第九話:白球の誓いと、最凶の金属バット
「一番まともな武器が一番怖いわ!!!!」
俺は思わず廊下に響き渡る声で絶叫した。
「今までのがふざけすぎてたんや! フルパワーでぶん殴られたら骨が折れるやつ出てきた!!」
「南出……」
山田は鋭い目つきで俺を見据え、バットをゆっくりと構えた。 その構えには一切の隙がない。甲子園を目指して毎日一千本の素振りを重ねてきた本物のバッターのフォームだ。
「俺の夢は、甲子園でホームランを打つことだった。……だが、この狂ったデスゲームで最後の一人になり、俺は証明してみせる。俺のフルスイングが最強だということを!」
「命がけの場面で部活のモチベーション持ち込むなや!」
「行くぞ……プレイボールだっ!!」
ブンッ!!
山田が空を切る素振りを見せた瞬間、豪快な風切り音が廊下に吹き荒れた。
「アカン! 距離を取れ救井!」
「うんっ! でもあんなの食らったらひとたまりもないよー!」
「ウオオオオアアアアッ!」
山田がすさまじい踏み込みで迫ってくる! 金属バットをフルスイングの体勢で振りかぶり、俺の首元を的確に狙ってきた!
「やめろぉぉぉ! 『なんでやねん』!!!」
俺は恐怖で目を瞑りながら、手にした確率変動型ハリセンを必死で突き出した!
キィィィィィンッ!!!!
校舎内に、甲子園のアルプススタンドも真っ青になるような美しい金属音が響き渡った。
「ぐわぁぁぁっ!?」
ハズレ(95%)の紙音が鳴ると思いきや、俺のハリセンの柄(プラスチック部分)と、山田の金属バットが見事にジャストミート!
互いの衝撃が激しく拮抗する!
「な……なにぃ!? 俺の渾身のフルスイングを受け止めた……だと!?」
山田が目を剥く。
「いや! 手が! 手がめちゃくちゃ痺れてる痛い痛い痛い!!」
金属バットの強烈な振動がハリセンを伝わって俺の両手に直撃し、痺れで涙目になる。
「ぬうぅぅ……さすが南出! だが、俺の野球魂はこれしきでは折れん!」
山田は一歩引き下がると、廊下に落ちていた『金子の散らかしていった大量の偽札(子供銀行券)』を足元で丸め、ボール状に固め始めた。
「食らえ! 必殺・札束変化球!!」
「自分で投げて自分で打つスタイルかよ!!」
山田は丸めたお札を空高くトスすると、豪快な一本足打法で金属バットを振り抜いた!
カキィィィィィンッ!!
音速で放たれた固まりのお札が、超低空飛行で廊下を爆走してくる!
「あぶなーーーい!」
俺は救井を抱きかかえて横飛びで回避した!
お札の弾丸は俺たちの頭上をすり抜け、そのまま4階の突き当たりにあった『開かずの理科準備室』のドアを激しく突き破った。
ドガァァァン!!
理科準備室の中から、怪しげな煙と紫色の泡がモクモクと溢れ出してきた。
「な、なんだあの部屋は……!?」
山田がバットを構えたまま引きつった声をあげる。
そう、そこは化学部の怪しい薬品が大量に保管されているデンジャラスゾーンだったのだ。
「あ、アカン……山田! 今すぐ逃げ――」
俺が叫ぼうとしたその瞬間、部屋の中から「ゴボゴボゴボ……」と不気味な泡立つ音が聞こえ、廊下に新たなハザードが広がろうとしていた。




