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第七幕

「お前達」


目の前に現われた花と正一。


「私達も、ってここは僕だけでいいよ」


「え!でも正一さん戦闘が苦手だって…」


「そうだ、正一ここは皆で力を合わせて倒すべきだ」


正一だけでは荷が重いと思う。


「僕は戦闘が苦手だけど出来ないわけではないんだから君達は早く隼人君の所に行くんだ」


「でも…」


「いいから」


「行くぞ花」

こうなったら正一は断固として譲らない事を氷華は知っていた。

「…分かったわ。気をつけて」


氷華たちは隼人の所へと急いだ。


「さて…と」


刹那のまわりに緑色の光が包んだ。


「あなたは見たところ後方支援型の術師では?」

「そうですが?」


それを聞いた青年はアンデットの群れに指示をした。


「あなたの名前は?」


正一は問いかけた。


「私には名前などありませんよ。そうですね、ナナシとでも呼んでください」


名前がない。


何かの理由で名前すらも与えられなかったのか。

「名前など聞いている余裕がありますかね?」


ナナシの指示でアンデットが正一に飛び掛かる。

しかし、透明な箱がアンデット達をかこむ。


箱に閉じ込められたアンデット達は必死に壁を破ろうとするがびくともしなかった。


「なんだ…これは…?」

「これは盾だよ」


「た…て?」


「そうだよ」


そしてナナシも箱の中に閉じ込められた。


「ですが、閉じ込めるだけで攻撃出来ないんでは私を倒せないですよ。」

「要は後方支援能力も使いようって事さ」


そう言うと細長い先の尖った盾が現われる。


それも何本も。


「ま、まさか!」


「そのまさかさ」


その針がナナシの入った箱ごと貫通する。


あっという間にナナシは針ダルマになってしまった。


「これはちょっと残酷すぎるから苦手なんだよね」


ふふっと笑うと


「だから戦闘が苦手ってわけ。さて治療に専念しますか」



緑色の光が強くなる。


「彼が無事だといいんだけど…」







「ちっ…くしょう…」


隼人は俯せに倒れていた。


そしておびただしいほどの血と傷がアヌビスの強さを物語っていた。


「貴公は何を望む?」


アヌビスはひれ伏した隼人を見下しながら言った。


「テメェ…には関係ねぇ!」


「そうか。では我の望みを教えてやろう」


「あ?」


「我の…我らの望みは王が君臨する世界だ」


また…またそのセリフか。


四年前にも聞いた話だ。

「そのテメェらの王とやらは何なんだ!?」


「王とは全てを超越した存在だ」


全てを超越した存在。


それならば王ではなく神ではないか?


「さて話は終わりだ。我らと共に王の復活を果たさないか?」


「………」


「なんなら死者転生の術を知っている人に紹介してもいい」


その言葉に反応する。


「貴公は誰かを生き返らせたいのだろう?」


「………」


その時アヌビスを氷の刃が襲う。


「ぬ!?」


剣で払い落とすと左に槍がせまっていた。


それを後ろに跳んで躱すと現われた敵を見る。


それは氷華と花だった。

「なんで…テメェら」


「なんでお前はそんなことを言う?」


敵から目を放さずに氷華が答える。


「だって私達は仲間でしょう?」

花が当たり前のように答える。

仲間。


懐かしい響きだ。


だが、もう二度と受け入れては行けない言葉だった。


俺は孤独でなければいけない。


「来るぞ」


アヌビスはいつの間にか二人の間にいた。


二人は殴り飛ばされる。

体勢を立て直すと花はアヌビスの後ろにまわっていた。


「速いな」


槍の刃がついてない場所を掴んだ。


「高速移動魔術か」


「よく分かったわね」


花は高速移動魔術と槍を合わせた戦いをする。


魔術と武術を合わせた戦いをする祓魔師は珍しくない。


ちなみに隼人と氷華は魔術をまったく使えない。

「花を放せ!」


氷華が飛び掛かる。


アヌビスは槍を放し花を蹴り飛ばし、氷華を斬りつけた。


「きゃ!」


「ぐっ!」


花と氷華は体勢を立て直す。


「氷華!」


「分かった」


氷華は氷の刃を繰り出す。


同時に花は高速移動でアヌビスの腹部に槍を突き刺した。


つもりだった。


花の腹部に剣が突き刺さる。


「そんな…」


ドサッと花は倒れる。


「花!!」


目の前にアヌビスが現われる。


「この!」


刀でアヌビスの肩を切り裂こうと振り上げる。


だが遅かった。


氷華の左肩から斜めに斬られていた。


「ぐぁぁ!」


氷華も倒れる。


血が溢れ出る。


「終わりだ」


「待てよ」


アヌビスが振り返ると隼人は立ち上がっていた。

「まだ…答えていなかっただろ」


「そうか、聞かせてもらおう」


「そんなん決まってんだろ………誰がテメェらの仲間になんかなるかよ。バカヤロウ」


「そうか、では死んでもらおう」


「ハッ、そんな簡単に殺されてたまるかよ!…本当はこんな力使いたくはなかっただけどよ」


そう言うと隼人は自分の胸に手をあてる。


「うおおおおお!」


そして黒い魔力が隼人を包む。


「なんだ!?」


黒い魔力が収まり始める。


「その姿は…この魔力は?」


隼人の姿が見える。


両腕が黒くなり、白目の部分が黒く染まり夜空に赤く浮かぶ月のように赤眼だけは変わらず禍々しかった。

その姿は悪魔のようだった。



たくさんあった傷も塞がりその禍々しい紅い目がアヌビスを見つめていた。


ふと気付くと隼人はアヌビスの顔を掴んでいた。

そしてそのまま零距離で光弾を放つ。


「ぬぅ!」


アヌビスは後ろへと吹き飛ばされるが体勢を立て直す。


さっきまでとまったく比べ物にならないくらいの威力だった。


何だ?


こいつは何なんだ?


そんな疑問を考えているうちに隼人がいない事に気付いた。


そして肩に熱い感覚が走る。


見ると全体重を乗せた刀が肩に深く突き刺さっていた。


すぐさま刀の上に乗っている隼人を剣で斬りつけようとするが、躱されてまわしげりを食らう。


アヌビスはすごい勢いで吹き飛ばされた。


「貴様…その姿、魔力、回復力…その力人のものではないな」


「そうだ。この力は悪魔龍デルトロの力だ」


「なんだと!?」


初めて驚愕の色をアヌビスは浮かべた。


「そうか。あの伝説の悪魔を…貴様が零番だったか」


「その名で呼ぶんじゃねぇ!」


アヌビスの背後に迫る。

アヌビスは剣で防ごうとしたがその剣ごとアヌビスを斬り裂いた。


血が噴水のように溢れ出る。


その血を見て、隼人は小さく笑った。


「今の我では貴様に勝てぬ」


「じゃあいつなら勝てるんだよ!」


虚勢だと思っていた。


しかし、次の言葉は隼人を驚愕させた。


「一月後だ。一月後に虚無の魔獣と術師の軍勢がここを襲う。小さな戦争だ」


「な…に?」


「そういう事だ。我は逃げるぞ」


「は!?…逃がすかよ!」


しかしアヌビスは黒いものに覆われて消えた。


「マジかよ…戦争だと?一体この街にはなにがある……んだ」


ドサッと倒れ隼人の意識が途絶えた。


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