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22.編入

 結局何も策を思いつかないまま、翌朝を迎えた。俺は憂鬱になりながら、廊下を歩く。俺の腕には、魔導学院の一年生であることを示す青い腕章がついていた。


「心配しないで、るぅくん!もしも意地悪してきたり、るぅくんを馬鹿にしてくるような奴がいたら、お姉ちゃんが全員消し炭にしてやるからね!!」

「お願いだからお姉ちゃん、人間相手に魔法使うのだけはやめてね。死人が出たらさすがに洒落にならないから」


 そんなことを言いながら、俺は指定された教室の扉を開ける。一年生のクラスだったが、魔導学院は日本の小学校と違って入学年齢が決まっていないので、結構年齢層はばらけていた。俺より少し上くらいの子から、高校生くらいの子供まで、様々な生徒が俺とお姉ちゃんを興味深そうな目で見る。そんな生徒の中に、露骨に目を逸らす女子がいた。

 先日魔導学院の近くで俺たちに声をかけてきた、えっと、名前は――そうだ、シナライアだ。声をかけるべきか、知らんぷりをするべきか一瞬迷うがそんな俺をよそにお姉ちゃんはさっさとシナライアに声をかけてしまった。


「あら 優 秀 なシナライアさん、久しぶり!」

「嫌味っぽく言うな!これでも本当にクラスでは一番なんだからねっ!キミが入学したからさすがに負けるけど……」


 そう言いながら、シナライアは学生を示す腕章を、お姉ちゃんではなく俺がつけていることに気づいたようだった。


「――え?入学試験を受けるの、キミじゃなかったの?」

「ジョイヤーロ先生の勧めでるぅくんの従者になることにしたの!やっぱり至高のるぅくんを形だけとはいえあたしが従者として従えるのは不自然だからね!」


 お姉ちゃんはそう言ったが、シナライアは額面通りに受け止めず、何かを察したようだった。


「あ、ふーん、そう。試問自体を壊しちゃったんだ……ハハ、アハハ……」


 顔を真っ青にして、シナライアはそう呟いた。この前のことを思い出したのか、ガタガタと小刻みに震えている。

 そんな俺たちに、横から別の声がかけられた。


「おい、新入りぃ。一年クラスに編入してきたのに、モン=デ=モンデ様に挨拶もしないとはどういうわけだ?」

「こらこらビルク。育ちが悪いんだろうかごはぁっ!!!」

「ぼげぇっ!!」

「ぐはぁっ!!」


 いやせめて最後まで言わせてあげようよお姉ちゃん。僕まだ唐突すぎて何が起ころうとしてたのか理解してないんだけど。

 俺が理解したのは十人以上の生徒のグループがいて、真ん中に黒いマスクをした少年がいたことと、その中の一人二人が俺に対して声をかけてきたということだった。


「高級貴族の息子とその取り巻きがるぅくんを馬鹿にしようとしたのでちょっと撫でただけだよ!ちゃんと約束通り魔法も使ってないから褒めて褒めて!!」

「あ、うん……ありがと、お姉ちゃん」


 お姉ちゃんに説明されて、なんとか状況を理解する。観察力も高いお姉ちゃんは、教室に入ったときから、どのような生徒がいるのかを把握していたようだった。


「お、お前こんなこと――ごはぁっ!」

「や、野蛮な平民――がふっ!」


 起き上がろうとした男子生徒二人を、またお姉ちゃんが『撫でる』。


「いいかなー、あなたたち。あたしのことはどうでもいいけど、これからちょっとでもるぅくんを侮辱したら、その瞬間腕の骨が折れちゃうの。それでね、もうちょっと侮辱したらこんどは脚の骨も折れちゃうの。それでもさらに反抗的だったらぁ……あーあ、もう折っていい骨なくなっちゃうかなぁ。それなら、折っちゃダメな骨を折っちゃうだけなんだけどねぇ」


「わわわわわわわわわ、わかった、る、るぅ様にはもう何もいたしません、いたしませんから、どうぞお許しくださいいいいぃぃぃぃぃ!!」

「るぅ様ぁ、お許しくださいぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」


 お姉ちゃんの強さを目の当たりにした少年たちは涙目になっている。


「ヘイルク、なんなんだあれは……」

「わ、わかりません……私の後ろに隠れていてください……」


 リーダー格とおぼしきマスクの少年も、従者の後ろに隠れてガタガタと震えていた。


「お、お姉ちゃん落ち着いて!!完全に悪目立ちしちゃってるから!!」


 そんなこんなで入学一日目から完全にクラスの腫物扱いになってしまいました。ぐすん。


 結局そのあとは誰とも仲良くなれるわけもなく、空いている席を見つけてお姉ちゃんと一緒に座り、最初の授業が始まるまで落ち着かない時間を過ごす羽目になったのだった。


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