24.実力
アレイという生徒が実践の授業で使った魔法は、俺の感覚に反してとてもしょぼいものだった。しかもどうやら、それは別に彼一人が劣っているとかではなく、みんなその程度のものらしい。アレイの後も、ほかの生徒が次々と魔法を出していったが、多くはアレイと同じくらいの規模の魔法だった。
彼らも入学試問をパスしているはずであり、そのときより下手になっているとは思えないから、あのレベルの魔法か、それよりしょぼくても入学試問はパスできたことになる。お姉ちゃんのアレがいかに規格外だったか、ジョイヤーロ先生の驚きは察するにあまりあるものだった。ま、アレイとかも他に特技があってそれで挽回したのかもしれないが。
とはいえもちろん全員しょぼいというわけではなく、一部の生徒はさすがに魔導学院の生徒という感じだった。なかでもシナライアは両手の上にそれぞれこぶし大の火球を出したあげく、最後はそれらを統合して一つにしたのでギャラリーは大いに沸いていた。クラスで一番だというのは見栄でもなんでもなく、どうやら本当のことらしい。
「シナライア、すごーい!」
「へへっ、ボクにかかればこれくらい楽勝さっ!」
シナライアは両手をくるくると体の前で回しながら、クラスメイトの称賛に対して得意気に笑う。高級貴族の息子モン=デ=モンデとその取り巻きたちは、それを苦々し気に眺めていた。どうやら仲はあまりよくなさそうだ。
「では最後、新入学生のルビルート、やりなさい!」
遂に俺の番になった。オンデゴロン先生の言葉に促され、一歩前に出る。
「るぅくん、がんばってー!!」
従者として見学していたお姉ちゃんが手を振りながらそんな風に応援してくれた。まるで初めて参観に来てはしゃいでしまっている保護者のようで、そんなことしてる従者は誰もいなかったのでちょっと恥ずかしい。しかし、先ほどのお姉ちゃんの暴れっぷりを見たクラスメイト達は、誰も冷やかすようなことは言わなかった。ひそひそと興味深そうに小声でしゃべってはいるが。
「新入りのお手並み拝見、だね」
「従者の姉はなんかよくわからんヤバさがあったけど……」
「なんであっちじゃなくて弟の方が編入生なの?」
――まあ、そんなことはいい。集中集中。
ちょっと呪文を使ってみたかったけど、残念ながらお姉ちゃんに教えてもらったことがないので、使い方がわからない。仕方なく、お姉ちゃんに教えてもらった無詠唱法で、右手に火の玉が現れるよう念ずる。すると――
ぽん、っと可愛らしい音を立てて、親指サイズの火の玉が現れた。シナライアや優秀な生徒ほどではないが、まあアレイの出した火の玉よりは大きいし、俺としては赤っ恥をかかなくて済んだだけで満足である――と思っていたら、
「ふ、ふーん。なかなかやるじゃん」
「化け物クラスじゃないけど、七歳であれなら普通に中の上――いや、上の下くらい?」
「いやいや、無詠唱であれはもっと上でしょ。下手したらシナライアさん、トップから転落するんじゃない?」
「サイズがまだ小さいから、それはないけど、結構いい勝負になるかも」
ひそひそとそんなことを言うクラスメイトの声が聞こえてくる。あれ?結構評価高い?
「うむ、編入生だからついてこれるか心配していたが、これなら十分すぎるくらいだな。むしろ誰かが困っていたら助けてあげなさい」
オンデゴロン先生もそう言って太鼓判を押してくれた。
どうやら、お姉ちゃんを基準に考えていたせいで、俺も相当価値観が狂ってしまっていたらしい。チートとまではいかないが、お姉ちゃんに色々教えてもらっていたおかげで、魔導学院で生活できるほどの力量は俺にもついていたようだった。
つまり、最初から俺が受験していても魔導学院の試問には合格していた可能性が高い。実家にいたときはまさか自分も合格ラインに入っているとは夢にも思わなかったし、改めて、両親に影響されて自分も価値観がだいぶおかしくなってしまっていたことに気が付いた俺だった。




