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14.下見

 翌朝、俺たちは宿を出ると、王都の街を歩いて魔導学院へと向かった。さすがに王都と名乗るだけあって、家々が並び、市には商品が所狭しと置かれている。異国風ではあるが、元の世界のどこかにはあっても、違和感のない光景だ。

「こ、こんな風に二人で歩いていると、なんだかデートみたいだね、る、るぅくん」

 お姉ちゃんがすごく照れながらそんなことを言ってきた。この世界にもそのようなデートの概念はあるのか。

「うん、そうだね、お姉ちゃん」

「で、デート……るぅくんとでぇとぉ……」


 お姉ちゃんは自分で言っていて、その言葉に酔ってしまったがごとく目を回している。

 そんな風にしばらく歩いていると、やがて周囲に立ち並ぶ建物一つ一つの敷地が広くなり、また厳かな雰囲気を漂わせるものへと変わる。市民生活の空間から、国家機関の立ち並ぶエリアへと移動していっているのが、はっきりとわかった。そして――


「あれだね、魔導学院」


 お姉ちゃんが示した方を見ると、立派な建物がたくさん立ち並ぶ一群が目に入った。日本で言うならば大学のような感じ。赤いレンガ造りの建物で統一された空間は、日本にあっても人気の出そうな場所だった。

 そちらに向かって行くと、高さが3メートル以上もあるであろう立派な鉄の門の左右に、槍を持った門番が控えていた。

 俺たちは門番に声をかける。


「すみませーん、入学希望者なんですけどー」

「ああ、二人ともかい?」

「いえ、弟は、その、じゅ、じゅ、じゅ……従者です」


 お姉ちゃんはすごく嫌そうな顔をしながらそう言った。俺を本気で従者にはしたくないらしい。


「はいよ、それじゃあ、試問の日を決めるから、住んでいるところを書いておいて」


 門番は慣れたもので、懐から一枚の紙を取り出すと、お姉ちゃんに渡す。お姉ちゃんはその紙に、自分の名前と先ほどの宿の名前を書いた。


「どーも。それじゃあ、手続き進めとくんで、待っててくれ。何日かで試問になるから、準備しとくんだぞ。最近は試問も難しくなってるって評判だから、しっかり準備しときな。頑張れよ」


 そんな風に門番に応援されながら、俺たちは踵を返した。すぐに試問になるのかと思っていたのだが、数日間の空き時間ができてしまった。


「お姉ちゃん、これからどうする?試問の練習するの?」

「え?うーん、大丈夫じゃないかなぁ」


 ですよねー。

 俺もお姉ちゃんが魔導学院の試問に落ちる姿は想像できない。というか、お姉ちゃんを落としてしまったらそれは試問の方が間違っている気がする。


「今のうちに、王都を見て回っとこうか。魔導学院に入学してからじゃ忙しいかもしれないし。べ、別にるぅ君とデート気分をいっぱい味わいたいとかじゃないんだからね……」


 お姉ちゃん、顔を真っ赤にしながらそんなことを言っても説得力ないよ……


 とはいえ、俺もこの世界の王都はちゃんと見ておきたかったので、お姉ちゃんの意見に賛成する。


「ま、お姉ちゃんの言う通り、時間があるうちに街を見ておくのは悪くないかな。これから買い物なんかのときも必要になってくるかもしれないもんね!」

「る、るぅくん……」


 お姉ちゃんは目に涙を浮かべている。そんなに嬉しいのか?


「二人で買い物だなんて、なんだかすごく新婚っぽい……♡」


 お姉ちゃんの頭の中はいつだってそんなことばっかりだった。


「っていうか、これから二人だけで暮らすわけだしもはや新婚っぽいじゃなくてマジモンの新婚じゃないのこれぇ……ヤバいぃ……」

「お姉ちゃんお姉ちゃん、王都で十歳と七歳の婚姻は成立しないし、そもそも二親等以内の婚姻も認められていないらしいよ……」

「法律なんてぶっ壊すから大丈夫♪」


 この姉なら本当にやりかねないので結構怖かった。


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