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第三十四幕

私は闇で生まれた。


正確には生まれた時からこの目に光が映らなかったのだ。


私の母と父は私が生まれてすぐに死んだ。


私の名はアシュリー・アルカード。


私はもうすぐ八歳になる。








ここナチス村はイギリスに属している小さな田舎村だ。


その人口は三百程度。


そしてその全てが死神族だ。


「アシュリー、朝食が出来たよ」


物思いにふけっていた私に優しく声をかけてくれたのは私の叔父のラチッェト・アルカード。


両親が死んでからずっと私の面倒を見てくれている。


私は席について朝食を食べ始めた。


私の目は見えず包帯を常に巻いているが、なんら見える人と変わらない生活を送っている。


何故なら人間というのは五感の一つがかけるとその他の四つで補おうとするらしい。


だから私は耳と鼻は他の人よりいい。


些細な音でも聞こえるし絶対音感も持っている。

鼻だって臭いを嗅げばこれが何の臭いか分かる。

だが、これだけでは普通の人と同じように暮らすのは無理がある。


だから私は常に微弱な魔力を体のまわりに発している。


そしてその魔力の反射などで物の位置を把握している。


まぁコウモリみたいな仕組みだ。


そのおかげで戦闘も行なえる、だから私は盲目でもクラスで一番強い。


「どうだい?学校は楽しいかい?」


「皆……私の事避けてるからつまんない」




死神族は外見は皆青い瞳に青い髪と決まっている。


それは遺伝子レベルでそうなるはずなのだが、いつの時代も例外というのがある。


それが私。




村のほとんどの人達はこの白い髪を嫌っていて時には私の事を死神の子と呼ぶ人達までいる。


「まぁ…いつかみんなに分かってもらえるよ」


「……そうだね!じゃあ行ってきます!」


私は学校に向かって歩き出した。


でも学校と言っても村なのだから程度が知れている。


歩き始めてわずか三分で学校に着いた。


この学校は一クラス十五人クラスが三クラスある。


村にしては子どもが多いのは能力で私達一族は長生きが出来ないのだ。



私は教室に入ると、誰も私に声をかける者は居ない。


でも私には慣れている事だ。


昔は私から歩み寄ろうと思った。


だけど皆逃げて行く。


だから歩み寄るのはもうやめた。


しかしやはり例外というのはあるのだ。


「皆おはよう!アシュリーおはよう!」


元気よく挨拶しながら入って来たのは私の唯一の友達のセリアだ。


このセリアはクラスの中心にいる人物でありながら私に臆する事なく、気を使う事もなく対等に接してくれている。


「アシュリー、今日も組手やろうね!」


「うん、いいよ」


そう言ってセリアは自分の席に戻っていった。


やがて授業が始まる。


授業内容は表の学校と同じようなものだが違う所は魔力のコントロール方とか組手みたいなのとかをやっている所だけだ。


「はい、じゃあこれから組手を始める」


私とセリアは中心に立つ。


先ほど少し見栄を張ったが私とセリアは実は同じぐらいの実力でクラスで一番というわけではない。


木で出来た鎌を渡されお互いのポジションにつく。


「始め!」


先生の掛け声に私とセリアは走り出した。


セリアは少し小型の鎌を二本持っている。


たいして私は大きな鎌を持っているためスピード勝負だと不利だった。


私は鎌を思い切り横に振るう。


それをセリアは両手の鎌で防ぐが私はそのまま力を入れ思い切り振りぬいた。




「!?」


セリアの体は衝撃に耐えきれずに吹き飛ばされる。


セリアはなんとか体勢を立て直すが、こんなチャンスを見逃す馬鹿はいない。


「やぁ!」


今度は真上から鎌を振り下ろす。


セリアはバックステップで躱すが私はさらに追撃をする。


セリアは華麗なバックステップで私の攻撃を全て躱しているが、背中に壁があることに気付いていない。


「しまった!」


壁に追いやられたセリアに斜めから鎌を振り下ろす。


しかし振り下ろす前にみぞおちに突きを食らってしまった。


「くっ…」


今度はその隙にセリアの猛攻を受ける。


セリアの鎌は小回りがききさらに二本ある。


斬り合いになったらかなりキツい。


私はがむしゃらに鎌を振るった。


しかしそれをあっさり躱され首に鎌を突き付けられた。


「勝負ありね」


「負けちゃった」


「これで百勝百敗並んだわね」


「次は負けないんだから」



セリアは私を信頼してくれている。


私もセリアに心を開いている。


私がこんな環境にいても笑っていられるのはちゃんと私を見てくれる人がいるから。


普通の人でもまわりにそんな人はそうは居ないと思う。


本当に私は幸せ者だ。









あっという間に授業が終わり放課後になった。


「アシュリー帰ろう!」

「いいよ!」


帰ると言っても私達の家は目と鼻の先だ。


「今日私の家に来ない?」


セリアが不意にそんなこと言った。


「……でも迷惑じゃない?」


「大丈夫大丈夫!」


そう言って私の手を強引に引いて行く。


「ただいま!」


「お、お邪魔します」


「おかえり。あらアシュリーいらっしゃい」




この人はセリアのお母さんでマリア・フィレーヌ。


この人も私に偏見をもたずに接してくれている。

ちなみにセリアのお父さんも。


「お邪魔します」


「ゆっくりしてってね」

私はセリアの部屋に連れていかれる。


部屋に入ると座布団に座らせられる。


「ね?迷惑じゃなかったでしょ?」


「う、うん」


迷惑というのは私が家にいきなり来るという事だけでなく私が来る事によってこの家に変な噂が流れないかどうかだ。


セリアの家に来たのは初めてじゃない。


でも昔そういう噂が流れた事があるのだ。


「ねぇ?」


「ん?」


考えていたらセリアが話しかけてきた。


「明日で私達が出会って三年だね」


「そうだね」


「ね、明日お祝いしよう私の家で」


「え、でも…」


「大丈夫!お父さんとお母さんにも了解をとったから」


「………ならいく」


「うん!」


それからしばらく私達は話していた。









翌朝。


今日は学校は休みだ。


セリアの家に行くのは夜だ。


私はもう一度寝る事にした。


セリアと私が出会ったのは村の外だった。


セリアは人さらいにさらわれていたのだ。


私はそれをたまたま見ていてすぐにそばにいた大人に助けを求めたが私の言う事など誰も聞いてくれずに仕方なく自分で助けに行ったのだ。


しかし犯人達はとても強く、私は殺されかけたのだが気付いたら犯人たちは気絶していた。


その時から私とセリアは友達になった。








私が目を覚ますと辺りは真っ暗だった。


窓から空を見上げると月は朱に染まっていた。


その月を私は不気味だと思わず美しいと思ったのは何故だろう。



私はセリアの家に行くと叔父さんに言うためにリビングに向かった。


そしてリビングのドアを開けようとした時声が聞こえたのでドアの前で耳をすましているとどうやら客人が居るようだった。



「あの子はどうじゃ?」

その声はこの村の村長だった。


私は何故村長がこの家に来たのか分からずそのまま聞いていた。




「えぇ、ちゃんと素直に育っていますよ」


「力は暴走しておらぬか?」


「今のところは」


どうやら私の話をしているらしい。


「ふむ、このまま育てば良い殺人兵器になるじゃろ」


え?


「そうですね。あの子両親を殺したのがこの村って事知らずに生きてるんですから可哀相だ」


そう言ってクククククと笑っている叔父。


どういう事?


私の両親は事故死だったんじゃ…。


真相を確かめなくちゃ。

意を決してドアを開ける。


「その話詳しく聞かせて」


「アシュリー!?お前セリアの家に行くって…」

「ふむ、聞かれたならば仕方あるまい」


「そうですね」


叔父の声が今までとまったく違う雰囲気になり恐怖を感じた。


「お前は死神に選ばれたんだよ。そして死神族と言えど人間だ。死神なんて不吉なもの嫌がるに決まっている。だから村はお前を殺せと両親に命じた」




私は自分の血の気が引いていくのを感じた。


今までの優しそうなイメージの叔父はどこへ行った?


「しかしお前の両親はそれを拒んだ。だから村人たちがお前を殺そうとこの家にやって来る事も増えた。だが中には反対するものもいた。」


「だから村長であるワシは命じたのじゃ」

「何を?」


「俺にお前を殺せってな」


その言葉を聞き何かどす黒い感情が腹の底からわき上がって来た。


「親族である俺なら疑われずに近付けるだろ?しかし計画通りにはいかなかった。お前の両親はお前を庇ったんだよ。殺すつもりがなかった兄さんや義姉さんを殺してしまった。それに動揺した俺は村長に電話した」


笑いながら話すこの外道を今すぐに殺したかった。


「村長は作戦を変更してお前を育てて教団に売り渡す事にしたんだよ。それで村人達は納得したしな」


「そんな…反対した人達は納得したの!?なんで私が死神の子なの!?」

「反対した奴等には両親を殺した事により目が覚めたって言って納得したよ。お前が死神の子だって言われる理由はお前の目だよ」


「私の……目?」


「その包帯を外してごらん?」


私は恐る恐る包帯の端を掴みほどいていく。


「目を開けてごらん?」

私は生まれてから目を開いた事がなかった。


私は言われた通りゆっくり瞼を開いていく。


そして目を開けて見たのは外道が二人とその周りを浮遊するいくつもの赤い線だった。


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