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第五十幕

「ここが?」


「そうよ、地獄と現世の狭間に存在する場所。つまりここに虚無の本拠地はあるわ」


辺りは中世の西洋のような光景が広がっていた。

「家もある…」


ボソッと氷華が呟いた。

確かにあちらこちらに家らしきものがある。


誰か住んでいるのか?


住んでいるとしたら当然そいつらは…


「魔獣も家をたて住んでいるのよ。でもこっちから襲いかからなきゃほぼ襲ってこないから」




やっぱり魔獣だったか。

「あれが目的地のアジトよ」


丑乃宮が指を指した方向を見ると俺達は唖然とした。


その方向には巨大な、ものすごい馬鹿でかい城が建っていたのである。


てっぺんが雲に隠れて見えない…。


「行くわよ、時間がないんだから」


「はい」


丑乃宮と氷華はスタスタと歩き始めた。


そして真下に着くともうそのデカさ鮮明に伝わった。


「いい?あなたたちの任務は神童の奪還よ。無駄な戦いは控えなさい」

俺らがうなずくと丑乃宮は壁を破壊して中に入った。


まぁ何故壁を壊したかというと敵がのこのこ入口から入る必要はないという丑乃宮の意見だ。


まぁごもっともだかな。

中に入った瞬間あちこちで大小様々な魔力の激突が起きていた。


「これじゃあ美子の魔力を探って場所を見つける事は出来ないな」


氷華がそう言った瞬間、

「神童は最上階近くにいるわ」


丑乃宮がそう言った。


「なんで分かるんだよ?」


「この中で一番純粋で小さな魔力を探ったのよ」


今氷華が不可能だと言った事を簡単にやってのけてしまうところが流石ベルセルクNo.1といったとこか。


「私が先頭を行く。ついて来い!」


丑乃宮を先頭に走り出す。


前方には物音を聞き、やってきた魔獣で溢れかえっていた。

「はぁっ!」


次の瞬間前方にいた魔獣たちが真っ二つになった。

「すげぇな」


「あぁ」


俺と氷華は感嘆の声をあげた。


一瞬で大量の魔獣たちが細切れになっていく。


俺達はすごいスピードでフロアを走っていたが、突然丑乃宮が立ち止まった。


「どうやら私が送ってあげられるのはここまでのようだ」


「え?」


次の瞬間青白い炎の球が眼前に迫っていた。


それを丑乃宮が刀でかき消す。


「ほう、なかなかやりおる」


そこに現われたのはスミレだった。


「先に行け!」


丑乃宮に言われた通り俺達は全力で走り始めた。

だが、スミレは目の前にまわりこんでいた。


「わらわが逃がすとでも?」


「邪魔よ」


丑乃宮の蹴りがスミレの顔面に直撃した衝撃でスミレが吹っ飛んだ。


俺らはその隙にその場から立ち去った。


丑乃宮は一息ついた。


ズシャ!


スミレの尻尾が丑乃宮の頬を抉った。


(あと一瞬反応が遅かったら死んでた)


丑乃宮の額に冷や汗がツーと流れる。


「勝てないかもね」


「今更もう許す気はないぞ」


スミレは尾を四本出していた。

丑乃宮はその場で刀を振る。


するとものすごい暴風がスミレを襲う。


そして風がやんだ時目の前にいた丑乃宮の姿が消えていた。


ガキーン!


丑乃宮は上から攻撃を仕掛けたが、スミレの尻尾で防がれた。


スミレは他の尻尾で反撃をする。


尻尾と刀がぶつかりあう度にけたたましく金属音が鳴り響く。


そして丑乃宮は一旦距離をとった。


「どうした?その程度か?わらわはまだ傷一つないぞ?」


「そうね。じゃあそろそろいくわよ」


次の瞬間スミレの頬が切れ血が流れだす。


「あなた尻尾が四本あるから自分有利だと思ってたかもしれないけど私はこの空気全てが武器だから」


「風、か」


丑乃宮が刀を振るとスミレを無数の風の刃が前後左右上下から襲いかかる。


ズシャ!と肉が裂ける音が生々しく聞こえる。


丑乃宮が勝利を確信した時突然風の刃がかき消された。


「なっ!?」


スミレの尻尾は九本になっていた。


「頼むからすぐには死んでくれるな」


次の瞬間丑乃宮の体は吹き飛んでいた。


「がはっ!」


そのまま宙に投げ出される。


そしてスミレはさらに追い討ちの蹴りを食らわせ丑乃宮は下に叩き付けられる。


「狐火『風車』」


さらに丑乃宮に青白い炎が直撃する。


「死んでしまったか?」

スミレが地面に着地した瞬間、いたるところの皮膚が裂け血が噴き出した。


「いつ?まさか…貴様…」


「はっ、はぁ、はぁ、今のは危なかったわね」


丑乃宮は攻撃を食らいながらも目に見えないほどのスピードをスミレを斬りつけていた。


「面白い」


スミレの妖力がますます高まる。


「久しぶりじゃ、この高揚感。さぁ!もっと殺しあおう!」


「とんだ変態ね」


そして再び刀と尻尾がぶつかりあう。


お互い体を斬られても一瞬もひるむ事もなく斬りあい続ける。


「ハハハハハハ!」



「くっ!」


お互いの血が飛び散り体中が真っ赤に染まっていく。


「どうした?もっとわらわを楽しませろ!」


九本の尻尾が丑乃宮のまわりを囲む。


「はぁ!」


全ての尻尾を受けきりスミレの背後に回り込む。

スミレも振り返り、右手を突き出してきた。


丑乃宮の刀がスミレの肩を抉り、スミレの右手が丑乃宮の腹を貫いた。


「ぬっ!ハハハハハハ!」


「くっ!」


目の前で狂ったように笑うスミレを見て丑乃宮は僅かながらに恐怖心を持ってしまった。


「どうした?恐いか?」

「しまった!?」


丑乃宮は青白い炎に包まれた。


「ああああ!」


「戦闘ではその一瞬の隙が命取りになるぞ!」


九本の尻尾が丑乃宮に直撃し、彼女は吹っ飛んでいった。


「もう終わりか?」


「はぁ、はぁ、はぁ」


スパッ!


「?…何じゃ?」


スミレの首筋に浅い切り傷が出来た。


室内に風が吹き始める。

「風を操る術師か…」


「余力を残しておきたかったんだけどそんな余裕もないものね」


丑乃宮の刀に膨大な風が集まる。


「一撃で決める」


「良かろう。わらわも迎え撃とう」


青白い炎がスミレの尻尾を包む。


「終わりだ!」


「狐火『朧』」


お互いの最高の技がぶつかりあい大爆発を起こした。


まわりの壁が吹き飛び天井が崩れ落ちて行く。


その時煙から丑乃宮が飛び出し、スミレに向かって走り出した。


「惜しい。わらわのほうが一歩早かったの」


しかしスミレは既に丑乃宮の目の前に迫って右手の手刀が丑乃宮の胸を貫く寸前だった。


ズシャ!


辺りに肉を裂く音が響いた。

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