18.試問の間
少し時間を取られてしまったが、それでも試問の開始には十分余裕を持って、俺とお姉ちゃんは魔導学院に入る。一回来ているので道に迷うなんてことはもちろんない。
「試問の間ってどこかなー」
「見て見てお姉ちゃん、案内図があるよ!」
丁寧なことに、看板のように案内図が立っていた。ごちゃごちゃと入り組んだ魔導学院の建物それぞれに、細かい字でぎっしりと説明が書いてある。そのなかから、俺たちは試問の間と書かれているのを見つけ出した。
「随分わかりにくい場所にあるんだねぇ、文字と地図くらい読めなきゃ、試問を受ける資格もないってことかなぁ」
「単に施設が拡大していって、ごちゃごちゃになっちゃったとかいう理由かもしれないよ?」
そう言いながらも、俺たちは場所をきちんと把握する。お姉ちゃんはもとより、俺も文字の勉強はしておいたし、地図なら転生する前から読める。
「こっちだね」
俺たちはレンガ造りの建物の間にある狭い道を抜け、一棟のあまり目立たない学舎へとたどり着いた。ぽつんと建っているように見えるその建物は、学院の一番外れにあり、その後ろには広大な広場や森林、山々が広がっていた。
「向こうで実践試問とかもあるかもしれないね」
「確かに、それでこんなところに試問の間があるのかなぁ」
俺とお姉ちゃんはそんなことを言いながら、建物の中に入る。階段を上り、三階に上がると目の前に大きな扉がそびえていた。
お姉ちゃんは無造作にそれをノックする。
「入りたまえ」
扉の奥からは、重々しく厳かな声が聞こえてきた。
「失礼します」
「失礼します」
ぎぃぃ……と年季の入った扉を二人で開け、俺とお姉ちゃんは一緒に足を踏み入れる。部屋の中に座っていたのは、高齢の男性だった。長いひげを蓄え、眼鏡をかけた白髪の男性は、俺がイメージする魔導学院の重鎮そのものだった。
「どちらが、アマミレイア君かね」
「あたしです」
お姉ちゃんが片手を上げる。
「ふむ、そうするとそちらの君は……」
「えっと、あたしの弟で、じ、じゅ、じゅ、従者希望の――」
お姉ちゃんはすごく嫌そうな顔をしながら従者と言った。まだ心の整理がついていなかったのか。
「ルビルートです。よろしくお願いします」
これ以上姉が変なトラブルを起こす前に、俺は自ら名乗って頭を下げる。試問官の老魔導士は、くいと眼鏡を押し上げた。
「ふむ。まぁいいじゃろう。知っていると思うが、従者については試問はないので、今日は主人の試験を見学しているといい」
主人、と言った瞬間、ぴきり、とお姉ちゃんのこめかみに青筋が立つのが見えたが、お姉ちゃんはなんとか怒りをこらえたようだった。そんなお姉ちゃんの様子には気づかず、老魔導士は話を続ける。
「わしは今回、君の試問官を務めるジョイヤーロ=クラウドミルじゃ。もし試問を合格した暁には、授業でも顔を合わせることになる。名前を覚えておいてもらうぞ」
ジョイヤーロ先生はそう言うと、にやりとプレッシャーをかけるように笑った。
「まぁ、そうは言ってもなかなか最近は入学希望者も多くてな。ちょっと田舎で魔法の才があるくらいの若者は、なかなか合格できんのじゃ。君はどうかのぉ、ま、せいぜい頑張るのじゃぞ」




