第三幕
金属音が鳴り響く。
お互いの刀と刀がぶつかりあう。
下村氷華と炎磨隼人が生死をかけた戦いを繰り広げていた。
氷華が隼人の顔に突きをする。
それをかがんでかわす。そして隼人が足払いをする。
氷華が跳んで躱した所に下から上へと振り抜いた。
「くっ!」
それをかろうじて刀で防ぐ。
「それで防いだつもりかァ?」
氷華の体が吹き飛ばされ後ろのビルに激突した。
ビルの中にまで吹き飛ばされた氷華はまわりにたくさん人がいる事に気が付いた。
「だ、大丈夫ですか?」
OLらしき女性がはなしかけてきた。
「怪我してるじゃないですか!」
「いや大丈夫だ。いいから早く逃げてください!」
前方の敵を見た。
すると隼人が手を前に突き出しているのがわかった。
「逃げろー!」
氷華は大声をだす。
しかし、まわりの人たちは状況を把握出来てないらしく動かない。
次の瞬間黒い魔力がビルを襲った。
「ヒャァァハ死ね死ね死ね死ね!」
黒い光弾をビルが崩れるまで撃ち続けた。
無残にも残骸へと変わったビルに近付いていった。
「おいおいこんなんで死んだんじゃねぇだろーなァ!」
瓦礫に向かって話かける。
するとまわりの瓦礫が吹き飛んだ。
その中心で氷のドームがあった。
氷が崩れると中から少女と複数の人たちが現われた。
「氷のシールドで防いだのか。まぁあんなんで死んだら拍子抜けだけどな」
ここで隼人は気付く。
まわりの温度が急激に下がっている事に。
そういえば下村は氷を操るのが得意とか聞いた事がある。
と呑気に考えていたら氷華が口を開く。
「救えなかった…皆死んでしまった」
泣いている?
俺を…敵を目の前にして泣いているだと?
なんで泣いている?
名門下村の一人娘と言ってもこんなものか。
普通の術師は戦闘中に泣くなどのすきを見せるわけがない。
「許さない…」
彼女を見るとそこには姿はなく、左側にいた。
刀が振り抜かれる。
隼人は刀でそれを防ぐ。しかし、刀が凍りつき始めた。
「ちっ!」
後ろに跳ぶ。
距離を一旦とった。
(さっきと動きが違うな)
さっきとは違う迫力がある。
これが何かを守ろうとする力。
氷華が刀を振る。
氷の塊が隼人を襲う。
それを刀で振り落とす。そして、一気に間を詰める。
脳天を切り裂こうと刀を振り下ろす。
しかし、刀で防がれる。隼人はガードがガラ空きになった腹部に蹴りをくりだす。
だが、くの字に体を折り曲げ蹴りをギリギリで躱す。
すかさず刀に力を入れる。
ただでさえパワーの差は大きいのに不十分な体勢では防げるはずがない。しかし氷華は押しつぶされなかった。
隼人が刀に力を入れたのと同時に受け流し、肩を切り裂いた。
「ちいっ!」
たまらず後退する隼人に氷華は追い討ちをかける。
その剣撃を防げずに体をドンドン切り裂かれていく。
「ハァ、ハァ、クソっ!」
一つ一つの傷は浅くなく血が止めどなく溢れだす。
「これで終わりだ」
氷華が刀を構える。
まわりの冷気が刀に集まり始まる。
「死んだ人の命貴様の命をもって償え!」
刀を振り、三日月状の氷の斬撃が隼人を襲う。
ドーンという爆発音が鳴る。
終わったとそう思った瞬間煙の中から刀が現われる。
「くっ!」
肩口を深く切られ血が流れだす。
「よぉ、終わったと思ったか?」
氷華は目を見張った。
「金色の悪魔…」
煙の中から現われた彼はまさにその言葉がピッタリだった。
「何故…私の最強の技を受けて…」
「テメェに最強の技があるように俺にも最強の技があんだよ!」
そう言って刀を振り上げると刀から黒い魔力が溢れだす。
「今度はテメェが死ねよ」
今度は黒い龍が氷華を襲う。
とっさに氷のシールドを最大出力で展開する。
「くっ、きゃぁぁぁ!」
街ごと氷華が吹っ飛ぶ。
直線状の建物が瓦礫と化す。
「ちっ流石にこの技は魔力を消費し過ぎるな…」
肩で息をしながら呟く。
今度こそ帰ろうと思った時、雪が降っている事に気が付いた。
(雪だと!?有り得ねぇ!今は五月だぞ!!まさか…)
もう一度瓦礫の方に目を向けると、そこには青い着物に赤い斑点が出来ている少女が立っていた。
「おいおい…いい加減しつけぇぞ…」
この時隼人は少し恐怖を感じていた。
自分の最強の技をあんな近くで受けてまだ自分の目の前に立っているたった一人の少女に。
「私の技にパワーがたりなければ足せばいい。私にはこの大気中の水全てが武器だ。」
そう言うと全ての冷気が刀に集まり始める。
「ハッ!打ち砕いてやるよ!!」
全ての魔力を染め写しに込める。
「行くぞ」
「来いよ!!」
そしてお互いの技がぶつかりあう。
ドゴーンと凄まじい爆発音が広がる。
やがて煙がはれ始める。
「なんで、テメェ立ってんだよ…」
そこに立っていたのは氷華だった。
隼人ははいつくばっている。
「当たり前だ。私はこの街を守らなければならない。だから負けるわけにはいかない!」
「クソっ!」
氷華が刀を杖替わりに使いながら歩いてくる。
やばい。
殺される。
いやだまだ死ぬわけにいかねぇ。
まだ俺にはやる事があるんだよ!
死ねねぇ!
くそっ来るな来るな!!
氷華が目の前に現われた時に死を覚悟して、目をつぶる。
「よっと」
体が持ち上がるような感じがする。
疑問に思い、目を開ける。
「テメェなにしてやがる…」
目を開けると氷華が隼人を背負っていた。
「ん?私の知り合いに治療が得意な奴がいるんだ」
さも当たり前のように答える。
「だからなんで俺を背負ってそいつの所に連れて行くのかって聞いてるんだよ!」
つい声を荒げる。
「貴様はそこまで悪い奴じゃないと思ってな…」
「なんでだよ!街の人を無意味に殺したんだぜ俺は!!」
「いや貴様はあのビルに私が突っ込んだ時、最強の技とやらを使わなかった。私を殺せるチャンスだったのに。しかもここらへんは開発し始めた場所でほとんど人がいない。貴様は無意識に人を巻き込まないようにしてたんだよ」
「ふざけんな!そんなわけねぇ!俺はまわりの奴等なんて気にしないでやっていたんだよ」
「もういい。私が治療したいと思ったから治療する。それだけだ」
何なんだこいつは?
俺は敵だぞ。
なんで敵を助ける。
わけわかんねぇ。
けど、懐かしい暖かさがそこにはあった。
「遥…」
ボソッと無意識のうちに呟いていた。
「ん?もう初夏だぞ?」
どうやら聞こえていたらしい。
だが勘違いをしていたおかげでなんとかごまかした。
彼女は納得してないようだったが、そこで話は終わった。
そこに花が現われた。
背負われている隼人を見て、
「離れて氷華!今度こそ!」
花は槍を構える。
「いいんだ、こいつは連れて帰って治療する」
「え!何言ってんの氷華!!」
そりゃあ驚きだろう。
あの悪名たかい金色の悪魔を連れて帰ると言うのだから。
「大丈夫だ」
何を根拠に大丈夫だと言っているのだろう。
「はぁこうなったらもう無理か。仕方ないどうなっても知らないわよ」
花もあまりの頑固さにあきらめたようだ。
その時後ろから殺気を氷華は感じた。
振り向くとそこには白い死神がいた。
「はやとを返して…」
小さくて聞き取りづらかったが、かろうじて聞こえた。
「怪我をしているんだ。お前も来るか?美味しいご飯も用意するぞ?」
俺は心の中でこいつらを殺して俺を連れて帰れと思っていた。
しかし、トコトコと後ろからついていく所を見てあきらめた。
「…いく…」
結局連れて行かれる事は決定してしまった。
俺は思った、めんどくせぇと。




