第二幕
あの二人に襲われてから一週間が経っていた。
あの時の傷は治り、元通りの生活に戻り始めていた。
(黒野学か…調べてみるか…)
私は市立図書館に向かう事にした。
図書館の地下には様々な本がある。
しかし、その量は多く一つ一つ調べていくと百年はかかってしまう。
そこで図書館にあるパソコンを使う。
ここでは膨大な情報の中からキーワードを入れるだけで知りたい情報が知る事が出来る優れものだ。
さっそく黒野学の事を検索した。
「えーと…なんだこれは…」
そこに書かれていたのは黒野学という人物は元は教団の人間で様々な人体実験を繰り返し、自らも人体実験の実験体となり、教団から指名手配された。
その後、第一研究所に所属していたが、二年後、『堕天使の宴』というグループに所属した。
『堕天使の宴』は虚無の配下のグループで様々な禁忌の術を開発していた。
人を魔獣に変える術。
時を操る術など様々な術が開発されたが、どれも未完成であった。
しかし、一つだけ完成したと言われる術があった。
死者転生の術だ。
しかし、『堕天使の宴』は解散してしまい、その方法を知っているのはそのメンバーだけである。
そう記されていた。
「なるほどな…」
おそらく黒野学を狙っている理由は第一研究所に関わっていたからだと、自分の中で結論付けた。
「よし、帰るか」
この後控えている花との約束に遅れてはいけないので、急いで家へと向かった。
その頃、街の中心では炎磨隼人と黒ローブの男が対峙していた。
「テメェが黒野学か?」
「いかにも、貴様は金色の悪魔だな?白い死神はどうした?」
そう言ってフードをはずした。
何処にでもいる中年の男だった。
「死者転生の術について教えろ」
「嫌だと言ったら?」
相手が剣を構える。
「ハッ!決まってんだろ!」
刀を取り出す。
「力づくで聞き出すまでよ!」
その瞬間、一気に黒野の目の前まで詰める。
黒野が俺の刀をかわす。一旦、間をあけられる。
「その刀、神具だな?」
「それがどうしたよ?」
金属音が鳴り響く。
お互いの剣術がぶつかりあう。
「染め写しか…」
染め写し。
使い手の心に呼応して力を発揮する対魔の剣。
「禍々しいな…私以上の禍々しさだ。貴様何者だ?」
「これから殺される奴に教える必要ねぇよ!」
刀を右に振り抜く。
黒野の右頬を抉り、血が溢れ出した。
「ふん、まぁいい。それなら何も聞かずに殺してやろう」
そう言うと異変が起こり始めた。
黒野の体がボコボコと変形し始めた。
「これが私の本当の姿だ…」
黒野の姿は犬型の魔獣の姿に変化した。
「なっ!…テメェ!その力を何処で手に入れた!?」
黒野が第一研究所に居たのは知っている。
だが、そこで何の研究をしていたのかは、知らなかった。
「これは私が開発した力だよ」
黒野は驚いた隼人を見て自慢気に話始めた。
「教団に居た頃から私は人間に魔獣の力を移植するという開発をしていた。しかし、それは禁忌だ。私の研究がバレそうになったときに第一研究所からオファーが来た。最強最悪の術師を造るから君の力が必要だ、ってね」
それを聞いた瞬間に隼人はぶちギれた。
「そうか…」
「驚いたか?人間が魔獣の力を得ている事が!」
黒野は高らかに笑い出す。
「たかが魔獣の力を得たぐらいで調子のってんじゃねぇよ!」
その迫力に黒野の笑いが止まる。
隼人の紅い目が黒野を睨みつける。
「もういいや…お前いい加減死ね…」
その次の瞬間黒野の右腕が吹っ飛んでいた。
「ぎゃああああ!」
誰もいない街に悲鳴がサイレンのように響き渡る。「クソ!クソっ!クソがぁぁぁ!!」
口をあけるとそこから魔力の光線をはきだした。
「ハッ!」
それを難なく右手で受け止める。
「な…何なんだ貴様は!何者なんだ!」悪魔のような笑みを隼人は浮かべた。
「そうだな…最後だから教えてやるよ。俺の名前は……炎磨隼人だ!」
「なんだと…!貴様…実験番号零番か!クソっ!本当の化物は貴様の方だったか…」
完全に戦意を無くしたのか、地面にガクリと膝をつけた。
「テメェにも俺の痛み…少しでも味あわせてやるぜ」
恐怖。
黒野は今絶対的な恐怖にかられていた。
隼人が黒野の前に立つと残りの左腕を切り落とした。
「ぎゃあああああああ!!」
血がスプリンクラーのように溢れ出す。
返り血を浴びた隼人は満足そうに笑みを浮かべる。
「うわぁぁ!いやだ!たすけてくれー!」
残った足で黒野は逃げたした。
隼人は人差し指を黒野に向けると指から黒い魔力のレーザーが出て、黒野の足を貫通する。
「ぐわぁ!」
たまらず地面に倒れる。
しかし、うつぶせになりながらも這いつくばって逃げようとする。
「ハッ無様だな!!……もういいか…飽きたし、一思いに殺してやるよ」
刀を振り上げる。
離れた所で這いつくばっている黒野に標準を定める。
振り上げていた刀に黒い魔力が集中する。
刀が黒く光だす。
「死ねよ」
隼人が刀を振り落とすと大きな魔力の黒い龍が黒野を襲う。
「やめ…ぐわぁぇぇぁぁー!!!」
黒野は跡形もなく消し飛び、その先の建物までも消し飛んでしまった。
「あーあ、あいつムカつくからちょいやりすぎたわ。結局術の事聞くの忘れてたわ」
そして、帰ろうと後ろを振り向いた時、目の前に青色の着物を着た少女下村氷華がいた。
「なんだテメェか…何のようだ?」
「あれは貴様がやったのか…」
黒い龍のせいで地獄と化した街を指差しながら問いかけてきた。
「あん?あぁ俺だよ。それが?」
わざと挑発するように言ってみせた。
まだイライラが収まってない隼人はこの少女とも戦って殺そうと思っていた。
「何人の人が死んだと思っているんだ…」
少女は顔を俯かせている。
「ハッ知らねぇよ!…虫けらが何人死のーがな!」
その言葉を少女が聞いた途端顔上げた。
その表情は怒りに満ちていた。
「人の命を何とも思わない奴は最低のクズだ!」
その言葉に隼人が反応する。
その言葉はあの時青い髪の少女に言われた言葉だった。
その少女と氷華の姿が重なる。
「気に入らねえんだよ…」
刀を構える。
「貴様は今度は殺す!」
同じく刀を構える。
沈黙が広がる。
そして、街の時計が十二時を知らせる鐘を鳴らした時お互いが激突した。




