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15.シナライア

「ねーキミたち、これから王都の中を散策するの?なんならボクが道案内してあげようかっ?」


 王都の街を見ることを決めた俺たちの前に、突然一人の少女が現れた。年はお姉ちゃんと同じくらい、生き生きとした猫のような瞳が印象的だ。


「……あなた、さっきからあたしとるぅくんの会話を聞いてたよね?何?あたしとるぅくんのスーパーラブリータイムを邪魔して何がしたいの?」


 お姉ちゃんは俺と話していたときとは打って変わって冷たい眼になる。少女は少したじろいだようだった。あとお姉ちゃん、スーパーラブリータイムはやめて。めっちゃ恥ずかしい。そして盗み聞きされていたことに、俺は全然気づいていなかった。少女の方もばれていたとは思っていなかったようで、やや気圧されたような顔になる。


「ボ、ボクの名はシナライア。この魔導学院の 優 秀 な生徒だよっ。キミたちが魔導学院の試問を受けるみたいだから、おせっかいを焼いてあげに来たのさっ」

「いらない。結構。帰って」

「お、お姉ちゃん、そんなに冷たくあしらわなくてもいいんじゃないかなぁ」


 俺は慌ててフォローに回る。シナライアもそれに同調した。


「そうだよ!せっかく魔導学院の生徒に会えたんだから、諮問でどんなことをされるかとか情報収集するのが賢いやり方ってもんじゃないのかなっ?」

「いらない、どうせ合格するから」

「いやいやボクみたいな 優 秀 な女の子でも、結構苦労したんだからねっ?強がり言わずに聞いておいても――」


 どかああああああああああああああああああああああああああああああんんんんんんんんんんんんんんんんん!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


 みなまで聞かず、お姉ちゃんは炎魔法をぶっぱなした。一応相手には当たらないように、かつ目立たないように路地裏に向けて制御された超高温の火柱が放たれる。当たった場所では地面が溶けて、溶岩のようになっていた。


「――へ?……ふぇぇぇ??」


 シナライアはあっけに取られて口をパクパクしている。無理もない。俺にとってはお姉ちゃんのドラゴン狩りなどで結構目にしている魔法であっても、やっぱりどう考えても規格外だよなぁ。


「それで、 優 秀 なシナライアさん、何かご教授していただけることはあるんですかねぇ?」


 一見丁寧な言葉遣いの裏に、隠そうともしない怒りを乗せて、お姉ちゃんはシナライアに迫る。じり、じりと後ずさる彼女は、やがてくるりと回転すると、泣きながら逃げ出した。


「何もありませえええええええええんんんんんんんん!!!!!!!ごめんなさいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!!!!!絶対合格だと思いますぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!!!!!」


 そのまま声が小さくなっていく。


「ねぇ!るぅくん!今回はお姉ちゃんうまくやったよねぇ!!目立たなかったし大きなトラブルにもならなかったよ!!ねぇ褒めて褒めてぇ!!」


 俺に振り返ったときは、お姉ちゃんはもう殺気を完全に消し、ただ目をキラキラさせて子犬のように俺に褒めの言葉をねだった。


「あー、うん、そだね。さすがお姉ちゃん」


 棒読みにしかならないのだが、お姉ちゃんはそんなことにも気づかず嬉しそうである。


「えへへー♡お姉ちゃんもやればできるんだよー!」


 在校生に対してあんなことをすれば学院内で噂になってしまう可能性は大いにあるし、どう見ても穏便に済ませた類には思えないのだが、あまり最初から厳しく要求しすぎるとお姉ちゃんも言うことを聞いてくれなくなるかもしれないし今回のはむしろお姉ちゃんの成長と見たほうがいいのかいやでも明らかに道を溶岩にするのはやりすぎだろう、まだぐつぐついってるんだけどあれどうすりゃいいんだ。

 などと、頭を抱える俺の腕を取って、


「それじゃあ、気を取り直して王都デート、じゃなかった、王都散策行こっか、るぅくん!」


 お姉ちゃんはいつも通りに、鼻歌交じりで歩き出したのだった。


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