26.校外実習
校外実習は例の山で行われる。お姉ちゃんが入学試問のときにぶっ飛ばしてしまったあの山だ。俺たち一年生クラスの面々は、皆従者も連れず隊列を組んで向かっていた。取り巻きの人数を半分に減らしたモン=デ=モンデ――例の貴族グループの中心少年で、なぜか黒いマスクをいつもしている奴である――などは、それだけで不安そうな顔をしているように見える。マスクに隠れているせいではっきりとはわからないが。ちなみに噂によると、あのマスクの理由は『平民などと同じ空気を吸うのも嫌だ』などということらしい。
「ようし、休憩じゃ!」
山の麓で生徒に指示を出すのは、なんとジョイヤーロ先生。ちなみに入学してから初めてジョイヤーロ先生の授業を受けることになる。いつもと先生が違うことも、生徒たちをどこか浮足立たせていた。
「先ほども自己紹介したが、わしの名前はジョイヤーロじゃ。とはいえ大概の生徒は入学試問で顔を合わせたがのぉ」
そんなことを言うジョイヤーロ先生を、シナライアはキラキラした目で見つめていた。
「すごい、すごいよっ!いつもは上級生クラスの授業しか受け持たないジョイヤーロ先生が、授業をしてくれるなんて……」
「そんなに有名なの?ジョイヤーロ先生って」
「何言ってるの!ジョイヤーロ先生と言えば伝説クラスの魔導士じゃない!物語や詩にもたくさん詠われてるよっ!」
なんと……そうだったのか。田舎暮らしだったし、お姉ちゃんはもっぱら魔導書を読み込んでいたので寡聞にして知らなかった。もしかしたらお姉ちゃんが読んでいた本の中に著書も入っていたのかもしれないが。
それほどまでの先生をあそこまで驚かせたお姉ちゃんは、本当に化け物である。
「ほれほれ、しゃべるでない。校外実習は実践を想定した授業じゃ。普段とは危険の度合いが異なっておる。心してかからぬ者はこの場で落第にするぞ」
あくまでも穏やかな物言いだったが、その眼光の鋭さは決してそれがはったりでないことを物語っていた。俺たちを含め、生徒たちは背筋を伸ばす。
「よろしい。では改めて説明するが、魔導士は冒険者パーティの一員となれば、様々な任務をこなすことになる。迷宮を探索して秘宝を見つけるような派手なものもあるが、それらは少数じゃ。また特に危険を伴うような任務でもあるため、一年生の授業で扱うようなものではない。諸君に伝えるべきはもっとしばしば請け負うことになる任務であり、一見つまらないように見えるものの、冒険者として大切な任務のこなし方じゃ。あくまでも物語に語られるような冒険は例外。わしとて、人生の大部分は地味な仕事をして過ごしてきた。一部が誇大に語られてしまっているがのう」
そう言って、ほっほっとジョイヤーロ先生は笑う。
「そこで、本日の授業は薬草採取と、小モンスターの駆除じゃ。想定として、ミララの草をかごに一杯、またスライム5匹の駆除を命じられたとして、任務に当たってもらう。これは一般の冒険者パーティが一日でこなす任務の十分の一以下じゃ。とはいえ諸君はこれを個人でこなさねばならんから、決して楽な仕事ではない。油断すると夜になっても帰れないから覚悟するのじゃぞ――では、始め!危険な魔物のいない演習用の山だといって、油断をしてはならんぞ!!」
ジョイヤーロ先生の先生の合図とともに、生徒たちは山の中に分け入っていく。俺も彼らに続いて、山の中に足を踏み入れた。




