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17.チンピラ

 そして翌日になり、いよいよ入学試問の当日になった。

 俺とお姉ちゃんは時間に余裕を持って、宿を出る。そのまま魔導学院に向かおうとして――


「おっと、あんちゃん、ぶつかったぜ」


 がらの悪い男に、かなり無理矢理肩を当てられた。


「ちょっと面貸してもらおうかぁ」

「そこのねぇちゃんもだ、こっち来いよ」

 

 わらわらと周囲からチンピラが湧き出てくる。なるほど、王都と言ってもこの程度の治安なのか。


「おやぁ、ひょっとして急ぎの用事かなぁ?」

「ちゃぁんと誠意を見せりゃ、穏便に済ませてやってもいいぜぇ」

 

 どうやら俺たちが魔導学院の入学試問に行くことを嗅ぎ取って、待ち伏せていたらしい。ほかにも受験生がいたらこうやって絡んでいるのか。遅刻は一切認められないとのことだし、この人数で囲めばたとえ魔導学院の受験者とはいえ、なかなか切り抜けるのは容易ではないだろう。

 ――普通なら。


「あ~あ、だからやっぱり、高級ホテルにしときたかったのにな。るぅくんにこんな不快な思いをさせちゃうなんて、ごめんね、不甲斐ないお姉ちゃんで……」


 どんよりとした顔のお姉ちゃんは、そう呟いた。


「あぁん?何か言ったかぁ?」

「構わねぇ、少し痛めつけてやろうぜ!」

 

 そんな風にチンピラたちが喚いて、俺たちを囲む輪を縮めてくる。

 次の瞬間――


 ばふん


 間抜けな音と共に、周囲のチンピラたちはそのまま全方向に吹き飛ばされていた。


「殺しちゃったらるぅくんに怒られるしぃ、一体どうしようかなぁ~」


 無表情なお姉ちゃんが、ゆらりと一歩足を踏み出す。そのまま死神のように、倒れているチンピラの方へ近づくと、襟元を掴んで引き寄せた。


「あなたがボスかなぁ?」


 顔を覗き込んで目をしばらく見た後、興味を失ったようにぽいと投げ捨てる。そのまま、同じことを次々とチンピラにしていった。


「あなたがボスかなぁ?」

「あなたがボスかなぁ?」

「さっきの会話の感じ、あなたっぽいよねぇ?」


 一人一人、チンピラの頭を掴んで持ち上げ、目を合わせていく。やがて、一人の男に目星をつけた。


「う~ん、あなたがボスだね。じゃぁ――土下座☆」


 頭を掴んだと思ったら、そのまま地面に勢いよく打ち付けた。男の顔面の横に、赤い染みが広がる。


「ほ、ほがっ、ふがっ」


 男が何か言おうとしているが、お姉ちゃんはその頭を足で押さえつけた。


「このまま踏みつぶしたらどうなっちゃうかなー、ねぇみんな、見てみたい?」


 恐怖に震える周囲のチンピラにお姉ちゃんは視線を送る。彼らは一斉に目をそらした。まるでお姉ちゃんと目を合わせたら死んでしまうかのように。ボスの頭の上で、お姉ちゃんはじっくりと恐怖を与えるように足を前後に動かす。


「誰も何も言わないのぉ?じゃぁ今から足に力入れちゃおっかな――」


「お、お姉ちゃん!そろそろ行かないと遅刻しちゃうよ!!」


 殺しはしないと言っていたので脅しだとは思ったが、ついそのまま踏みつぶしてしまうのではないかと思ったので俺は思わず声をかける。お姉ちゃんはゆっくりと、脚をボスの頭の上から外した。


「――そうだねっ、るぅくん、行こっか!」


 そして満開の花のように明るい笑みを浮かべ、俺の肘に手を回す。しかし最後に、チンピラたちを脅しておくのを、もちろん忘れない。


「次、あたしとるぅくんの前に現れたら、今度は本当にその頭を踏みつぶすから」


 言うまでもないことだが、彼らが俺たちの前に現れることはなかったのだった。

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