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第四幕

今、金色の悪魔と白い死神は下村家にいた。


刹那の方はたくさんあるご飯をがっついて食べている。


隼人の方もガッツガッツと食べている。


「いや〜よく食べるね〜」

とキッチンから顔を出したのは魔術師の川島正一だった。

見た目は二十代半ばの優しそうな青年だ。


「つーかなんでお前ら応援に来なかったんだ」


食べ物を噛みながら隼人が問いかけてきた。


「いや私は気付くのが遅かったし…」

と俯きながら花は答えた。

あれだけの魔力が激突していたのに気付かなかった自分が恥ずかしいのだろう。

「僕は気付いていたけど戦闘向きじゃないしね〜」

「正一はどちらかと言うと治療や防御などの後方支援向きで戦闘は苦手だ。」と氷華が補足する。

「そっちだって刹那ちゃんを連れていかなったじゃん」

正一が問い返す。


「黒野との…戦いは…はやとの個人的な戦い…私…には関係ない…から…」

口と手を動かしながら刹那が答える。


「それにしても隼人君、君の傷の治り早過ぎないかい?僕の見込みでは早くても五日はかかると思っていたんだけど…」


確かにあの戦いからまだ三時間しかたっていない。

なのにもう傷はふさがっていた。


「…関係ねぇだろ…」


そう言うとまた食べ始める。


「まぁいいじゃない!そんなこと」


重くなった空気を吹き飛ばすように花がフォローに入る。


そんな風に平和な食卓を特Sランク級の指名手配犯と過ごした。







食事後、炎磨隼人と刹那はリビングでゴロリと寝ていた。


二人ともさっきの食事風景と違い、上品に寝ている。


花と正一は食事の片付けをしていた。

私はこの二人の見張りという名目でテレビを見ていた。

テレビではあまり面白くなく品のない芸人が漫才をしていた。


「なんだこいつらは全然面白くないじゃないか」

「確かに品もないし―って」


声のした方を見ると机の向かい側に私の父下村玄三が座っていた。


「なんで父様がここに…」

「いや、仕事でここらへんに来ていてな。そしたら特Sランク級の指名手配犯がいるという事を聞いてな。急いで様子を見に来たんだ」


まぁ大丈夫だったみたいだなと続けて大声で笑う。

私の両親は世界でも最高峰の術師だ。

私の父下村玄三は教団のベルセルクという最強戦闘集団のNo.2だ。


ちなみにベルセルクというのは十三人で構成されている。

つまり戦闘のエリートしか選ばれないという事だ。

ちなみに母の下村零華は教団の枢機卿という高位の役職に就いている。

ちなみに枢機卿の役職は三人しかいない。



私には六つ年の離れた兄がいたが、四年前に他界。


私の家族はバラバラだがたまに父様が遊びに来てくれたり、母様も電話をしてくれたりしてくれるので寂しくはない。


「で、こいつらはどういう事だ?」


玄三がいきなり真剣な顔つきになる。


「なんでここにいるんだ?」


その真剣な顔つきに一瞬戸惑ってしまう。


「私は…そいつらを極悪人だと思っていない!だから治療し、家へと招入れた!」


玄三の迫力に負けないためにわざと大声を出した。

すると台所にいた正一と花もやってきた。


「玄三さん!?」


正一は驚いたのか襟足をいじくりまくる。


「え!?おじさんいつ帰って来たの!?」


花も驚きを隠せない。


「よ。久しぶりだな〜」

さっきとはうってかわってお気楽に挨拶をする。

「な、なんで…アンタが…」


その声は私の声で目を覚ました炎磨隼人だった。

「よぉ、起きたみたいだな。寝起きのところ悪いけどちょっと付いて来てくんねーか?」


父様は炎磨と一緒に地下へと行ってしまった。


「氷華ちゃん地下って…」


「あぁ特別訓練所だ…」

下村家の屋敷の地下には核シェルターにも匹敵するほどの頑丈さをもった訓練所がある。


そんな所で炎磨を連れて父様は何をする気なんだ。


「氷華!行こっ!」


花が階段を下りていく。

私達も後に続いて、階段を下りていった。


その頃刹那は一人何も知らずに爆睡していた。









いきなりトップレベルの術師の下村玄三が現れるとは予想外だった。


ちっ!と心の中で隼人は舌打ちをした。

ここで捕まるわけにはいかねぇと思っていたが、付いて来いというのは地下に来いって事か?

こいつは許せない。


こいつをいつか殺す。


だけど今はまだ勝てねぇ。

「着いたぞ」


ハッと気付きまわりを見渡すとそこは広い道場だった。

地下なのに明るく、息苦しさを感じない広さだ。

「こんなとこに連れてきてどうする気だ?」


「俺と戦え」


その言葉は一番聞きたくなかった。


「大丈夫だ。いくら暴れても壊れないようにしてある」


「ちっ!やるしかねぇみてぇだな」


刀を取り出して構える。

「どうした?構えろよ!!」

玄三は武器も出さずに突っ立っている。


「いや俺はこのままでいい」


その次の瞬間隼人は玄三に刀を振り下ろした。


しかし手応えはなく玄三は刀の上に立っていた。

「開始の合図もなしに攻撃するなよな〜」


笑いながら隼人の右頬に蹴りを入れる。


それを右手で防いだ。

つもりだった。

隼人は壁に叩き付けられていた。


「ぐぁ!」


口の中が鉄の味がする。

ちっ何発食らった?


三発?


いや六発か。


玄三は右頬ではなく右腹部をあの一瞬で六発も蹴っていた。


すかさず刀に魔力を込める。


「死ねぇぇぇ!!」


振り下ろし、黒い龍が玄三に向かって飛び出す。

凄まじい爆発音がした後またもや刀に魔力を込める。


魔力のチャージが終わるまで、右手を前に突き出し、手のひらから黒い光弾を連発する。


「跡形もなく消えろー!!」

刀を振り下ろし、黒い龍がさっきよりも巨大になって再び襲いかかる。


またもや凄まじい爆発音と煙が起こる。


「ハァ、ハァ、ハァ、これなら…手傷は負わせただろう…」


肩で息をしながら煙を睨み付ける。

「父様!父様ー!」


「大丈夫だ。玄三さんを信じるんだ」


何時からいたのか知らないが、ギャラリーまでいる。


やがて煙がはれ始める。

そこに玄三の姿はなかった。


「ちっ、どこに行きやがった!」


まわりをキョロキョロと見まわしていると目の前がクルクルと回り始めた。

何だ?と認識する前に隼人の体は吹っ飛んでいた。

「ぐはぁ!くそっ!」


なんとか体勢を立て直す。

そして、玄三を睨み付ける。


「な、なんで…テメェ…無傷なんだよ!」


そこにはまったく傷も服に汚れもない玄三が居た。

「くそっ!くそっ!くそっ!くそっ!!」


玄三の首をはねようと切りかかる。


しかし刃が当たっている筈なのに首の所で刀は止まっていた。


「な、なんで…」


「終わりだ」


その瞬間腹部に激痛が走る。


メキメキという音が鳴り響く。


「ぐっ、ゴホッゴホゴホッ!」


血がネチャネチャと口から流れる。


「強くなったな…」


玄三が呟く。


「お前には言わなければならない事がある。…すまなかった」


玄三が頭を下げる。


「お前が闇に堕ちたのは俺の責任でもある。それにお前虚無に一人で復讐する気だろ?」


俺は黙ってうなずいた。

今さら謝ったからって何になるんだ。

失くしたものが戻ってくるとでも言うのか?


「だからお前教団に入れ」


「な!何言ってんだ!俺は指名手配犯だぞ!それにテメェらとつるむ気はねぇ!」


「だが、お前一人じゃあいつを倒す事も出来ない」


「………」


確かに俺一人で虚無に挑むのは無謀過ぎるのは自分でも分かっていた。


「分かった…頼む」


目的を果たせるのなら何でも良かった。


「あぁ。話は終わりだ。ゆっくり休め」


「あぁ」


「よし、皆行くぞ」


そう言うと玄三は上に行こうとした。


「父様!でも…」


「いいんだ。今は一人にしてやれ」


そう言うと納得してないようだったが玄三に皆付いて行った。



隼人は一人になった。


負けた。


俺は負けちゃ行けない筈だった。


だが今日二度も負けた。

一回目は自力で勝っていた相手に。


二回目は手も足も出ないで。


弱い。


俺はなんて弱いんだ。


背負っているものがあるのに。


まだ俺にはチャンスがある。


だから俺は進もう。


チャンスがない奴なんて沢山いる。


俺は進まなきゃいけないんだ。


チャンスを掴み取るために。


あいつを…殺すために。

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