第三十六幕
激しい金属音が響き両者一歩も引かない戦いが繰り広げられていた。
「どうしたの?その程度?」
まだまだ余裕の表情を見せるセリアに対して先ほどのダメージもある刹那。
長期戦になればなるほど刹那には不利だった。
「………」
刹那もその事を分かっていてさっさと決着をつけようとしている。
しかしそうなるとやはり攻撃が大振りになる。
セリアは鎌を躱し下に潜り込み右の鎌を振り上げた。
「……っ!……」
左肩を抉られ苦痛の顔を浮かべる刹那。
一方セリアはますます嫌な笑みを浮かべた。
そのまま二人は舞台の上を高速移動し始める。
一般人には見えないほどのスピードでただ金属がぶつかりあう音しか聞こえない。
だが、セリアの鎌は確実に刹那を痛め付けていた。
セリアの鎌は小型で小回りが効く分攻撃の出が早い。
どんどん刹那に傷が出来ていく。
すると二人の動きが止まった。
「ホントにこの程度なの?」
「……はぁ…はぁ…」
「……ふざけないでよ…この程度の奴にお父さんとお母さんが殺される筈がない!!」
「………わかった…これから…見せる…私の力…」
そう言うと刹那は光に包まれた。
「やっとだわ…これで復讐を果たせる!」
やがて光の中から黒オーブをきた刹那が出てきた。
「行くよ」
次の瞬間セリアの左腕に苦痛が走る。
見ると血が飛び散っていた。
「速いわね」
セリアも負けじと応戦する。
再び二人は激しくぶつかりあう。
すると刹那が急に後ろに下がり距離をとった。
「どうしたの?本気といってもやっぱこの程度?」
「まだ力が足りない」
刹那が地面に鎌を突き刺すと地面から煙が出てきた。
そしてその煙が刹那の体に取り込まれて行く。
「何…してるの?」
「私の体に死霊を取り込んでいるの」
「は!?あなた正気!?そんなことしたらあなた逆に取り込まれるわよ!」
やがて白い煙は全て刹那の体に取り込まれ刹那は白いオーラを纏っていた。
「死神の力って何!?口調も変わるしそんなこと出来るなんて……」
「死神族の能力は二つ。死を狩る力と死霊を操る力。そして私にはもう一つ。死霊との融合」
「……あなた人じゃなくなるわよ」
「……」
セリアは返事を待たずに飛び出す。
そして油断していた刹那の後ろに回り込み首を落とす。
首が落ちたのを見たセリアはニタァと笑った。
「それは残像よ」
しかし刹那はしゃがんで攻撃を回避していた。
あまりの速さに残像が出来るほどだったのだ。
そして刹那はセリアの腹に拳を振るう。
メキメキとアバラが折れる音をたててセリアの体が吹き飛ぶ。
「きゃあああ!」
そのまま壁に激突して勢いが止まった。
そしてセリアはすぐに立ち上がってまた刹那に向かって走り出した。
三度鎌がぶつかりあう。
しかし今度はセリアに余裕などなく、完全に形勢は逆転しており人外の力を使っている刹那にむしろよく食らいついてる方だった。
「はぁ、はぁ、なんでアンタ死を狩る力使わないの!?」
「………」
セリアの体は傷だらけだがどこかが動かなくなったという事はなかった。
「必要ないから」
そしてその言葉はセリアのプライドを傷付けた。
「あ~そう。わかった。次で最後にしてあげる」
二つの鎌に巨大な魔力が集中する。
そしてセリアは空中に跳ぶ。
「加速、加速、加速、加速、加速、加速、加速!!」
セリアはそのまま空中で加速魔法を使い回転し続けている。
その意味を即座に理解した刹那は鎌に死霊を集め始めた。
セリアはあのまま自分を巨大な魔力の弾丸として放つ気だった。
それを迎え撃つために鎌に全ての魔力を注ぎ込み時間が許す限り死霊を集めている。
「死ねぇぇぇぇぇ!」
セリアはこっちに向かって加速魔法を発動した。
こっちに向かいながらも加速し続ける弾丸は音速楽に超えていた。
「はぁぁぁ!」
刹那は魔力の集中により刃の部分が巨大化した鎌を振るう。
そしてお互いの技がぶつかりあい一瞬拮抗した後大爆発を起こした。
ものすごい風圧が観客席まで襲う。
俺らは大丈夫だが、肉体強化が出来ない正一は必死に椅子にしがみついていた。
やがてものすごい爆風がやみ、舞台の煙が晴れる。
舞台の上ではセリアが立っていた。
そして片膝をついている刹那を見下している。
「私の負けだわ」
それを口にしたのはセリアの方だった。
何故負けを認めたのか。
それは彼女の両手を見れば一目瞭然だった。
彼女の武器は木端微塵に砕けていた。
これではこれ以上戦えない。
「第四試合勝者刹那」
その時アナウンスがコロッセオに響き渡る。
「これで……私の…百一勝め…私の勝ち越し」
この言葉を聞いたセリアは膝から崩れ落ちる。
「ここで負けたら意味ないじゃない!私は今まで何を……」
地面に黒いポツポツが出来る。
そんな姿を見た刹那は何を思ったのかセリアに近付き抱きついた。
「ゴメン……」
その言葉を聞いた途端セリアはまわりの目も気にせずに大声で泣いた。
「っつー事でこの勝負は俺らの勝ちなんだけどよ。テメーもこのまま引き下げる奴じゃねーよな?」
「無論だ」
舞台の上に隼人と黒スーツの男が立つ。
「兄様!!勝負は終わりました!」
妹の制止も無視して男をにらみ続ける隼人。
「先に名乗っておこうか。私の名は弁慶」
「はっ!!弁慶とは大層な名前だな、ハゲのオッさん!」
その時どこからかブチッと何かが聞こえる音が聞こえてきた。
何だ?と思った隼人は弁慶を見ると僅かに震えていた。
「どうした、ハゲっさん?震えてるぜ?」
「何だ……そのハゲっさんというのは…」
「あぁ、ハゲのオッさん略してハゲっさん」
「私はハゲていない!これは剃髪だ!!」
そして弁慶は槍を取り出した。
いやどちらかと言えば矛のようだった。
「ゴタゴタ言ってねぇでかかってこいよハゲっさん!」
「ならば望み通りこの槍の錆にしてくれるわぁぁ!」
この光景を見ていた氷華は先ほどの感動的な戦いと違ってなんてくだらない戦いなんだと呆れていた。
一方呆れられている両者は激しい戦いを繰り広げていた。
隼人が刀を横なぎに振るう。
それを弁慶は矛で防ぐがそのまま吹き飛ばされてしまった。
「ぬうっ!」
弁慶はなんとか踏ん張って停止した。
「オイ、テメェこんなもんかよ!?あ~あ、よえぇよえぇ!」
大将がこの程度とは拍子抜けだ。
「やるな。ならば私も本気だ」
弁慶は矛を構える。
「村松流攻式の壱『影月』」
そう言うと弁慶は矛を構えたままでこっちに向かってきた。
それを隼人はカウンターのように刀を振り下ろす。
刀は弁慶の体を真っ二つの筈だったがまったく手応えがなかった。
すり抜けたとも言っていい。
すると弁慶の腹を突破り矛が飛び出す。
「は!?」
隼人は超反応で辛うじて躱すが脇腹を掠める。
「ちっ!」
隼人は一旦距離をとった。
見ると腹を突き破られた弁慶は消え、後ろには俺の脇腹を抉った矛を持っている弁慶がいた。
「なるほどな。分身魔術と矛の組み合わせか」
「そのとおりだ。だが、わかったからってどうなるものでもないぞ」
弁慶は跳び上がり俺の真上に跳ぶ。
俺は目で追っていたが、弁慶の姿が太陽とかぶりめくらましになっていた。
「村松流攻式の弐『陽炎』(かげろう)」
その声のした方を見ると弁慶が目の前にいた。
そして弁慶の矛が俺の腹部を貫通する。
「がっ!くそっ!」
刀を乱暴に振り回すが弁慶はまた距離をとった。
(ちくしょう!めんどくせぇな!俺はみのりみたいに予測が出来ねぇんだよ!)
解の力には三つの特性がある。
それが予測、解析、反応の三つだ。
みのりは予測に優れているためこのような技は効かないのだが、隼人は反応に優れていた。
だから次どこに攻撃が来るかなど直前で感じて躱す事が出来るが、それでも予測よりは圧倒的に遅い。
(はっ!やっぱ当主はみのりのほうがふさわしいな)
「村松流攻式の参『三連星』」
三人の弁慶がこちらに向かって走ってくる。
そして俺の目の前に来ると乱れ突きをしてきた。
俺は辛うじて躱しているが長くもちそうにはなかった。
その時乱れ突きをしている三本の矛は別に後ろから矛が振り下ろされた。
その矛は俺の体を縦に斬りさく。
赤い血が激しく飛び散る。
そして今度は一人だけの弁慶が摺り足で目の前に来る。
俺は刀でそいつを振り払い後ろから来る矛の突きを躱した。
「はっ!同じ手が何度も通用するかよ」
「村松流攻式の弐『陽炎』」
俺は上から弁慶が来ているのに気付かず斜めに斬り裂かれる。
「っ!!」
さらに弁慶は俺の顔面に蹴りをいれる。
俺はそのまま三メートルほど吹っ飛んだ。
「くそっ…そんなパターンもあるのかよ…」
今のは影月を囮で陽炎が本命だったのだ。
「村松流は変幻自在の攻撃を得意としている。さぁおとなしく負けを認めろ」
「やなこった!」
俺が降参しなかったのは降参はなんかカッコわるいから絶対にしないと誓っていたからだ。
しかし今の俺に勝機はなくこのまま殺されるだけだった。
―ワシの力をもっと使え
その時頭に直接声が聞こえた。
(何の用だ…デルトロ)
その声の主は悪魔龍デルトロだった。
―もっとワシの力を使えばあやつに勝てるぞ―
(十分に使っているだろうが!)
―いや貴様はまだワシの真の力を使っていない―
その時頭にイメージが流れる。
―これがワシの真の力だ―
ああいう技がうまいやつを倒すには自分も技で対抗するが圧倒的な力の差で押しつぶすかの二択だ。
だが今の自分には両方ともなかったのだ。
しかしこの力さえあれば確実に勝てる。
(テメェ改心したのは嘘だろ。ハナッから俺にこの力使わせる気だったんだろ?)
―はて?何の事じゃ?―
(まぁいいお前の思惑にハマってやるよ)
頭の中の会話を終え敵を睨み付ける。
俺は魔力を刀に集中させて思い切り振り下ろした。
黒龍が弁慶を襲う。
だが弁慶は焦る事もなく簡単に躱した筈だった。
「ぐふっ!」
弁慶の口から血が滴り落ちる。
下を見ると刀が腹部を貫通していた。
そして背後を見ると弁慶の影の中から隼人が現われた。




