13.宿
「だってぇ……あたしならともかく、あいつるぅくんも馬鹿にしたんだもん……」
「そりゃいきなり身元のはっきりしない子供二人が来たらむしろ普通の反応だからねお姉ちゃん!!」
俺たちは路地裏を歩いていた。お姉ちゃんはぶつぶつ言っているが俺は譲る気はない。
「宿を破壊した相手に、仮に部屋を用意してくれたとしても、恨まれまくってるに決まってるじゃん!落ち着いて過ごすことなんてできないよ!」
「で、でも何をやってきても全部あたしがつぶしてあげるから……」
「そういう問題じゃないの!!」
ブラコンも激しすぎるのは困りものである。俺はやれやれとため息を吐いた。それを見てお姉ちゃんが泣きそうな顔になる。
「る、るぅくんもしかして怒ってる……?お姉ちゃんのこと嫌いになっちゃった……?」
いかつい門番相手にあれほど強気で振舞っていたお姉ちゃんが、俺相手にはこの態度である。俺はやれやれと苦笑いした。
「怒ってないよ、お姉ちゃん。でも僕はあんまり目立つことはしたくないし、質素な宿でもいいから、あまり僕のために頑張らないでくれると嬉しいかな」
「うん、ごめんね、るぅくん……お姉ちゃん、るぅくんのことだといつも周りが見えなくなっちゃって……」
お姉ちゃんはそう言って目じりをぬぐった。結局そのあとは、一般の旅人なども利用するような宿を見つけ、二人部屋を取った。そこでも年齢が年齢なので少し訝しがられたが、姉の頭に血が上る前に俺が前に出て、魔導学院のことを言うとあっさり理解してもらうことができた。これならさっきもこうしていればよかったかもしれない。
「ごめんねぇ、お姉ちゃんの短気のせいでこんな部屋になっちゃって……」
「だから大丈夫だってお姉ちゃん、それにこんな部屋呼ばわりはこの宿の人に失礼だよ……」
「うぅ……るぅくん、なんていい子なの……」
そのまま俺はお姉ちゃんに抱き着かれた。部屋にあるのはダブルベッドが一つ。俺とお姉ちゃんは添い寝の状態である。
「お、お姉ちゃん、苦しい苦しい」
「あ、ゴメン!またあたし……」
「いちいち凹む必要はないけど、僕はお姉ちゃんほど強くないから、それだけは忘れないでね……」
「うん、ごめん……」
お姉ちゃんはしょげてしまった。仕方ないので、俺はそっと右手を伸ばし、お姉ちゃんの右頬に触れる。そのまま優しく、お姉ちゃんを撫でた。
「そんな顔しなくてもいいから、もう寝よ、お姉ちゃん」
「るぅくん……!うん、そうだね、明日は魔導学院に行かないといけないもんね」
「僕が軽んじられても、いきなり暴れちゃだめだよ、お姉ちゃん」
「え、そ、それは……ぜ、善処します……」
露骨に目を逸らすお姉ちゃんだった。明日も何かトラブルが起こるのではないか、俺は少し心配になりながらも、眠りに落ちていった。
「あぁ……るぅくんの寝顔が、こんなに近くにある……♡幸せぇ……♡」
何やら眠りに落ちる直前に聞こえたような気もしたが、まぁそれは聞かなかったことにしてあげよう。




