11.大跳躍
しばらくして帰ってきたお姉ちゃんは、俺が手に魚を持っているのを見て、不思議そうな顔をした。
「ただいまー。あれ、るぅくん、その魚は?採ったの?」
「う、うん、まあ、採ったというか、打ち上げられたというか……」
「ふぅん、あまり見かけたことないけど、たぶんジャオリって魚だね。昼ご飯はさっき食べたから、その魚は晩御飯にしよっか」
そんなことを話してから、俺は再びお姉ちゃんの両肩に乗った。俺が乗ると、相変わらずお姉ちゃんはとても嬉しそうに笑顔になる。
「それじゃあ、行くよぉ!」
楽しそうにそう叫んで、お姉ちゃんは駆け出した。さっきの盗賊を抱えていたときと比べれば、幾分緩やかで、魔法によるガードも手厚く、俺に気を配ってくれているのがわかった。
それでも速さは新幹線並みだ。お姉ちゃんの肩の上で揺られていると、さほど時間がかからずに城壁が見えてきた。規模から考えて、あれが王都で間違いないだろう。結構な距離があるはずなのに見えるその城壁は随分と大きいに違いなかった。
果たして、徐々に近づいてくると、それは十階建てのビルほどあるのではないかという高さで眼前に迫る。そして立派な城門と、警備をする兵士たち。街に入ろうとする多くの人々でごった返していた。
ここが王都か。前世の都市と比べてはさすがに分が悪いだろうが、この世界の中ではきっと大都市なのだろうということが伝わってきた。
さて、当然お姉ちゃんも、走るスピードを緩め、審査を受ける――
と、思っていたら。お姉ちゃんは全く速度を緩めることはなく、そのまま走り続けている。
「お、お姉ちゃん!?」
「るぅくん、ここの審査面倒だってさっきわかったから、ショートカットするね!」
さっき審査が長引いた理由は盗賊団を小さな子供が一人で連れてきていたのが原因だと思うのだが、お姉ちゃんは審査の方に問題があると思ったようだった。
「そおれええええええええええええええええええええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
勢いよく叫ぶとともに、お姉ちゃんは俺を肩に乗せたまま――飛び上がる!!
重力がかかる中、眼下に見えるのは門の前に並ぶ人々と――城壁だった。
なんと十階建てのビルほどの城壁を、お姉ちゃんは走高跳で飛び越えてしまったのだ。
「は……?」
お姉ちゃんの超人ぶりはよく理解していた俺も、さすがにこれは一瞬言葉を失う。そのまま街の中のエリアに入ると、お姉ちゃんは両足をしっかり曲げて着地した。いつの間にか俺は、両手でお姉ちゃんに支えられ、お姫様抱っこのような体勢になっている。
ドシン!!!!
巨大な音が鳴り、砂ぼこりが舞う。しかし不思議なことに、お姉ちゃんに抱きかかえられている俺には、さして大きな振動が来なかった。
「るぅくん、大丈夫?うまく衝撃を殺したつもりだけど」
「う、うん、大丈夫……」
まだあっけに取られていると、周囲から慌てた人の声が聞こえてきた。
「なんだ!?何があった?」
「地震か!?」
「ひどい砂ぼこりだ!」
「なに!?何があった?」
ぞろぞろと人が集まってくる気配を感じ、お姉ちゃんは俺の手を引いた。
「面倒なのは嫌だから逃げちゃおね」
そのままするりと俺たちは路地裏を抜けて、見つからず逃げることに成功した。




