第六話:人間の盾と、抜けない名刀
「我が剣技、一切の迷いなし……! 覚悟っ!!」
廊下を揺るがすような足音とともに、超絶健康体となった伊達 武蔵が迫ってくる!
後ろには日本刀を持った無敵の剣豪。 前には手足をカチカチに自縛接着した内田(人体オブジェ)。
「南出くん、どうしよう!? 挟み撃ちだよー!」
救井が悲鳴をあげる。
「くそっ、考える時間がねぇ……! 内田、ちょっと借りるぞ!」
「えっ!? ちょっと待っ――」
俺はカチカチに固まった内田の腰あたりを両手でガシッと掴むと、そのまま『人間用大型タワーシールド』として掲げ持った。
超強力接着剤で体全体が板のように固まっているおかげで、しなることすらなく、見事な一枚の防護板(人間)として機能している!
「ちょっと南出ぇ!? 俺を盾にするな! 痛いのは嫌だぁぁぁ!」
「だんまり決め込んどけ! お前の自業自得じゃ!」
「一閃っ!!」
伊達の鋭い掛け声とともに、煌めく日本刀の刃が振り下ろされた!
ガツゥゥゥンッ!!!!
廊下に金属音が重く響き渡る。
「ぐわぁぁぁぁっ!?」と叫んだのは内田だ。
だが――奇跡が起きた。
内田を包み込んでいた『SF・瞬間超強力接着ガン』のドロドロしたコーティングは、まさかの防弾ガラス並みの強度を誇っていたのだ!
「な、何ぃ……っ!?」
伊達が驚愕の声をあげる。
日本刀の刃は内田の表面を覆うカチカチの接着剤層に深々と突き刺さり、そのままピクリとも動かなくなった。
「刀が……抜けん!?」
伊達が顔を真っ赤にして刀の柄を引っ張るが、超強力接着剤の超・粘着力が刀身を完璧にロックしている。
「ふ、フハハハハ! どうだ伊達! 俺の科学の力は!」
内田が盾にされたまま調子に乗り始めた。
「お前はただ自爆しただけやろ!!」
俺は間髪入れずにツッコミを叩き込んだ。
「ぬぅぅぅ! 離せ! 離れんかこの刀!!」
刀を引き抜こうと必死になる伊達。 刀が引っ付いたまま前に突き出されている内田。 そして内田を盾として抱えている俺。
3人の距離が、完全にゼロ距離で固定された。
「今だ、南出! 秘術を放てぇぇ!」
なぜか内田が応援してくる。
「言われんでもかましたるわ! 頼むぞ、5%……出ろぉぉぉ!!」
俺は超至近距離から、伊達の無防備な胸元めがけてハリセンを叩きつけた!
ズドォォォォォォン!!!!
出た。5%の大アタリ(クリティカル)だ!!
「ぬがぁぁぁぁぁぁっ!?」
超近距離で炸裂した100倍の衝撃波が、伊達武蔵と、ついでに盾になっていた内田をまとめて直撃!
衝撃波の反動で廊下の窓ガラスがバリバリと割れ、二人はセットで2階の廊下から校庭へと吹き飛ばされていった。
「うわあああぁぁぁ……っ(二人分)」
ドカーン! と砂場へ激突する二人。
まさにその落下と同時だった。
砂場を覆うように、まばゆい紫色の転送光線がドカンと炸裂した!
チュドォォォォン!!
「あ、二人とも消えた!?」
光が収まったあと、砂場には二人の姿はキレイサッパリ消えていた(※校長室で「おや、いらっしゃい」と煎餅を出されていた)。
だが――。
砂場には、内田の接着剤に刺さっていたはずの日本刀の「鞘」だけが転がっており、伊達武蔵の姿は影も形もなかった。
転送光線に巻き込まれて消えたのか。 それとも落下の衝撃波に乗って、どこかへ吹き飛んで逃げ延びたのか。
煙が風に流れる校庭を見下ろしながら、俺と救井は呆然と立ち尽くした。
「生きとるんか……やられたんか……どっちなんや……?」
その重苦しい静寂を破るように、黒板の上のスピーカーから「ピンポンパンポーン」と呑気な音が響いた。
『あー、ただいま内田くん消滅〜。……ん? 伊達くんは消えたのかな? 微妙に光の枠から外れてどっか飛んでった気もするけど……ま、いっか!』
「適当すぎるやろがい!!!!」
あまりの雑なアナウンスに、俺の叫び声が校舎内に響き渡る。
『えー、というわけで現在残りは約27名くらいかな? 暑いけどみんな怪我のないように(?)頑張ってね〜』
「もう怪我人も死亡者も出とるわ!」
ツッコミを入れつつも、俺は息を吐き出し、ハリセンを握り直した。
「……行こう、救井。ここにいてもラチがあかん」
「うん……!」
伊達武蔵の生存に一抹の不安を残したまま、俺と救井は次の階へと足を進めるのだった――。




