11.
「あ、れは――ルナトリック、話が違う! なんで、なんで皆が……!」
「くはは、我輩は死ぬ、チクマも死ぬ、貴様も死ぬ。犠牲は――三人だ。依然代わり無いのである」
「でも――」
ルナトリックの書庫による苛烈な攻撃で、カフスの声は掻き消される。
属性が止めどなくうねる中、神は眼と言うものを持っておらず、ただこの空間における知覚だけで現れた者達を認識していた。
『ほぅ……まだ抗いを見せる者達が居るのか……。愛おしい、何故こんなにも愛おしいのだ……。愛おしいならば相応の手向けをしてやらねばないではないか。――さぁ』
神は翼を広げて周囲に蔓延る魔法や余波、煙全てを吹き飛ばし、暗闇の天に巨大なサークルを幾つも生み出す。
『集え天使達。しかと滅ぼし魂を集めよ』
荘厳に放った、声とは言えない言葉の意志は、この場に居る全ての者達の脳内へ伝播する。
その言葉を聞いた者達は、天のサークルから産み落とされるように出でる者達の姿を眼にすることとなった。
戦狂のガランドウル。暴食のマリルフォール。罪反のユーステラテス。崩滅のギルガゴーレ。銀鏡のオルセプス。双星のフォルカトル。
六体の天使が空から振り落ち、人々の前に姿を現した。
「どうして天使が――倒したはず……」
『出来損ないの愛しいドラゴンよ、倒したからと言ってまた生み出せぬ訳ではない。■は神だ、全ての世界を創造した主だ。出来ぬ事など有りはしない』
「――一体足りないな」
『本物の出来損ないなど要らぬ。愛しい人間如き、あ奴等で十分だ』
その言葉に、ルナトリックは仮面の下で笑みを浮かべる。
完全無欠の創造主が直接携わった天使に、出来損ないを生じさせたある者の姿を思い浮かべて。
「やはり命を賭ける価値がある。全知全能を嘲り可能を不可能とする者達の為ならば、我輩の命など全てくれてやるわ!」
「――ルナトリ……そうだね。僕も、この命であの二人を救えるなら――死んでも戦えるよ」
『ふっふっふっふっふ!!!! 楽しい、あぁ、楽しいな愛おしき者達よ!! 生命の抗いをこの■に見せ付けるが良い!!』
戦いの第二ステージは、天使達の降臨を持って開始される――
* * *
「ユーステラテス――ッ!!」
キアルロッドは、険しい顔をしながら懐かしくも忘れる事のできない憎しみの敵に眼光を向ける。
降臨した見たことの無い天使共に驚いているのはただの群集であり、一度でも見たことのある者達は、その姿と強さを思い出して戦いの記憶を呼び覚ましていた。
「はっはー……これは流石に聞いてないぜ。天使を相手にするだなんてよ……」
「――キアルよ。我々はユーステラテスを――キアル!」
ザレイトの静止も聞かずに、キアルロッドは全身に電撃を纏って特攻を開始した。人類の一番槍は、人類最強のキアルロッドが動き出したことによって皆の闘争心に火がついて各陣営が動き出す。
眼前には、ガンと構える巨大な黒騎士が、獲物を探して揺れ動く巨大なスライムが、遥か巨大なゴーレムが、凛々しく構える白銀の騎士が、君臨するようにこの場に威圧を振りまいている狂戦士が――だが、雷光となりて駆けるキアルロッドの眼には、上空に君臨する手の集合体のバケモノしか眼に入っていなかった。
「ユーステラテスゥゥゥウウウウ!!」
飛び上がり、激しい雷撃音と共にぶつかり合ったキアルロッドは、巨大なふくろうのような仮面の顔面を前に怒りの表情を浮かべる。
「ほぉ、見た顔だ。たしか、王国の――騎士だったな」
「ニーアの両親は死んだのに、何故お前は平然と蘇っているんだ!! ふざけるなよ!! またニーアを泣かせる気かァ!!」
流れ続ける強烈な電撃は、ユーステラテスの体へと流れ続けて焼いていく。
焼ける匂いが充満し、確かに傷を作って表面を焼く。再生は起こらない。確実にユーステラテスにダメージを与えている。
「ユーステラテス。手助けは必要か」
「我を愚弄するか、オルセプス。このムシケラは我が遊んでやろう、貴様等はあちらのムシケラを滅すると良い」
「了解した。
ついでに魂の吸収もしてしまおう。ガランドウル、フォルカトル、行くぞ」
「……ああ」
「また、人々の絆を見せてもらおう|ころそーぜころそーぜ!! やってやろうぜ!!」
白銀の騎士と漆黒の騎士、そして狂戦士は、向かってくる人間共を滅するために衝撃を上げて飛び出していく。
巨大なスライムは無秩序に動き出し、遥か巨大なゴーレムは電子音にも似た音を立てながら周囲にレギオンを生成し始めた。
人々対天使の総力戦は、数で勝るか個で勝るのか。勝利がどちらに転がるかなど、誰も考えずにただ必死に敵を倒すための戦火が上がり始めたのだった。




