55.仲間!! 仲間!!
朝の町を歩き、辿り着いたその先。
宿屋の裏庭に到着したオレを向かえたのは……。
コロロwith家の子達だった。オレや皆が、この宿に泊まれるよう事前に手配しておいたから、この場に居ることに矛盾は無いけど……。
シアスタは何でか腕組んでこっちを睨んでる。双子もそれマネしてんじゃん……。
ソーキスは……コロロに乗ってだらっとしてるから何時も通りだな。ロロはそのソーキスの上に乗ってる。
「……逃げようかな」
「もう無理だろ。諦めろ」
「他人事みたいに言ってるけど、お前も睨まれてるからな?」
シアスタと双子が睨んでるのはオレとソーエン。ナトリはというと、絶好のタイミングで登場するって言ってどっかいきやがった。
アイツ何する気だろう。
「とりあえず……謝るかぁ」
「ああ。それしかないな」
最終手段の謝罪は何時如何なるときでも発動可能な最強呪文。まさか初手から最終手段を使うことになるとはな。
オレ達はズンズン進んで行き、子供たちの前で立ち止まる。
そして。
「誠にごめんなさい」
「すまん」
二人して頭を下げる。
オレ達二人は家の子達には弱いんだ。
「なぜあれほどの力を持っているのにもかかわず、これほどまでに低姿勢なのでありましょうね」
「おにいさん達も普段はふつーの人達だからねー」
「むしろ小者のような奴等だ」
「なるほどであります。どれほどの力を持っていても力に溺れることなかれということでありますね。また一つ高みへの教訓を得られたのであります」
シアスタ達の後ろでは変な会話が繰り広げられてるけど……シアスタと双子は一言も話さない。
も一回ダメ押ししとくか。
「正真正銘すんま――」
「何について謝ってるんですか」
オレの謝罪をシアスタが遮ってくる。その声はもうお怒りだ。
これと同じ徹を前にも踏んだ気がするぞ。具体的には受付さんの一件のときだ。
この問いは、正しい答えを答えなければならない難問だ。言い訳なんて通用しない最強の質問。しかもシアスタから質問されたから黙る選択肢は取れない。ここは言葉を発して正解を引かなければならないんだ。
「……昨日帰らなかったこと」
「かえらなかった」「それだけ?」
「無断で帰らなかったことをここに謝罪する」
「ソーエンさんはそれで良いです。一抜けです」
「先に失礼する」
そう言ってソーエンはシアスタ達側に回った。
だからってお前も仁王立ちする必要は無いぞ?
「……オレは?」
「イキョウさんは言いましたよね? ちょっと用事がある、ちょっと借りるだけって。一晩がちょっとなんですか?」
「いやー……一晩は大分っす。ちょっとの範疇超えてるっす」
シアスタは賢いから痛いところを付いてくるなぁ。
「なのに一言もちゃんとした謝罪が無いんですけど?」
「ごめんなさいって」「きいてない」
双子もシアスタと同じようにオレを責めてくるなぁ。
これってオレが悪いんか?
「……ごめんなさい」
「なんで不服そうに言うんですか!!」
「だってなんで大の大人が幼女共に無断外泊を責められなきゃいけないんだよ!!」
「おにーさんいってた」「あとでまりょくくれるって」
「大人だからって、約束を破ったことに変わりはないですよ」
「なんてこったい。全部自分の言ったことが帰ってきてる」
「それに私はよ・う・じょじゃありません!!」
「わたしたちも」「りっぱなおんな」「せくしー?」「あだると?」
「それは流石に無理があると思うぞ?」
全員ちっちゃいもん。どう見ても子供じゃん。
「むっかー!!なんでそんなに私達を子ども扱いするんですか!! 私達は子供じゃありません!! 立派な冒険者です!!」
「子供じゃないかはともかく、んなこと一々言わなくても分かってるよ。だってオレ達仲間だろ?」
お前等がそんだけ立派に冒険者やってるかなんて言われなくてもわかってるよ。
ただ……オレの言葉を受けたシアスタは、怒っていたはずなのに、どうしてか急にキョトンとしながらオレを見て来た。
「……今なんて言いました?」
そしてシアスタは、伺うようにオレへ尋ねて来る。
「子供じゃないかはともかく、んなこと一々言わなくても分かってるよ。だってオレ達仲間だろ?」
「最後のほうをもう一度」
「ろ?」
「もっと前から!!」
「オレ達仲間だろ?」
どうしたんだシアスタは。何が目的だ?
オレの前では、謎の目的を持ってるシアスタがわなわな震えてる。一体なんだってんだ……。
「おにーさん」「わたしたちも」「なかま?」
「え? 当たり前じゃん」
「そーえん」「わたしたち」「なかま?」
「当たり前だ。何が言いたい。双子もシアスタも立派な仲間だろう」
「…………やったー!!やりました!! やりましたよコロロさん!!」
「やった」「やった」「わたしたち」「なかま」
えぇ……。急に、シアスタと双子が小躍りし始めたんだけど……。
しかもその姿を見て、コロロが喜んでる……。
「何この状況」
「全く分からん」
オレとソーエンは何がなんだか。
状況理解が出来てないオレ達の下に、ソーキスがトテトテと歩いてきて、オレによじ登る。そしてロロはソーエンの肩にへばりついた。
「状況説明お願いしても?」
「我は知らん」
「黙秘権を行使するー」
「嘘だろ? この流れ的にお前等が説明する感じじゃないのかよ」
「それよりもカレーを作れ。我との契りも反故にしただろう」
「割とマジでそれはごめん。後でたらふく食わせてやるからな」
「ならば良い」
「よっしゃ。思ったより丸く治まりそうだなぁ」
「ロロ。ラリルレの事は気にならないのか」
一安心しているオレの横では、ソーエンがロロへと尋ねていた。
「貴様等はのこのこ現れた」
そしてソーエンの疑問に対してロロは短く答える。
……返事それだけ?
良いよ、分かってるよ。オレ達がラリルレを放っておく訳が無いから、連れて来なかったってことは心配する必要は無いって事だろ?
なんだかんだ信用はされてんなぁ。
「イキョウさん、ソーエンさん、もう一度言って下さい!!」
えぇ…シアスタと双子が期待する目でこっちを見てくる。
「「仲間」」
「「「なかま、なかま!!」」」
なんか良く分からんが、メッチャ嬉しそう。
……ここまで喜ぶって、これって結構な便利ワードなんじゃないか? 今度困ったらこれ使うか。
なんでここまで喜ぶかわからんけど。
「ところでおにーさん達は昨日何してたのー?」
そんな情景を他所に、ソーキスはオレ達に問いかけてくる。
「我輩が説明しよう」
そして――ナトリは、オレとソーエンの背後にいつの間にか立っていた。急に現れるなよ……しかも、態々移動系の闇魔法使ったなコイツ。
「ぬるっと入ってくるじゃん。タイミングはどうした」
「やはり阿呆共といるとペースが崩される。予定では言い争いを断ち切るように登場する予定であったが、よもやこのような状況になるとはな」
「貴様、何者だ」
急に現れたナトリを、ロロはその瞳をギョロリと向けて言い放った。
その問いに対して、ナトリは待ってましたと言わんばかりに尊大に腕を広げて答えようと――。
「ほう? 我輩に問うか。ならば答えて――」
するけど。
「イキョウさん、ソーエンさん、もう一回……誰ですか!?」
「「!?」」
はしゃいでたシアスタと双子は、ナトリ見るなり怖がって急にオレに引っ付いてきた。
「ほら、やっぱりお前のこと見て怖がった」
「やはりペースが崩されるな。ふははははははは!!」
「ヒィッ!! イキョウさん……この方は?」
シアスタはビビりながらもオレに尋ねてくる。
泣いてんじゃん…ビビッたせいだからだろうけど…。特に意味の無い涙だから大丈夫だけど……。やっぱ一瞬怯むわ。
「お前その笑い方一旦とめて。シアスタ達ビビってっから」
「ほう? ……なるほどな」
何がなるほどなんだ?
でも、ナトリは笑うのを止めて綺麗な姿勢で立つ。その姿は傲慢と言うよりは威厳溢れるような立ち姿であり、シアスタ達を怖がらせるといった意図は無いことを示していた。
「我輩の名はルナトリック。イキョウやソーエン、ラリルレの古くからの仲間である」
「ルナ…トリックさん?」
「怖がるな。根は良い奴だ」
「ソーエンさんがそこまで言うなんて……えっと、シアスタです。よろしくおねがいします」
ソーエンって仲間以外には本当に厳しい、だからこそソーエンがこういった事を言うってのは他の何よりの証拠になる。
だからシアスタもソーエンの言うことを信じたんだろう。……ソーエンのことをそこまで理解してるってのは、やっぱ嬉しくなるな。
「こわくない?」「やさしい?」
「馬鹿の言葉を持って我輩の言葉としよう」
「そう」「わかった」「わたしはリリム」「わたしはリリス」「よろしく」「ルナおじちゃん」
「阿呆共には勿体無いほどのしっかりした子達であるな」
「自慢の仲間だよ」
「俺達が異……転移事故で飛ばされた後に出来た大切な仲間だ」
「「「なかま!!なかま!!」」」
えぇ……。なんかまた始まったんだけど……。
「なるほどねー、本当に仮面だー」
シアスタ達を他所に、ソーキスはへらへら笑いながら言う。こいつは前にルナトリックについての知識を『仮面』と覚えていたから、今はそれを頭の中で照合できたんだろうな。
「貴様が阿呆共の魂を吸ったソーキスか。ならば多くを語る必要は無いであるか?」
「知識はあっても記憶は無いのー、できれば口で話してー」
「よかろう」
「こやつはラリルレが認めているのか?」
「認めってからロロも認めろー」
「ならば良い」
「ほう、貴様が邪神か」
「我を貴様呼ばわりだと?」
ロロがヌルリとナトリに目を向ける。
おっと?思わぬところで一触即発の雰囲気が漂い始めたぞ?
「……貴様闇魔法の使い手か」
「よもや、我輩を一目見て理解したのであるか」
「何故そのようなものがラリルレと共に居る。……害するなら殺すぞ」
ロロがかつて無いほど凄んでいる。声の深みが凄い。
光魔法と闇魔法は感情のエネルギーを使う。普通に見ればナトリは邪悪な感情を持っているって思うだろう。
でもね、そんなことないの。こいつ見た目や言動はアレだけど正直で良い奴なの。
ただ…ゲームの話をどうやって説明したものか……。
「邪神よ、これを見るのである」
そう言ってナトリは指に小さな<ダークスフィア>を作り出す。
「……純粋な闇魔法か。ならば先の発言は撤回する」
「いや何がよ。あっさり過ぎてびっくりだわ」
「こやつの闇魔法は純粋な魔力だ。このような力は珍しいが、貴様等の仲間ならこういうこともあるだろう」
「本音は?」
「ラリルレが受け入れているのならばそれで良い」
「分かりやすい説明ありがとう」
こいつ本当にラリルレ以外のことに興味ないな。
ラリルレが認めたならって言ってたけど、一旦疑ってから発言を撤回したって事は、ナトリの魔法を見てから判断したんだろう。どこまでもラリルレのことを心配してくれる奴だ。お前が居ればラリルレは大丈夫だろうよ。
そんなことを考えている中、ソーエンがロロをナトリの肩に無言で乗せていた。
「何してんの?」
「いやなに。この方がしっくりくると思ってな」
「ふむ……悪くは無いな。貴様、我の配下に加えてやってもよいぞ」
「邪神の配下というのも悪くは無いのであるが、我輩は阿呆共の仲間である。その立場を変える事は絶対に無い」
「仮面に邪神って……悪役が更に悪役感増したんだけど……」
「やはり思ったとおりだ。しっくり来る」
ソーエンは腕を組んで満足そうに二人…一人と一匹を見てる。
邪神と闇魔法使いとか、これ一つでドラマ作れるくらいにはキャラが濃いよ。
「どうでも良いけどさっきみたいな空気は止めろよ? 皆怖がるから、ラリルレ怒るから」
一触即発の空気はシアスタと双子には刺激が強すぎる。
幸い、今は盛り上がっててそのことに気付いてなかったから良かったけど、今後またそう言うことがあったら多分泣いちゃう。ロロが怖がらせたときみたいになっちゃう。
「それは困るのであるな。ロロとやら、気分を害したならば謝罪しよう。我輩は平和主義者なのでな、邪神と矛を交える気は無いのである」
「我もラリルレに怒られたくは無い」
コイツ等本当に大丈夫か? ラリルレっていう楔が無いと平気で殺し合いしそうな空気だったぞ?
「お前の負担がまた増えたな」
「ふざけんなよソーエン。お前全部オレに押し付ける気か?」
「それがリーダーの役割だろう」
「やっぱ止めてやるよこんな名ばかりリーダー!!苦労はあっても報われることなんてありゃしねぇ!!次のリーダーお前だかんな!!お前に全部押し付けてやるよ!!」
「なら俺がリーダーになった暁にはお前に全てを押し付ける命令を出す」
「じゃあ今この場でオレがその命令出してやるよ!!」
「断る」
「はったおすぞてめぇ!!」




