イキョウとソーエンはいないのか」


「ハッ……! お前等が軽々しくその名前を口にしないで下さい!」


 角が生えているロトサラは、正に鬼の形相でフォルカトルを睨みつける。腹立たしかった、敵にあの二人の名前を呼ばれることが。腹立たしかった、全ての原因である神の手勢が気安く名を呼ぶことが。


再度またまたたききのいくさを興じ合いたかった……|だが居ないのならばそれまでだ。さっさと終わらせ第二の神(主)を降誕させるとしよう」


「……グルルゥ……! 前回のように行くとは思わないで下さいね」


「この戦いの為、わっち等四大悪魔はロロはんから……嘗ての主から、力を賜りんした。その力を今ここに――」


 四大悪魔、テモフォーバ、ロトサラ、サイコキーマ、シュエー。他の悪魔達と何が違うのか、何故死んではまた新しく生まれでるのか。


 それは、遥か昔に、摂理外の力に呑まれて輪廻転生の輪から外れてしまった者達だから。


 アステル陣営の皆を背に、四大悪魔達は呻き声と苦しむ唸りを滲ませながら――体中を黒いオーラが纏わりつく。


 その黒さを見ただけで、人間の心にはゾッとするほどの怖気が。見てはいけない、この世の物ではないモノを見て、恐れが心の内より滲み出る。混沌とはそういうモノだ、この世ならざる力である故に、この世の者達が見てしまえば恐れを覚える不和の力だった。


 だが――天使が見れば、また違う。


「その力、その姿……。思い出した……ぞ|そう、か……千年前、邪神の軍勢に貴様等の姿を見た」


 フォルカトルの中にある記憶、千年前の記憶に、写っている者達が居る。今よりももっとおぞましく、今よりももっと生物らしからなかった、残虐非道な異形の者達。


 遥か昔ほどではないが、それでも力を取り戻しつつある者達を前に、天使は刃を下げる。


「……踊らんな|心も、刃も」


 フォルカトルは混沌に相対する楽しさなど、微塵も感じない。何より元より、この戦い自体に楽しさなど感じておらず、せめてあの二人と何も考えることなく無心で刃を振るって居たかった。


 禍々しさを有した悪魔達は、憎悪を研ぎ澄ませて天使に対抗できる姿を顕現させる。そのおぞましくも壮大な姿は、ある意味で人々の希望に成りえた。恐ろしいが、これなら勝てる。アステルの者達は、そう思って四大悪魔に視線を向けていた。


「――哀れ|虚しい刃だ」


 混沌の力を有した者達とフォルカトルは、互いに破壊の力をぶつけ合う――。


 * * *


「ハァ――ハぁぁ――っ……はぁ……」


 電撃が弾けて混ざり、呼吸をするごとに収めるように収束を繰り返して消えて行く。


 王国最強の騎士。人類最強の騎士。キアルロッド。その眼下には、足元には――槍が刺さりヒビの入っている水晶と、胸を切り開かれた黒の巨体が在った。


 体から流れる血が水晶に落ちて下へ下へと流れて行く。血液交じりの荒い呼吸が何度も何度も収まることなく繰り返される。


「我が――」


「二度と、姿、を、現すな」


 天使、ユーステラテスとの戦いが始まって、キアルロッドが一言目に放った言葉が今の言葉だった。奴が何を言おうと何も返さず、ただ殺すことだけを考えてひたすらに槍を振るった。


 そして――これ以上何も言わせないという怒りを体現したかの如く、鋭い雷鳴を上げて槍の先から雷の爆破を起こし、水晶――ユーステラテスの核を砕き割る。


「ただの人間如きに――」


「うるさい」


 最後、ユーステラテスは絶望の言葉を吐いて何か言葉を残そうとした。だがそれも、キアルロッドが上げた雷鳴に掻き消され、誰の耳にも、ニーアの耳には絶対に、届かせることなく、かの天使は崩壊する。


 全身全霊を持って、力をありったけ振り絞って、キアルロッドは天使を倒した。単独で、たった一人で。それはありえるべき事象ではない。ありえていい事象でもない。古の勇者ですら成しえなかったことを、彼は成しえた。人知を超える、偉業を成した。


 だが、ここまで。これ以上は戦う余裕がないほどに消耗し、息も絶え絶えに肉体の限界を迎えていた。


 * * *


「アーサー……この刃、借りるぞ」


 ダッキュは、とある剣を片手に携えてギルガゴーレへと振りかぶる。


 それは、切っ先を失った剣。誰が折ったなどダッキュだからこそ知っている、忘れ去れた友人の遺物。


 ダッキュは十二祝福に周囲を防衛してもらいながら、ギルガゴーレと相対して、振りかざした剣へと力を溜める。


 元はただの剣であった、今は聖剣の一振り。その刀身に、自分が込められる全身全霊の力を注ぎ込んで、最大の一振りとする。


「――技の名、アーサーの渾身の一振りの名、書に書いてあった。小説だと、とってもカッコいい技名じゃったけど。ウチは知ってる、本当の名を。

 うぬは名前をつけるのが苦手じゃったそうで、なんとも笑ってしまう技名を付けたものぞ。

 ――――それでもウチは、叫んでやる、お主に届くように、大声で言ってやる!」


 ダッキュは息を吸い込み、肺に空気を溜めて喉に力を込める。それに呼応するように、掲げた剣へは光りが集い、刀身以上の刃を高々に空へと伸ばした。


「喰らうが良い、ギルガゴーレ! <輝け! ウチの! 正義剣!>」


 聖なる輝きは、あくまでダッキュが模しただけの力。アーサーと同様の力ではない。それでも、彼女が振るった刃は神域に浮かぶ銀河を切り裂いてギルガゴーレへと振るわれる。


 ――堅牢な岩の巨体を、一刀両断。胴体も、核さえも真っ二つにし、ギルガゴーレの体は二つに分かれながら無機質な大地へと倒れて行く。


「よし――よしっ! これで、カフスの元へ――!」


 轟音を上げて倒れるギルガゴーレを目にし、ダッキュの声は喜を含ませて視線を元凶へと向け――。


 * * *


「良いぞ! 良くやった! 覇導砲、一斉掃射!」


 帝国軍対、オルセプス。その戦いは、悲惨さを悲惨ともしない戦い様だった。


 ハインツが声を飛ばす先の光景は、帝国の騎士達がオルセプスの体に纏わり付いて動きを止めている姿だ。全力で喰らいつき、何があっても死に物狂いで身を奉げる姿。勿論、そこへ覇導砲が放たれれば、彼等諸共塵に還ってしまうことだろう。


 そんなこと、当の本人達が一番理解してる。


 だからこそ――――彼等は必死にしがみ付きながらも、敬礼を皆へと返して、言葉の無い勝利への祈りを全軍に伝えた。


「はっ――ははははは! まっこと気持ち良き望みを持つ者達だ! 今の卿等を鏡に映そうと、それがしを襲う鏡像が生まれよう! そうだ、それで良いのだ! 某等天使の試練を超える者達は、卿のような者達であるべきなのだ! ――――だが、悲しいかな」


 四方八方から迫り来る覇導砲の迫撃に、オルセプスは余裕の姿勢を見せている。これしきの攻撃、鎧が壊れようが意味を成さないのだから。


「こほ……ダグラス」


「あぁ、分かってる。一瞬だ」


 オルセプスの核は、魔力を反射する性質を有している。その情報は、マクグリスが妹であるピウから伝え聞いていた。だが、その情報を他には、ダグラス以外には、共有していない。


 しかし、ダグラスにだけは共有している。何だかんだと言いながら、マクグリスはダグラスを最も信頼しているからこそ、想定していた手立ては彼にしか伝えていなかった。


 マクグリスとダグラスは同時に駆け出し、重い足音を立てて覇導砲の迫撃と共にオルセプスへと接近する。狙うは、鎧が壊れて核を触れられるようになった一瞬。その一瞬だけが、オルセプスとの戦いを左右する。


 眩い光弾が白銀の鎧をへこませ、砕き、破壊し、帝国騎士共々壊れ行く最中さなか――に――。マクグリスは刹那の隙間を縫って鎧へと手を差し込み、核へ触れた。


「マーキングが済んだ!」


「ッシャァ!」


 その言葉を待っていたダグラスは、すぐさま複数の光弾をその身に受ける――。


「ダグラス!? 何をしている!」


「ガハハハハ! 秘策って奴ですわ!」


 ハインツの焦りが見える声に、ダグラスは額に青筋を立て、口から血を吐き出しながら、何発も何発も弾丸を受けては、渾身の意志で死なずに腹へと光弾を溜めた。


「マクグリスゥ!」


「ああ」


 短い合図、言葉。それに応じてマクグリスは指を鳴らす。


 魔法を反射する核があったとして、その内側に魔法を入れ込ませた場合――どうなってしまうのだろうか。その可能性と実戦は、今、二人の手によって実行された。


 マクグリスのスキルによる位置の入れ替えで、ダグラスとオルセプスの核が入れ替わる。その入れ替えには一瞬の間隙があるからこそ、入れ替わった瞬間にダグラスが抱えていた光弾の全てはオルセプスの核の内側へと入り込み、内部で激しい乱反射を始めた。


「はッ……はぁ……どうだってんだコンチクショウ!」


 位置が入れ替わったダグラスは、マクグリスの側で膝を付きながら、結果を見届けようと顔を上げて視線を通す。


 小さな核の中で無限に乱反射する光弾は、眩い光りを上げて周囲の瞼を閉じさせる。


「――――ふぅ……賞賛を込めて、一時の勝利を卿等に届けてやるとしよう。あのゴミ共と戦うよりも、有意義な審判であったぞ」


 鋭い輝きと、鋭い音。その中で声がした気がした。


 その声が最後であるかのように、核は潔く爆散して――オルセプスの全ては塵になって消えて行く。


 歓喜の声が、帝国軍の中で沸いた。


 * * *


 神の大地には傷が、抉れが、混沌の淀む黒が走り、その中心でフォルカトルはボロボロになりながら、ただ佇んでいる。


「……同情をしよう|無為な戦いに挑むそなた達へ」


 崩壊の力を有し、混沌の狂気に晒されている四大悪魔へ、フォルカトルは気力を見せずに散っていく。やる気が無い、本気で戦う意味が無い、そう言いたげなひし形の頭部は、アステルの民達に向けられ……最後は天を仰いで、散っていった。

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