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27.山中

 時間が経つにつれ、課題がなぜスライムとミララの草なのかわかってきた。どちらも群れになったり、群生したりせずに、孤立して山の中に生息している。だから、群れをまとめてやっつけて任務達成、とするのが難しくなっているのだ。これは確かに、油断していると日が暮れてしまいそうである。

 ――そんなことを考えている俺の前に、一匹のスライムが現れた。ぷにぷにとした薄紫色のスライムが、岩の陰から這い出てのそのそと移動している。俺はそいつにゆっくりと近づいた。

 この魔物は放置すると作物を食い荒らしたりするから駆除対象だが、人間に悪さをすることはまずない、というか悪さをできるほどの力がない。ねちょっとした体は気持ち悪いが、くっつく力はさほど強くなく引きはがすことができるし、防御力も決して高くない。魔法を使わなくても倒せる相手だが、せっかく魔導学院の実習なのだ、俺は慎重に近寄ると、親指大の火球を出現させた。そのまま一気にスライムの体の中に叩き込む。

 ぷるり、と苦悶を訴えるかのように、スライムは震える。俺の叩き込んだ炎はスライムの体に消されることなく、体内の核を攻撃していた。ぷるぷる、という動きは、やがて徐々に弱くなり――そしてスライムは、完全に息絶えた。

 体の中から水分が溶けだしていく。そして、後に残ったのは一つの小さな石だった。正確にはスライムの核と呼ばれる部位である。これを持っていくことで、スライムの討伐数を証明することができるのだ。これで二匹。ミララの草の方も徐々に集まってきており、なんとか日暮れまでには間に合うか、という様子である。

 俺は一休みするために、その場に腰を下ろした。腰に掛けていた水筒を持ち上げ、口を潤す。ぬるい水が喉を伝った。お姉ちゃんとは違い、俺は水魔法もほんの少ししか使えないので水筒は必須品である。サバイバル技術としてはスライムの水分を摂取する方法があるらしいが、さすがにそれは遠慮したかった。

水筒の水はまだたっぷり残っている。異世界のサバイバル術に頼るのは別の機会にしよう。俺は水筒の蓋を閉めると、ゆっくりと立ち上がった。


「あぁ、ルビルートじゃん、そっちはどうだいっ?」


 その瞬間後ろから声をかけられて、俺は思わず尻餅をつきそうになる。振り返ると、シナライアが立っていた。俺は黙ってスライムの核とミララの草の籠を見せる。


「まずまずだねっ!」

「そういうそっちはどうなのさ」


 俺が問いかけると、シナライアは自分の手持ちを見せる。そこには核が四つあり、ミララの草もいっぱいまで入っていた。


「――感じ悪いよ。自分がほぼ終わったからちょっかいかけに来たの?」

「いやいや、お姉ちゃんと一緒じゃないルビルートがどうなるか、ちょっと気になって見に来ただけだよっ!」


 そう言ってシナライアはにやりと笑う。確かにお姉ちゃんのいない俺はただの七歳児に見えるので、そう思われて仕方がないかもしれないかと思ったが、体感年齢としては三十間近なわけで、こんな小さな子に心配されるというのは、ちょっとだけ気分が複雑になった。


「大丈夫だって。別にお姉ちゃんの助けなくても、人並みに魔法が使えるのは知ってるよね?」

「そうだけど、絶対の保護者がいないと不安じゃないかなーってね」

「そんなにヤワじゃないよ。むしろ取り巻きが減った貴族サマの方が厳しいんじゃない――」


 その言葉を言い終わる前に、ほかならぬその貴族サマの悲鳴が聞こえてきた。


「うわぁー!!!!!!!助けてくれええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

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