第八話:札束の暴力と、悲しきマネーガン
「おい南出ぇぇぇ! 助けてくれぇぇぇ!」
3階の教室のドアをブチ破って飛び出してきたのは、クラスのナルシスト成金男子・金子だった。
「どうしたん金子!? 誰に追われて――」
「違う! 俺の支給品が暴走してるんだぁぁぁ!」
金子の両手には、ゴツい銃の形をしたマシン――『SF・高速札束マシンガン(マネーガン)』が握られていた。
ババババババババババババッ!!
「うわあああぁぁぁ! 止まらねぇぇぇ!」
金子が叫ぶと同時に、マネーガンの砲口から帯付きの札束(※ただし子供銀行券)が超高速で連射された!
「ギャッ!? 痛った!!」
飛んでくるお札の「紙の角」が、俺の頬や腕をチクチクと攻撃してくる。
地味に痛い! 地味にめちゃくちゃ鬱陶しい!
「な、なんやこの武器は!?」
「説明書には『札束の暴力で相手を屈服させる兵器』って書いてあったんだよ! でも一発弾詰まりを起こしたら、残りの札束が自動連続射出モードになっちゃって……!」
「文字通りの『札束の暴力』かよ!!」
バババババババッ!!
大量のお札(玩具)が廊下中に舞い散り、あっという間に俺たちの足元はお札の海と化した。
「南出くん、目があけられないよー!」
救井がお札の嵐を手でガードしながら悲鳴をあげる。
さっきまでのキュンとする良い雰囲気は、舞い散る偽札のシュールな光景によって完全に吹き飛んでいた。
(俺のラブコメ空間を札束で汚すなや!!)
「金子! 銃口を上に向けるか、トリガーを離せ!」
「離してる! 離してるけど止まらないんだ! あと弾倉(お札)が何故か無限に湧いてくる!!」
「無駄に高スペックな兵器積んどくな!!」
その時だった。
お札が大量に散らばった廊下の床は、紙のコーティングでめちゃくちゃ滑りやすくなっていた。
「う、うわっ! 足元が滑――」
パニックになった金子が派手に足を滑らせた。
すてーん!!
「ぬわぁぁぁ!?」
豪快にひっくり返った金子は、手に持ったマネーガンを抱え込んだまま、大量のお札の上をボブスレーのように滑走し始めた!
シューーーーッ!!
「止まれぇぇぇ! 3階の窓に向かって滑ってるぅぅぅ!」
「金子ぉぉぉ!!」
金子は自ら放ったお札のカーペットの上を猛スピードで滑り抜け、そのまま3階の窓から勢いよく校庭へと飛び出していった。
「金で……金で解決できない問題なんてなぁぁぁい……!(射出)」
チュドォォォォン!!
校庭の砂場で紫色の転送光線が炸炸裂し、金子の反応が消滅した
(※校長室で「おや、お札の人? せんべい食べる?」と出迎えられていた)。
「……」
「……」
静まり返った3階の廊下には、一面に舞い散った大量の子供銀行券だけが虚しく残された。
「……何だったの、今の……?」 救井が呆然と呟く。
「……札束の暴力を身をもって教えてくれたんやろ……」
俺はお札を一枚ひらりと拾い上げ、深いため息をついた。
「行こう、救井。……掃除のおじさんに怒られる前に」
「うん……」
こうして、金子の悲しきマネーガン事件は幕を閉じたのだった。




