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23.初授業

「以上だ。よく復習しておくように」


 サイランダと名乗った若い男の教師がそう言って、記念すべき魔導学院一時限目の授業が終わった。

 休み時間に入るものの、クラスの恰好の興味の的となるはずである編入生(俺)には誰も話しかけてくることなく、退屈で気が重い時間が過ぎる。


「なんだかみんなよそよそしいねぇ、せっかくこの世の神であるるぅくんと触れ合えるまたとない機会なのに、人生損してるなー」


 それは完全にお姉ちゃんのせいだと言いたいが、精神が根こそぎ削り落とされてしまった俺はそう言う元気すらない。この姉はどこまで俺崇拝をすれば気が済むのだ。


 時は一時限目と二時限目の間。魔導理論の内容を何とか理解して、ふうと一息吐いたところだった。正直お姉ちゃんの方が教えるのうまい気がする。授業中は従者は隣に控えていていいので、俺が講義を聞いていて困ったときは何度かお姉ちゃんに小声で教えてもらった。

 するとクラスの皆が動き出す。教室の掲示板に貼られている時間割表を見ると(随分懐かしい気持ちになった)、次の授業は実践の授業のようだった。俺もクラスの生徒の後をついて、外に出る。場所がわからなくなったら大変だ。

 そして俺たちは先日試問が行われた広場に出ていた。例の山はお姉ちゃんの魔法のおかげで完全に復活していて、まさか数日前に一度上半分が吹き飛んでいたなどとは、誰も夢にも思わないだろう。


「そういえば聞いたー?新しい七不思議」

「あの山が年に一度消えるってやつでしょぉ?いくらなんでも突拍子ないよねー」


 ……

 どうやら、目撃者はいたようである。俺は少し胃が痛くなった。七不思議として消化されているならまあいいが……


 そんなことを考えている間に、実践の先生が現れた。


「それでは実技の時間だ。今日は火魔法の練習を行う。危険だから許可が出るまでは魔法を発動させないように」


 理論は別の先生だったので、実技がジョイヤーロ先生なのかと思ったが、実技もオンデゴロンという別の先生が担当した。いずれも重鎮感の漂っていたジョイヤーロ先生と比べると随分と若い。さすがに生徒数も多いし、いつもジョイヤーロ先生の授業というわけではないのだろう。


「アレイ、いきます!」


 名簿順で一人の生徒が前に進み出る。先生の前で魔法陣を書くと、呪文を唱え始めた。


「天地にあまねく炎の精霊よ、どうか我に力を与えたまえ!!」




「オーソドックスな火魔法の呪文だねえ」


 お姉ちゃんがそんなことを教えてくれる。呪文ってあまり聞いたことないんだけど。


「あたしはなくても出せるけど、精神が安定したり精霊の力を借りたりできるから理論は知ってるよ。るぅくんはあたしと同じ方法を使えばいいと思うからあまり教えてなかったけど」


 お姉ちゃんは俺に対して期待値が高すぎるんじゃないだろうか。俺は呪文の理論を知りたくなった。


「みんな、よそ見するなよー」


 先生の言葉に、視線をアレイの方に戻すと、彼は手の上に小さな炎の玉を出現させていた。そのサイズは――本当に随分小さく、小指の先ほどの大きさだ。しかし周りは結構はしゃいでいる。


「呪文も短いのに、すぐに出てきたな!」

「アレイの奴、確実に上達してる!」


 ……マジか。あれくらいなら、さすがに俺でもできた気が……

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