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第六幕

その頃隼人と氷華はホールへと急いでいた。


ここからホールは少し遠いが五分もあれば着く距離だった。


「あら?やっと面白そうなのが来たじゃない〜」

目の前にピンクのボディースーツを着た髪の長い女性が立っていた。


「つまんなかったのよね〜ここにいた馬鹿共は」

そう言うと鋼鉄の鞭を取り出す。


「炎磨、先に行け」


「あ?」


氷華を見ると怒りで体が震えていた。


「あいつは私に任せろ」

確かに刹那をほっとくとやばいからな。


「分かった。頼む」


氷華は頷くと、女に向かって飛び掛かった。


女は鞭を振るう。


それを躱し女を壁に叩き付ける。


そして壁が壊れ、外へと落下していく。



それを見た隼人はホールへと向かおうとした。


しかし、視界が真っ暗になったかと思うと屋上にいた。


「な、なんだ?」


「貴様は炎磨隼人だな?」

そこには黒装束に身をまとった男がいた。


「なんだテメェ?なんで俺の名前を知ってる?」

「貴様が我らの仲間を次々と襲っていると聞いてな」


隼人は刀を構え、好奇の笑みを浮かべる。


「じゃあテメェは堕天使の宴のメンバーか」


「あぁ」


「死者傀儡の術を使ったのもお前か?」


「いや私の部下だ」


その時長い前髪で隠れていた目元が風であらわになった。


「なっ…!」


その目は両目とも縫合されていて開く事は出来そうになかった。


「なんだよ…それ」


「我は死者転生の術など知らぬ」


質問と違う答えが返ってきて一瞬怯むがすぐに正気を取り戻す。


「貴様はそれが目的なのであろう?しかしその術は我らのリーダーしか知らなかった」


「ふーん、それで見逃してもらおうと?」


「いや貴様を殺すのは惜しいと言っているのだ」

この言葉は隼人のプライドに傷をつけた。


「テメェェェ!!」


黒い光弾を打ち込む。


すかさず後ろに回り込む。

首を落とした。


そう思った時右半身に激痛が走った。


「な…に?」


刀を白刃取りされて右半身を縦に一閃されていた。


後ろに飛び退く。


「ハァ、ハァ、ハァ」


傷は深く血は止まる事なく流れている。


隼人は考えていた。


目が見えないのに何故白刃取りが出来る?


「我が名はアヌビス。心眼を持つ者だ」


「ハッなるほどなぁ!」

わざと強がり傷が深くないと思わせた。


「ちっ厄介だな」


心眼とは字のとおり心を読む目で攻撃なども簡単に読める。


「心眼の対価がその縫合された目か」


「その通りだ」


目の前からアヌビスの姿が消えた。


すると目の前に両刃剣を俺の腹部に突き刺しているアヌビスがいた。


「ぐぁぁぁぁぁぁ!」












その頃刹那はミノタウルスとアンデットの群れと戦っていた。


「オオオゥ!!」


ミノタウルスが斧を振り回す。


アンデットを掴み刹那に投げ飛ばす。


「…くっ…」


辛うじて躱すと斧が右側に迫っていた。


鎌で防ぐが、飛ばされる。


そこをアンデット達が追撃を仕掛ける。


刹那はアンデット達を斬っていくが傷が再生する。


「…死を狩る力は…もう使えない…」


死を狩る力のもう一つの対価は感情である。


使えば使うほど感情を失い死神に近付く。


だから多用は出来なかった。


しかし、敵はそんな事情があろうとなかろうと襲ってくる。


「…どうしよ…」


ギリギリで攻撃を躱しているがいつまでももたない。


「しょうがない…よね」

そう言うと立ち止まった。


「なんだもうあきらめましたか」


ジリジリとミノタウルスとアンデット達は距離を詰める。


刹那は鎌を床に突き刺した。


「地に眠る亡霊、怨念、死人よ。わらわの前に立つ愚か者共を食い散らかしたまえ」


刹那の口調が変わった。

すると異変が起きた。


床から亡霊のようなプラズマ体やボロボロの衣服と骨だけの何かが這い出てきた。


「ゆけ」


刹那が命令するとそれらが動き出した。


その数ざっと百程度。


「ヒャヒャヒャ!」


と笑いながら死人達がミノタウルス達を襲う。



グチャグチャとグロテスクな音を響かせ死人達がミノタウルス達を食い殺していく。


「な、何なんだこれは?これも死神族の力か?」

目の前にはこの世の物とは思えないような、まさに地獄絵図が広がっていた。


「わらわには死を狩る力と死人を操る力がある。こちらの方も寿命を対価にしなければならぬから使いたくはなかったんだがの」


話終わる頃には全ての敵を食いつくしていた。

「ひっ!来るな!」


ダラダラとよだれを垂らしながら近付いていく。

「さらばじゃ。名も知らぬ召喚師よ」


そう言うと死人達は飛び掛かった。












金属音が鳴り響く。


庭のような所に落ちた氷華達は激戦を繰り広げていた。


「いいわねぇ〜。あなた名前は?」


「下村氷華だ」


「あなたが十大貴族の下村家の…。面白いわ。私の名は水沢ライラ。あなたを殺す女よ!」


鞭をしならせる。


ビュンビュンと鞭が氷華を襲う。


それを刀で防ぐ。


しかし刀に鞭が巻き付く。

そしてすごい力で引っ張られ、水沢のほうに引き寄せられる。


腹部に引き寄せられた勢いを利用した拳が当たる。

「ぐっ!」


氷華は吹き飛ばされ木にぶつかる。


木はメキメキと音をたてて倒れる。


なんて馬鹿力だ、と心の中で思いながら敵を見る。


「最初から本気でいくわよ〜」


そう言うと鉄製の鞭を両手に持つ。


「ほら避けられる?」


二つの鞭が氷華を襲う。

ただでさえ鞭は軌道が読みにくい。


防ぎきれずに脇腹に鞭が当たる。


「うっ!」


このままでは不味い。


リーチが違いすぎる。


なら。


刀を振るう。


氷の波が敵を襲う。


「その程度?」


鞭を前方で回して防ぐ。

そこにガラ空きになった後ろに回り込み斬りかかる。


だが紙一重で躱され、思い切り蹴飛ばされる。


そしてプールに突っ込む。


辺りに雨のように水が飛び跳ねる。


「もうつまんなーい」


プールを見つめる。


すると、プールの水が盛り上がり柱のようになった。


その上に氷華がいた。

「私の能力は水と氷を操る力。これだけの水が全て私の手足よ」


そう言うと水は凍り始め水と氷が混ざりあったようになっていた。


「終わりだ」


柱が水沢を襲う。


そして辺り一帯が凍りついた。


「さてホールへと急ぐか」


全速力でホールへと走り出した。

氷華がホールに入るとそこは肉片が飛び散り、真っ赤な血で床が染められていた。


そこの場所で刹那が倒れていた。


「刹那!」


そばに近寄ると虚ろな目をしていた。


「…疲れた…」


あれだけの力を使ったのだからそうなるのも無理はない。


しかし氷華はそれを知らなかった。


「どうした!?敵にやられたのか?」


「敵は…倒した…」


指を指した方向を見るとそこには衣服だけが残されていた。


「そうか」


ほっと一安心した時、


「危なかったですよ」


壁の中から現われたのは倒したはずの召喚師だった。


「なんで…」


「あなたが倒したのは私に似せたアンデットです」


そう言うと指をパチンと鳴らす。


するとまわりにアンデット達が溢れ出す。


さっきの数より多かった。


「私の秘蔵コレクションまで使う事になるとはね」


氷華は刀を構える。


本当はあの少年の所へ加勢しに行きたかった。


少年の魔力がドンドン小さくなっているのを感じる。


そして敵の魔力の巨大さも。


早く終わらせて加勢しないとまずい。


「ちょっと待った」


「ここは私達がやるわ」

そして現われたのは花と正一だった。

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